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おげれつたなか先生「ハッピー・オブ・ジ・エンド2」 感想 その1 ありのままの相手を受け入れ、愛することの尊さ
第2巻感想
第2巻は期待通りに面白く、想像以上に二人がイチャイチャしていた。
エロとイチャイチャは1巻の3倍増くらいになっている。
1巻を読んだ時、おげれつ先生にしてはセックスシーンが少ないなと感じていた。
私は1巻くらいのエロで十分満足できるタイプなのだが、2巻では何度も愛に溢れるセックスシーンが出てきて、「ああ、BLだな」と思った。
おげれつ先生自身が、楽しんでエロとイチャイチャを描かれているのがよくわかった。
「ハッピー・オブ・ジ・エンド」は色々な意味でBLの良さが凝縮された作品だと思う。
2巻では千紘と浩然の関係がはっきりと変化していく。
千紘の性格は1巻での印象と変わらなかったが、浩然の方は、こんなに素直に自分の気持ちを表現するタイプだとは思わなかったので驚いた。
1巻では千紘の生い立ち、家族との関係、元カレ・駿一との再会と、浩然の過去(まだ謎に包まれている)と「母」とのことが半々くらいだったが、2巻では浩然に焦点が当てられている。
浩然を探すマヤとの再会、動揺し不安を抱えながらも浩然が千紘と過ごす「初めての」幸せな日々…。でも、マツキが言うように「過去からは逃げられない」。
1巻で二人が過ごしたのは夏から秋にかけてだった。2巻では秋から冬に季節が移ろっていく。
「冬」は浩然(とおそらく二人)にとっての試練の時期を暗示していると思う。
寒い冬が終わって春を迎える時、浩然の心も救われるのだろうか。
マヤが二人の前に現れたことで、3巻では波乱の展開が予想されるが、おげれつ先生はきっと幸せな結末を描いてくださる。(他の作品を読んで、この点に関しては確信している)
千紘が植えたパンジーの花が咲き、春になって二人が旅行に行くシーンを楽しみに、3巻を待とうと思う。
Ep07
ベッドの主張が強い「ラブホみたい」な二人の部屋に、加治が遊びに来る。
テキーラで酔いつぶれた加治は千紘に介抱されながら、ケイトを子供の時に「マヤ」に売ったことを後悔している。
「あの時……俺がマヤに連絡しなけりゃ、ケイトはもっと……」
もっとまともな人生を送れた、もっと幸せになれた、のだろうか。
そうかもしれない。でも、保護者のいない一人ぼっちの浩然には、いずれにせよ厳しい現実が待っていただろう。
千紘はここで初めて「マヤ」の存在を知る。
加治をタクシーに乗せ、部屋に戻った千紘に浩然がキスをして、二人はベッドにもつれ込む。
2巻ではなんと6回もセックスシーンがある。ずいぶん多いと思って1巻も振り返って数えてみたら、最初のフェラシーンを入れたら5回+巻末書下ろし1回と意外にも結構あった。
2巻は1回1回のシーンが長いのと、恋人関係になった二人の愛情表現としてのセックスだから、1巻とは意味合いと味わいが違う。
「先に寝てていいよ」と優しく千紘にキスをして、シャワーを浴びる浩然。
浩然が服を脱ぐシーンが初めて描かれるが、まだその体を見ることはできない。
浩然はマヤのセリフを思い出す。
「欲しくても絶対手に入らなかったもん、簡単に、当たり前に持ってんの、殺したくならねぇ?」
やっぱりこの人がマヤだったのかと思った。
1巻ep05で浩然に伸びたうどんを食べさせ、浩然を客に派遣していたマスクの男。
1巻を読んだ時、この男がマヤなのかな、それともこの男は浩然の面倒を見ている下っ端で、もっと黒幕的な人物が別にいるのかな、と考えていた。
改めて読み返して、マヤの左上腕にカエルの刺青が入っていることにようやく気付いた。
千紘が現像した写真にカエルが映っていたのを見て、浩然が引っ越しを決めた場面の意味がわかった。(ep05)
あの時千紘は「キモくね?」と言っていたけれど、私にはただのカエルの写真に見えて、そんなに気持ち悪くないけどなと思っていた。
「カエル」はマヤを連想させるものなのだ。
千紘と浩然は加治の奢りで中華を食べに行く。
彼女と別れた加治と一緒に合コンに参加しようかと言い出した千紘は、「はたち、コンサルしてます」と何から何まで嘘をつこうとする。
「恋人いねぇのはほんとか!」と加治にからかわれた千紘に浩然が、
「同棲中の彼氏いるでしょ」
ときっぱり言ったので、千紘と加治と一緒に私も驚いた。
浩然が自分で自分のこと、千紘の「同棲中の彼氏」って言った…。
さらにその後、夜道で二人きりになってから
千紘に「俺ら付き合ってるってことかよ」と聞かれ、
浩然は「うるせーな。分かりきっていること確認してくるなよ」と答える。
分かりきってること…!?
