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第34回鮎川哲也賞・第2回創元ミステリ短編賞・創元ホラー長編賞贈呈式レポート
2024年10月25日、飯田橋のホテルメトロポリタン エドモント〈悠久の間〉にて、〈第34回鮎川哲也賞〉ならびに〈第2回創元ミステリ短編賞〉、〈創元ホラー長編賞〉の贈呈式が開かれました。
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〈第34回鮎川哲也賞〉には山口未桜氏の『禁忌の子』が、〈第2回創元ミステリ短編賞〉には歳内沙都氏の「桜越しに空を撮る」が受賞作として選出されました。
また、東京創元社創立70周年を記念して開催された〈創元ホラー長編賞〉には、上條一輝氏の『深淵のテレパス』(刊行に際して受賞時の『パラ・サイコ』より改題)が受賞作として選ばれました。
◇第34回鮎川哲也賞
贈呈式ではまず〈第34回鮎川哲也賞〉の選評を、選考委員を代表して青崎有吾先生が述べられました。
選評のなかで青崎先生は「最終選考作の四作すべてがしっかりした謎と解決編、そして綿密な推理に基づいた謎解きを備えており、芯の通った本格ミステリになっていると感じた」と総評を述べられ、「ミステリ部分についてはどの作品も比較的拮抗していた中で(…)読者を惹きつける情報の出し方やお話の運び方、演出を備えているか? というハードルをぴょんと越えてきた作品が『禁忌の子』だった」と受賞の決め手を語られました。
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選評の後、受賞者の山口未桜氏が登壇され、小社社長・渋谷健太郎より賞状の授与が行われ、正賞のコナン・ドイル像が選考委員の麻耶雄嵩先生より贈呈されました。
受賞の挨拶で山口氏は、医学の道を選んでから16年のあいだ、小説創作からは遠ざかることとなったものの、出産とコロナ禍が執筆に再び取り組むきっかけとなったことを語られた上で、「今後もおもしろい物語を紡いでいけるよう、真摯にがんばっていきたい」と抱負を述べられました。
受賞作の『禁忌の子』は、ただいま好評発売中です。
◇第2回創元ミステリ短編賞
続いて、〈第2回創元ミステリ短編賞〉の選評を、選考委員を代表して北村薫先生が述べられました。
選評の中で北村先生は、「日常生活の中に本格ミステリが食い入ってくる」例として、ドキュメンタリー映画『ジェーンとシャルロット』の一場面に触れながら、「私にとって今回の受賞作は、この年齢という私の日常の中に食い入ってくる作品だった。そのわけは作品をお読みいただき、それから併せて選評を読んでいただければよくわかるかと思う」と語られました。
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選評の後、受賞者の歳内沙都氏が登壇され、小社社長・渋谷健太郎より賞状の授与が行われ、正賞の懐中時計が選考委員の大倉崇裕先生より贈呈されました。
受賞の挨拶で歳内氏は、郵便物の受け取りという日常の中に、ふとミステリの種を見出せたことが、最近の慌ただしく不安な日々の中での希望となったことを振り返られつつ、「今回自分を少しだけ救ってくれた出来事のような要素を、次回作にも取り入れていければ」と目標を語られました。
第2回創元ミステリ短編賞受賞作「桜越しに空を撮る」、および第34回鮎川哲也賞・第2回創元ミステリ短編賞の選評は、現在発売中の『紙魚の手帖 vol.19』に掲載されています。また、「桜越しに空を撮る」および、第2回創元ミステリ短編賞の選評は、単体電子書籍としても配信中です。
◇創元ホラー長編賞
次に、〈創元ホラー長編賞〉の選評を、選考委員を代表して東雅夫先生が述べられました。
選評の中で東先生は、最終選考に残った五作について振り返られ、「選考委員の澤村伊智さんがその辛口の選評の中で、唯一『文句なし』と太鼓判を押されたのが今回の受賞作だった」と述べられ、「エンターテイメントの王道をいく上條さんの作品は、今後も非常に高い評価を受けるものと思う」と期待を寄せられました。
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選評の後、受賞者の上條一輝氏が登壇され、小社社長・渋谷健太郎より賞状の授与が行われ、正賞の懐中時計が東先生より贈呈されました。
受賞の挨拶で上條氏は、小学校の課題ではじめて物語を書き、大きな花丸をもらったことが作家を志すきっかけとなったこと、その翌年に出された「トラやヘビやクマに行く手をさえぎられながら宝箱を目指す」という課題を前に、気負いのあまり一文字も書けなかったことを振り返られたうえ、「これから先も、トラやヘビやクマに行く手を阻まれ、一文字も書けなくなる時が来るかもしれない。そんな時には今日いただいた大きな花丸を思い出して、これからの作家生活に邁進していきたい」と意気込みを語られました。
今回の受賞作である『深淵のテレパス』は、ただいま好評発売中です。
◇東京創元社×カクヨム 学園ミステリ大賞
三賞の贈呈式の終了後、〈東京創元社×カクヨム 学園ミステリ大賞〉を受賞された各氏が壇上にて紹介されました。
大賞受賞作である雨井湖音氏の『僕たちの青春はちょっとだけ特別』と谷夏読氏の『この恋だけは推理らない』はそれぞれ今年12月中旬に、優秀賞を受賞した下村智恵理氏の『天網恢々アルケミー』および宮原海渡氏の『四月の教室におけるあなたの居場所についての問い』は来春に刊行予定です。
〈第3回創元ミステリ短編賞〉は、2025年3月末日〆切で投稿を受付中です。
そのほか、〈第15回創元SF短編賞〉(2025年1月14日〆切)も、ただいま投稿を受付中です。多数のご応募をお待ちしております。