お坊さんの価値を可視化する仕事
「住職の右腕になりたい」
2021年は当社のことを知ってくれたお寺が増えたと実感できる年になりました。当社は寺院経営に特化した広報の支援をしてますが、各寺院の檀家から聞いた声をまとめたレポートを寺院向けに配布していると、「資料をまとめてくれる人ね」と声をかけられるようになり、たとえば宗派本山から会報紙作成を依頼されたり、お寺の檀家総代会に出席して議事録まとめたりと、お寺の資料を作成する人のように覚えてもらっていると思います。
当社の特長はユーザー視点でお寺の広報をすることですが、檀家でさえお坊さんの価値がうまく伝わっていないと取材を通じて実感しました。そこで『僧侶の人柄記事パンフレット』を作成し、2021年は23ヶ寺35名の僧侶を取材しました。なぜお寺が僧侶の記事を作る必要があるのかを書きます。
寺院経営に特化した広報とは
一般的なお寺の仕事のひとつに法事やお葬式などの法務と言われるものがあり、人はお坊さんに読経などを依頼します。当たり前のことを言ってますが、年間で国内の死亡者数が増えているのにその依頼数が減っているんです。
法事や葬儀は、依頼する人のニーズがあるから発生しますが、この点があまりお坊さんに浸透しておらず、「法事しませんか?」と住職が檀家に聞くことはないので人のニーズがわからないお寺が多い。
ただ、お寺は存続しているし、日本は仏教式でお葬式をする人が多いので法務のニーズはあります。事実、お坊さんを呼ばずに読経テープでするお葬式や法事を見る機会はありません。
お寺と接点がない人のなかにはお寺は敷居が高いと思う人が多く、檀家でさえコロナ禍でこれまで以上にお寺に相談しにくい傾向があります。
法務は人と触れ合う仕事なので、コミュニケーションが減るとニーズは減少します。人はお坊さんに葬儀で読経だけ依頼し、法事を依頼しなくなるケースが増えるのはこれば要因のひとつです。
人柄を通じて伝えるコミュニケーションが多くのサービスで主流になりつつある昨今、お寺も寺報や掲示板などの広報媒体にプラスして、あらためてお坊さんの人柄を伝えていくことが、お寺との接点が少ない人へのおもてなしになるのではと思います。
お坊さんの情報って必要なの?
僧侶の人柄を伝える記事作成を住職に提案したとき、「人から求められたことがない」と断られることがありました。
先日、都内葬儀社の代表に聞いたところ、たしかに葬儀の遺族から初めて会うお坊さんの情報を求められたことはないと言っていました。しかし、遺族は葬儀をお願いするお坊さんの顔が見える情報があれば遺族が安心するのは間違いないと言っています。
つまり、情報を求められたことがないのは遺族が葬儀場でお坊さんの情報がほしいと聞けない背景があるからです。それに対し、これまで情報を求められたことはないからニーズがないと考えるのは早計だと思います。
このようなコミュニケーション不足がお坊さんの価値を見えにくいものにしてしまい、法事や葬儀の依頼が減った原因のひとつかもしれません。私の自坊(実家)のように墓地がないお寺は葬儀が少なくなると寺院経営に大きく影響します。
お坊さんができないことを代行する
コミュニケーションが大事だとわかってはいるけど、どうにもできないお坊さんの立場があり、そのために当社が住職の右腕となって代わりに広報しています。
自分のお寺の良さを伝えるのが苦手な住職にはその良さを知る檀家の声を資料にまとめたり、葬儀の依頼をもらうのに葬儀社へ挨拶回りをしたことがないお坊さんのために当社から僧侶の人柄記事を届ける仕事をしています。つまり住職ができない、またはやりたくない仕事を代行しています。
お坊さんにはできるだけ接客と法務に専念してもらいたいと考えています。デスクワークや営業を代行する当社は、コミュニケーションを重視する点から議事録や会報紙作成にもお坊さんの人柄が伝わる表現にしています。
お坊さんが情報を正しく伝えるために
当社がコミュニケーションを重視するのと同じく大切にしていることがあります。それは嘘をつかないことです。人から覚えてもらうために長所を強調する表現があったとしても、正しくない表現はしません。墓地分譲をするお寺が契約時に檀家になってもらう条件があるのに「檀家義務なし」と墓案内したり、葬儀社から葬儀依頼を増やすために「どの宗派のお経もできます」とお坊さんの出自をごまかしたり、あきらかに信用を失う可能性が高い広報をしているケースを見てきました。
正しい情報をありのまま伝え、子どもたちでもお坊さんの価値が伝わるような当たり前のコミュニケーションが広まっていければと思います。
今年もお寺に集まる人の声を取材したいと思います。
令和4年1月1日
スキいただけると、池谷が読経します(^^♪