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本日発売! 『紙魚の手帖』vol.18 Genesis――夏のSF特集ラインナップ紹介

書き下ろしの単行本シリーズとして続いてきた〈Genesis 創元日本SFアンソロジー〉『紙魚の手帖』に合流してから一年。『紙魚の手帖 vol.18 Genesis』が、今年も夏のSF特集号として発売されました。

生まれたての新人からベテランまで、SFの「いま」を担う才能が勢揃いした、本特集の全容をご紹介します。


【表紙とデザイン】

illustration: カシワイ/design: アルビレオ(以下同)

〈Genesis 創元日本SFアンソロジー〉のシリーズ発足時からお世話になっているカシワイさんに、今号でも装画をご担当いただきました。「都市」をテーマに描き下ろしていただいたイラストは、カットとして本文のさまざまな場所に使われています。昨年のSF特集号(『紙魚の手帖 vol.12 Genesis』)の表紙に登場した男の子が、今回も表紙に描かれているのに気づかれたでしょうか?
デザインはこれまでの『紙魚の手帖』から一貫して、装丁事務所のアルビレオさんが手がけられています。今回も素敵な装画とデザインをありがとうございました!

【受賞作決定!】
◆第15回創元SF短編賞選評 飛浩隆・宮澤伊織・小浜徹也(東京創元社編集部)
今年も個性あふれるSF作品が寄せられた創元SF短編賞の、選考経過および選評を掲載。
受賞作「廃番の涙」(今回の発表に際して「喪われた感情のしずく」に改題)についての選評は、実作と読み比べてみるのもおすすめです。

【第15回創元SF短編賞受賞作】
「喪われた感情のしずく」稲田一声

illustration: 植田たてり

高度に発達した人体拡張機器によって、だれもが健やかに生きている時代。感情調合師たちは拡張機器を介して特定の感情を生み出す〈オーデモシオン〉のデザインに心血を注いでいた――

飛浩隆さん、宮澤伊織さんら選考委員から、巧みなストーリーテリングと現代性を高く評価された受賞作。日本SFに新たな才能が現れました。

【小説】
「これを呪いと呼ぶのなら」赤野工作

illustration: 緒賀岳志

ゲームライターの野上が久しぶりに受けた依頼は、「遊ぶと呪われる」とウワサされる作品のレビューだった。
中東の街に住む女の子が、市場へおつかいに行って帰ってくる。それはただそれだけのシンプルなゲームのはずだったが……?

架空のゲームレビューを通して未来史を物語るデビュー作『ザ・ビデオ・ゲーム・ウィズ・ノーネーム』(KADOKAWA)で話題を呼んだゲームSFの名手の新作にして、恐怖の何たるかにせまるホラーSFです。

「狼を装う」阿部登龍

illustration: 山月まり

不本意ながら故郷のクリーニング店へと帰ってきた主人公が出会ったおしゃべりな毛皮。一体となって夜遊びに興じる彼女たちを待ち受ける運命とは――? 

昨年(2023年)、ドラゴン✕国際謀略✕バイオパンク小説の「竜と沈黙する銀河」『紙魚の手帖 vol.12』に掲載されたほか、単体電子版も販売中)で第14回創元SF短編賞を受賞し、注目を集めた阿部登龍さん。お待ちかねの受賞第一作に登場するのは、竜ではなくてなんとオオカミ!? ノンストップの変身譚をお楽しみあれ。

「道の花」彩瀬まる

illustration: 榎本マリコ

大人たちは公害病に怯え、学校ではノストラダムスの大予言がささやかれる日々の中、はじまって間もない生理に悩まされる愛子。絆創膏を剥がした肘の傷口から覗いていたのは、小さな薄緑色の若葉だった。

『かんむり』(幻冬舎)『花に埋もれる』(新潮社)など、数多くの人気作を生み出してきた彩瀬まるさんによる連載第一作。

「ほいち」斧田小夜

illustration: 後藤啓介

神社の駐車場で発見され、ナンバープレートから「ほいち」と呼ばれた放置車。車ならぬ身の人間たちは、ほいちが体験した超常の出来事を知らなかった――

「飲鴆止渇(いんちんしかつ)」(単体電子版を販売中)で第10回創元SF短編賞優秀賞を受賞した斧田小夜さんが、「自動運転車に宿る意識」と「機械と『人ならざる怪異』との遭遇」を見事に描いた一作です。

「WET GALA」飛浩隆

illustration: 佳嶋

2024年、TrueGrobe社が開発した人類初の汎用人工知能TrueThinkによって、ロボットの社会への浸透が急激に加速。デザイナーとして成功を支えたのは、芸術家トバイアス・モートンだった――

「生成インスタレーション」としていくつものビジョンを提示しながら、鮮やかな未来像の輪郭をたどる、圧巻の芸術SFでありロボットSFです。

「アルカディアまで何マイル」松崎有理

illustration: 佐藤おどり

地上からありとあらゆる植物が消え失せ、食べるものといえば肉ばかりの世界。
理想郷を夢見ながらも炭鉱で働く少年に、ある日現れた鵞鳥兵は「おやちゃい、たべたい」と要求する――

ディストピア✕ガールをテーマにした短編集『シュレーディンガーの少女』(創元SF文庫)がスマッシュヒットとなった松崎有理さんが贈る、キュートでダークなバディもの冒険譚です。

「ときときチャンネル#8 【ない天気作ってみた】」宮澤伊織

illustration: 本気鈴+ながえるん

天才科学者の多田羅未貴と同居人の十時さくらがお送りする〈ときときチャンネル〉。八回目の配信となる今回のテーマは、このすさまじい暑さに立ち向かう方法!