「確認大事だろーがバカ」と食い下がる千紘に、
浩然は呆れながら、きっと投げやりで棒読みなんだろうけど、
「好きです。付き合いましょう。これで満足?」
とまで言ってくれる。
こんなに明確な交際宣言を浩然からするとは思わなかった。
この二人はもう少しの間、付き合っているのかどうかはっきりしない曖昧な関係のまま続いていくような気がしていた。
千紘は浩然に抱き着いて、「よろしくお願いします」と言う。
その表情は見えないが、もちろん喜んでいる。
浩然は恥ずかしさと嬉しさで赤面しながら、汗をかいている。(私はこの汗が気になる)
部屋に戻った二人は、我慢できずに玄関で抱き合う。
服を脱がされた千紘が
「お前も、脱げよ……」と言うと
浩然は「いいよ」と言って、初めて千紘と読者の前に裸体を晒す。
傷だらけの浩然の裸を見て、私は息を飲んだ。
あまりに残酷な傷跡に、激しいショックを受けた。
SMクラブにいた頃、浩然は入院するほどひどい怪我を負っていたのだから傷跡が残って当然なのに、顔と両手には目に見える傷がないので、私は愚かにも「浩然の美しい顔と体に跡が残らなくてよかった」と思っていた。
そんなはずないのだ。
どうして気づかなかったのだろう。
私はあわてて1巻を読み返した。
千紘とセックスする時、浩然は一度だって服を脱いでいなかった。
今まで浩然の手首や足首から上が描かれたことはなかったのだ。
千紘の方も下だけ脱いで上は着ていることもあったから、浩然が服を脱がないことにあまり違和感がなかった。
身体に傷があるから脱がないのだと、1巻で気づけたはずなのに、私は何を見ていたのだろう。
浩然の体の傷については、実は観察力に優れた方なら1巻で気づくことができたのだ。
Twitterで「浩然の耳が変形している」ことを教えていただいた。
特にわかりやすいのがep05の冒頭で、母に抱きしめられた浩然の耳介は、幼い時と大きくなってからでは明らかに形が違う。
おげれつ先生の画力が凄すぎて、こちらがついていけない…。完敗。
浩然だって、はじめは千紘に傷を見られたくなかったのだと思う。
理由を聞かずにはいられないような、凄まじい傷跡なのだから。
千紘と「付き合う」とはっきり口に出した後だったから、浩然は決心して脱いだのだろうと思う。
千紘がびっくりして、傷の理由を尋ねることを覚悟していただろう。
でも、千紘は驚くこともなく、何も聞かない。
浩然の肌に触れて、幸せそうに
「あったか……」
と浩然を抱きしめる。
そんな千紘の反応に、浩然の方が戸惑っている。
こんなふうに受け入れられるとは思いもしなかっただろう。
千紘は浩然を「傷があってもなくても同じ」であるかように見ている。
傷だらけの自分が、そのまま受容されたと感じた浩然の睫毛に、真珠のような涙が滴る。
「ちひろ……好きだ」
浩然が、こんなに素直に「好きだ」と口にするなんて……私はまた驚いた。
ep07は私に衝撃を与え続けた回だった。
外は雨、千紘はベランダにカエルを見つける。千紘はカエルが苦手なようで「きもっ、こわっ」と窓を閉める。
カエルはマヤの象徴。浩然とマヤの再会が近づいていることを暗示している。
1巻で元カレの言いなりになりかけた千紘にビールをぶっかけ、「行くな」と言わずに浩然が千紘を引き留めたシーンと、ボート場で「死にたい」と浩然が呟いた場面は、私に強烈な印象を残したのだけれど、ep07で浩然が傷だらけの背中を晒し、千紘が嬉しそうに浩然の体を抱きしめたシーンもまた、心に深く突き刺さった。当分頭から離れないだろう。
千紘はこの後、ラブホテルのお風呂場で浩然が自分から傷の理由を話すまで、何も聞かない。
これはすごいことだと思う。
1巻でも千紘は、浩然と2か月以上一緒に暮らして「ケイトのこと、母親がいるってこと以外何も知らない」と思いながらも、浩然が自ら、母が中国から来たことや未成年風俗で働いていたことを話し出すまで、過去を詮索しない。
浩然が「死にたい」と言って胸にしがみついた時も、「俺……ここで寝るから」と線路の上に寝転んだ時も、千紘は「なんで」と聞かず「やめろ」と止めもしなかった。
ただ、「そっかぁ」と言って浩然の悲しみを受け止め、「俺もここで寝ようかな」と一緒に死んでくれようとさえした。
誰かをありのままに受容するとはこういうことかと思う。
そんな千紘が、浩然の「前の彼氏」のことだけは、聞かずにいられない。無神経な質問をして浩然を怒らせてしまう。
そのことについてはまた次回…。
(第1巻の感想を書いた際に溢れる想いをコントロールできず、一気に長文を書き過ぎて、書くのも読むのも大変になってしまいました。反省して少しずつ書こうと思います)