言語の力を巡る傑作歴史ファンタジー 『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』上下巻、2月12日刊行! 刊行に先駆け作品の世界観をご紹介いたします。
本国で刊行後、ニューヨーク・タイムズ・ベストセラー・リストのハードカバー・フィクション部門第一位に輝き、各種ベストセラー・リスト上位を席捲した本作『バベル オックスフォード翻訳家革命秘史』(R・F・クァン/古沢嘉通訳、海外文学セレクション)。現在、世界20カ国以上で翻訳され、ついに日本でも2月12日に刊行が決定いたしました!
前回の記事では、日本版のカバーイラストを紹介いたしました。今回は完成した書影と作品の世界観をご紹介いたします。
上下巻となる日本版書影では、オックスフォード大学に屹立する「バベル」の塔とその街並みが描かれています。
舞台は19世紀前半。欧州各国が世界中に植民地を持ち、極東では清朝が阿片戦争直前の状況にあるという時代背景はそのままに、銀を用いた魔法の力によって英国が世界の覇権を握っているという設定を元に描かれています。
本作の魅力はたくさんありますが、その中でも際立っているのが、英国が握る力――銀の棒にふたつの単語を刻むことで病を治すなどの力を発揮させる「銀工術」の存在です。
棒の片面にある単語を刻み、反対の面に別の言語でそれに対応する単語を刻むことで、翻訳される際に生じる言葉の意味のずれにより力を発揮させます。いわゆる魔法に近い効果が生まれるのです。
言葉や文章を翻訳しようとするとき、完璧に同じ意味に置き換えることは難しく、訳文と原文の間には微妙なニュアンスの違いがあったり、訳語には元の単語にはなかった意味があったりします。そのような単語の適切な組み合わせを見つけて銀の棒に刻むと、単語の意味のずれに応じた力が発揮されるのです。
力の強さは、翻訳される元の言葉とのルーツが遠いほど、大きくなるということから、バベルの学生たちの多くは、ヨーロッパから遠い国より集められてきました。
主人公ロビンは広東で暮らしていましたがコレラで家族を喪い、自身も死にかけていたところを「銀」の力で助けられます。自分を助けた教授に連れられて英国に渡り、オックスフォード大学にある翻訳研究所「バベル」を目指すことになります。「バベル」は銀工術をより発展させることを目的とした研究機関で、同じ大学内でも特別扱いされていました。
語学の猛特訓ののち大学に入学し、「バベル」に所属することになったロビンは、そこで自らと境遇の似た唯一無二の友人たちと出会います。より強い力を発揮するにはどういう言葉の組み合わせが良いか、様々な言語を単語の成り立ちに至るまで勉強し、共に試行錯誤し取り組む日々。
一方で英国が銀の力を独占していることに抵抗する秘密結社ヘルメスのメンバーがロビンの前に現れます。それまで自身の境遇に違和感を覚えつつも受け入れていたロビンは、ヘルメス結社の理念に心を揺さぶられることになるのです。
さらに彼らを取り巻く歴史的背景が重くのしかかってきます。著者は19世紀前半の歴史について、膨大な文献を詳細に調べ上げており、フィクションでありながら、まるでそれが正史であったかのように感じさせる臨場感も本作の魅力の一つです。
言語の力を手にした主人公たちがどんな未来にたどり着くのか。ぜひ2月12日刊行を楽しみにお待ちください!
◆『バベル』の世界を表す用語解説
【バベル】……オックスフォード大学内にある王立の翻訳研究所。建物は塔になっており、「銀」に言葉を刻む銀工術科のほか文学科、通訳科などがあり、銀にまつわる力を利用したい人々のための依頼窓口もある。多くの学生や教授たちにより、日々、言語の研究が行われ新たな力の発見に力を注いでいる。
【銀工術】……銀の棒に適合対を刻み、力を発揮させる技術。棒の片面にある単語を刻み、反対の面に別の言語でそれに対応する単語を刻む。翻訳される際に生じる意味のずれにより力が発揮される。
【適合対】……力が発揮される単語の組み合わせ。ふたつの言語の翻訳過程で失われたりゆがめられたりした意味が力として発動する。
【ヘルメス結社】……バベルで生み出される銀の力を英国が独占していることに対し叛旗を翻している秘密結社。