愛のスコール
Sawa.ちゃんと初めて会った時の印象は強烈だった。見た目とのギャップもさることながら、そのキャラクターは何かが破綻しているようにも見えたし、深いコップ全部が愛で満たされているようにも見えた。
アーティストって往々にして矛盾を抱えてるものだけど、彼女の矛盾は人を幸せにも不幸せにもする感じがした。その中間はなし!と有無を言わさずねじ伏せる強さがあり、つまりそれはとても弱いこととイコールだと思う。
同じ匂いがした。嗅覚の話ではなく、彼女も愛をテーマに生きているんだと思うエネルギーを発していた。味方だと心強いヒーローで、敵だと厄介な爆弾魔。好きか嫌いかだけで生きてる匂い。僕のセンサーが優れているかどうかはさておき、撮影しながらそんなことを感じていた。大人みたいに照れながら笑う子供。日常生活を生きるには苦労しそうな無邪気さが彼女の魅力の一つでもあった。
そんな彼女を別府の亀川で撮影した。彼女が生まれ育った場所であり、僕が生まれた病院があり、僕の父が幼少期を過ごした街だ。縁は不思議なものだ。時に絡まり、途切れ、また繋がりを繰り返す。祖母が亀川でやっていたクリーニング店の話もこの撮影で繋がった縁から聞くことが出来た。
この街で撮影していると不思議な気持ちになる。有名なコンビニが潰れたり、川でスッポンが泳いでたり、裏通りに泉源が山ほどあったり、通学路が不良坂って名前の坂だったり、別府でもさらにローカルな街。全く活気はないけれど、なんだか可能性を秘めた匂いがプンプンする街。
「あぁ、愛があるなぁ」
僕はシャッターを切りながら、思わず声に出して言った。
「なんち?」
指示が聞こえなかったと思ったのか、Sawa.ちゃんが怒っている。それも小学生が生意気言ってるように見えて楽しい。被写体に恋する気持ちで撮影するといい写真が撮れるなんて聞いたことがあるけど、恋してないものなんて、僕は撮りたくない。僕もSawa.ちゃんも亀川に恋している。だから、この街がキラキラして見える。温泉上がりに愛のスコールをグッと飲んだ時の気持ち。
色んな事情があり、撮影から1年以上経ちましたが、記事をようやくアップしました。皆様も亀川に恋しに行ってみてください。Sawa.ちゃん改めてありがとう。お待たせして申し訳ない。
2023.7.22 東京神父
亀川筋湯温泉「KAMEGARIAN」
東京神父 写真家。1978年4月20日生まれ。 別府出身、自由が丘在住。