ゲラの素読みをしながらも、思わず笑ってしまった作品でした。シリーズ第一作『ときときチャンネル 宇宙飲んでみた』(創元日本SF叢書)も好評発売中。

「子どもたちの叫ぶ声」レイチェル・K・ジョーンズ/佐田千織訳

photo: Jena Ardell / Getty Images

教室に銃声が響いた日、教師と子どもたちは異世界へのポータルを発見した――

ファンタジイの形式を借りて、スクールシューティング(学校内での銃乱射事件)に正面から向き合う衝撃作。圧縮された語りからは、サマンサ・ミルズ「ラビット・テスト」『紙魚の手帖 vol.15』掲載)のように、社会問題への限りない怒りが感じられます。

◆特別対談「創元SF文庫になったころ」代島正樹×小浜徹也
創元SF文庫は1963年に創元推理文庫のSF部門として誕生し、以来数多くの海外SFを紹介してきました。
今号では長く書店員を務めた書評家・コレクターの代島正樹さんと、86年の東京創元社入社以来SFを担当してきた小浜徹也が、同時代のSFの翻訳刊行をはじめた70年代後半から、91年の〈創元SF文庫〉への名称変更前後までの舞台裏を語ります。

◆解説記事「人間的な、あまりに人間的な 2023年ヒューゴー賞騒動」古沢嘉通
予備投票上位に入っていた複数の作品が、正当な理由なく最終候補から外されていた――2023年のヒューゴー賞で起こった不正を巡る騒動について、渦中の作品 BABELの邦訳に取り組む古沢嘉通さんが詳細にレポートします。

【ESSAY】
◆翻訳のはなし「第16回 ホーガン翻訳裏話」内田昌之
邦訳が切望されてきた〈星を継ぐもの〉シリーズ最終作『ミネルヴァ計画』。その翻訳という大仕事を引き受けられた内田昌之さんが、ご担当に至る経緯や苦心されたポイントなどを綴ります。

【COLUMN】
◆ごほうびごはん*「メキシカン・チキンのワカモーレ添え」久永実木彦
◆読書日記 篠原悠希
◆行かない旅の栞*「十年経っても見つからない」新馬場 新
『紙魚の手帖 vol.06』にて発表された短編「わたしたちの怪獣」で星雲賞を受賞されたばかりの久永実木彦さんがとっておきのメニューを、〈金椛国春秋〉シリーズなどのファンタジイ作品で知られる篠原悠希さんがハーディングの『嘘の木』を、『サマータイム・アイスバーグ』をはじめとする青春SFを次々と発表され、バックパッカーの経験をお持ちの新馬場新さんが旅先で垣間見た「綺麗な果て」を語ります。

【SF BOOKREVIEW】
◆国内SF 渡邊利道
◆翻訳SF 鯨井久志
旬のSFを毎号にわたって紹介してきた書評欄を、今号でもSF特集に合わせてボリュームアップしてお届け。国内SFと翻訳SFのそれぞれについて、この一年の注目作をとりあげます。

【INTERVIEW 期待の新人】
◆宮西建礼
◆篠谷巧
瑞々しい感性で科学と人と人工知性を描くデビュー短編集『銀河風帆走』(創元日本SF叢書)を上梓された宮西建礼さんと、名作『星を継ぐもの』にオマージュを捧げた『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』で第18回小学館ライトノベル大賞優秀賞を受賞された篠谷巧さんに、執筆の経緯から将来の目標まで、さまざまなお話をうかがいました。

【INTERVIEW 注目の新刊】
『ムーンシャイン』円城塔
『ホロニック:ガール』高島雄哉
日本SF大賞受賞作『文字渦』から6年、待望のSF作品集『ムーンシャイン』を刊行された円城塔さんと、今年(2024年)8月16日に特別上映がはじまるアニメ『ゼーガペインSTA』の公式スピンオフ小説『ホロニック:ガール』を執筆された高島雄哉さんに、これまでのお仕事や作品のテーマなどについてうかがいました。


このほか、東京創元社創立70周年を記念したエッセイ欄「わたしと東京創元社」には大森望さん、高山羽根子さん、田中芳樹さん、酉島伝法さん、宮内悠介さん、マーサ・ウェルズさんが登場。

「今いちばん面白いSF」がぎっしりと詰まった一冊になりました。どうぞお楽しみください!


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