不思議体験 たぬきにばかされた
たぬきが人に化けて、私を騙そうとしてきた…なんて話があったんです。
何年か前にサーフィンの恩師を訪ねて伊豆山奥へ出かけました。
山間の集落にある築100年の古民家。
その山には、その方と大家さんの家族の2世帯しか住んでいない。
国道から細い山道を登っていくと坂道に先に鹿が出迎えてくれた。
筍がりができるということで、まだ肌寒い4月の初旬。
山道を登っていくと、細くて急なS字カーブをクリアして車を停めた。
車を停めた目の前には、自家菜園の畑が広がっている。
きゅうり、なす、トマト、ねぎ、にらなどの野菜を栽培しているようだ。
畑を過ぎると縁側。その横に玄関。
縁側に沿って長い廊下、その先にトイレ。
縁側のすぐ横の仏間に布団を敷いてくれた。
ふすまを挟んだ奥の部屋にゴーさんと奥さまの寝室。
お風呂のあとに、用意してくれた夕食をいただいた。
その後、ゴーさんと少しだけお酒を飲んで、色々な話をして23時くらいには布団に入ったと思う。
夜中に目が覚めて、大変奇妙な出来事が起こった!!!
翌朝、目覚めて一発目。
ハァ〜夜中のあれはなんだったんだろう。
寝起きだけど、どっぷり疲れていた。
あ、トイレ!
トイレに行きたい。
トイレを済ませて部屋に戻り、さあ布団を畳んで身支度を整えようかと。
髪を結うためのゴムがない。
髪の毛の長い私は、いつも黒いゴムを手首につけていた。
おかしいなぁ……
髪の毛を結ったままで寝て、布団の間に落ちているのかな?
昨日の夕飯前にお風呂の時も使ったし、確かに手首にはめていたはず。
掛け布団をバサバサっとふったけど、ゴムはどこにも見当たらなかった。
布団を畳んでゴーさんと奥さんのいる台所へ。
おはようございます。
おはよう〜
昨日の夜は、よく眠れた?
なんか夜中叫んでたね。
え?
やっぱり….
そんなに大声でしたか?
実は…..かくかく…….しかじか………..
昨夜。
ふと目が覚めて時計を見た。
午前2:15
嫌な時間に目が覚めたなぁ。
トイレ行きたい。
でも、真っ暗な廊下の先のトイレに行くのは怖いなぁ。
なかなか勇気がいるなぁ。
なんとかもう一回眠りにつこうと、一生懸命目を閉じてトイレを忘れようとした。
が、しかし。
忘れようとすればするほど、意識してトイレに行きたい。
午前2:40
全然、時間が進まないな…..
真っ暗は怖いので、オレンジ色の常夜灯をつけていた。
布団をかぶって、目を閉じる。
カサカサ…..
ん、風?
廊下の板の上をカサカサと枯葉のような軽いものが風に吹かれて擦れているような音がしている。
すると3匹のたぬきが廊下に上がってきて列をなして歩いている。
1匹が少し大きくてリーダーみたい。
2匹は、誘われてくっ付いてきていた。
3匹ともまだ子どものたぬき。
どうやら、変身をして人を騙せるか腕試しをしにきたらしい。
なぜか、頭の中に直接このようなたぬきの目的が伝わってくる。
枯葉の擦れる音。
カサカサ…..カサカサ…..廊下から私のいる仏間に移動してきてる。
何やら3匹は楽しげに私の布団の周りをくるくる周りながら歩いている。
頭の上に枯葉をのせて、ボンっと煙を上げてたぬきが人間の形に変わった。
ゴーさん!?
もう一匹は、ゴーさんの奥さん。
最後の一匹は、誰だったか…..印象に残ってない。
ゴーさんが「ハルちゃん、起きて〜」と、私の耳元で声をかけてくる。
いやいや。
たぬきだし。
知ってるし。
廊下から移動してきて化けるまでの一連の流れを見てる意識がある私は、冷静にツッコミをしていた。
見ているというよりも……
私は布団をかぶって怖くて寝たふりしているので、意識に直接インプットされている感じ。
謎すぎる現象ですが…..
一連の流れ見てるし。
決定的なのは、尻尾があってたぬきなのバレバレだし。
なーんて、心の中で思いつつ寝たふりを続けていると。
人に化けたたぬきたちはかまって欲しいらしく 、どんどんどんどんエスカレートしていく。
私の頭のあたりでピタッと止まって、起こそうと声をかけてくる。
「起きて〜、ゴーだよ」
「ハルちゃ〜ん、起きて〜」
私の体は金縛りにあったみたいに、カチカチで動かない。
たぬきたちは、布団の周りを回り続けている。
布団の上に上がってきた。
怖い。
限界!!!
「んんん〜〜〜ゴーさんっ!」
大きく叫んで、思い切って体を起こすイメージをしたら、金縛りも解けて体が動いた。
周りを見たら、たぬきたちは消えていた。
私は汗をびっしょりかいて、心拍数も上がっていた。
今のはいったいなんだったんだろう….
まあ、怖いというよりもいたずらっぽくて可愛らしいけど。
しんどい。
知らない間に眠りに落ちていた。
次に気づいたのは、朝の7時前だった。
朝食を用意してくれていたので、顔を洗い身支度を整え出発の準備をした。
お礼を述べて、別れの挨拶をして車へ向かうために畑を通った。
ん?
あれっ?
あれって…..私の髪留めのゴム……が……..畑の中に落ちている!?
私のだ…..なんで?
あれはやっぱり夢じゃなかったんだ!!!
ぐわわわ〜っと、昨晩のことが一気に頭を駆け巡る。
あのたぬきたちは、本当にきていて私をばかそうとしていたんだ。
そして、イタズラをして帰って行った。
帰る際に畑を横切って、私の髪ゴムを落として行ったんだ。
家の周りは、自然の動物たちも沢山住んでいる。
むしろ人の方が少ない。
日本昔ばなしで聞いたような。
不思議なお話し。