【赤ちゃんと英語】これだけ読めばOK 子どもの英語習得のために、0歳児の親が実践すべきアプローチ Vol. 2
Vol. 1の続きです。
育児初心者の私たち夫婦が現在直面している疑問である「0歳児の時から英語を教育するべきなのか、するとしたら何をするべきなのか」に対する答えをについて、前回の記事で3つのポイントから成る結論を先に提示しました。
順を追ってひとつずつ詳細に解説していきたいと思います。
まず、様々な資料を通して得た気づきとして、当然のことではありますが赤ちゃんもそれぞれ個性があり、言語習得に関しても個別差がある為、全員に必ず当てはまる方法は科学的にも見つかりようが無いということです。
但し、その中でも複数の参考資料で同じ主張がされている点であれば、大多数の赤ちゃんに当てはまるのではないかと考え、3つのポイントを抽出した次第です。
尚、今回は0歳児への英語教育というテーマで書いてみましたが、0歳児のみを対象として書かれた本は調べた限りなく、1歳以降の英語教育に関してはまた別の方法も有効になりそうなので、その辺りは子供の成長と共に改めて調べてみて、気が向いたら共有させて頂こうかなと思います。
まずはポイント1の詳細解説から。
0歳児の言語を識別・認識する能力が高いことは事実。但し、CDやDVD等の録音ではなく生身の人間とのコミュニケーションによる言語刺激を与えることが重要。
これは主にTEDのプレゼンで語られていたことなのですが、同プレゼンを要約した内容は以下のようなものです。
● インドにある少数言語Koro語を話すコミュニティ(約800人)ではその言語を後世に残す為、赤ちゃんが生まれるととにかく赤ちゃんにKoro語で話しかける。赤ちゃんではなく、他言語を話す大人に伝えることでも言語の維持が出来そうな気もするが、そういったことはしない。
Koro語コミュニティの人たちは赤ちゃんが「言語の天才」であることを知っているからである。
● 脳の働きを科学的に検証した結果、生後6ヵ月の赤ちゃんは世界中のどの言語の「音」も区別出来ることが判明した。以下の図の通り、この能力は1歳の誕生日を迎えるまでにどんどんなくなっていってしまう。以下の図は英語のRとLの音を日本人の赤ちゃん(赤い線)とアメリカ人の赤ちゃんがどれだけ区別できるかを示したもので、生後半年から1歳になるまでの間その音を聞き続けたアメリカ人の赤ちゃんは聞き取り能力が大きく向上しているのに比べて、聞いていない(日本語ではLもRも「ら」と聞こえてしまう)日本人の赤ちゃんは区別出来なくなっていくことを示している。この半年が音の認識に関する「クリティカルピリオド(非常に重要な時期)」である。
● この時期に赤ちゃんの脳で何が起こっているかというと、聞こえてくる言葉の音の構成の統計を取っており、より多く登場する音に耳を適応させていき、逆に聞こえない音は無視するという作業が行われている。例えば日本語には英語のLの音もRの音も入っていないのでどちらも「ら」という音として処理するよう脳が耳を適応させていく。
● また、ここで重要なのはこの「クリティカルピリオド」に音を聞き分けるを向上させるのはビデオやオーディオから聞こえてくる音ではなく、生身の人間とのコミュニケーションによって使われる言語の音である。下の図は「クリティカルピリオド」の間、1ヵ月に12セッション(1セッション何時間かは不明)の中国語レッスンを受けたアメリカ人の赤ちゃんの中国語の音を識別する能力のを示したもので、ビデオやオーディオでのレッスンを受けた赤ちゃんは、1歳を迎えた時点で何もしていない赤ちゃんとほぼ同等の能力であったのに対し、中国人ネイティブから対面でレッスンを受けた赤ちゃん(Exposed to Mandarinと書いてある△で示されている)は台湾人の赤ちゃん(つまり周囲でずっと中国語が使われている環境にいる赤ちゃん)と同等の能力を維持していた。
<TED (YouTube)>
“The linguistic genius of babies” by Patricia Kuhl
https://youtu.be/G2XBIkHW954?si=Mrt_I4tck_eDFLDr
また、参考資料とした日本の書籍でも以下のような記述がありました。
“新生児の韻律特徴を認識する驚くべき能力は、彼らが一度も耳にしたことのない外国語でも、韻律特徴が違うと聞き分けられることからもわかる。(中略)生まれたばかりの赤ちゃんは、自然言語で使われているすべての音素を聞き分けることができる。これは驚くべき能力だといえるだろう。(中略)ところが、最初の誕生日(つまり生後一二か月)を迎えるまでに、母語で使われない音素の聞き分けができなくなってしまう。”
(バトラー 後藤裕子 英語学習は早いほど良いのか (岩波新書) (p.41, 43)
株式会社 岩波書店 Kindle 版)
更に、ネイティブによる生きたコミュニケーションが重要ということに関しては参考文献に以下のような記載がありました。
“乳幼児期に言葉のインプットが不足すると「言葉の力」が形成できず、思考力が弱い子どもに育ってしまいます。生まれてきた赤ちゃんの仕事は「環境に適応すること」です。赤ちゃんの周囲に「言葉」という刺激が少ないと「言葉は生きるために必要ないもの」と脳が認識してしまい、 頭脳が言葉に対してあまり反応しないように育ってしまいます。頭脳の配線工事は「6歳まで」90%が完成すると言われており、この時期は生きた言葉の刺激を大量に与えることが重要です。親や周囲の人が子どもの世話や遊びを通して言葉をたくさんかけてあげれば、言葉に応じやすい頭脳が形成されます。”
“残念ながら、機械音では赤ちゃんの言葉は育ちません。子どもが言葉を最初に身につける時は、「信頼できる相手とのコミュニケーション」が必要なのです。”
“ただし、英語ができる子に育てたいから「英語で語りかける」のはやめてください。不得意な言葉で単調な語りかけをしても、子どもの言葉の力は育ちません。”
(船津 徹 世界標準の子育て (p.120,121,122) ダイヤモンド社 Kindle版)
“親は自信を持って話せることばを使って話しかける必要がある。子どもはことばだけを吸収するのではなく、母親の匂いや、身のこなし、顔の表情などをトータルに受け入れていくので、親が不得手な外国語を使ったりするとどうしてもぎこちなくなる。幼児の言語習得の動機は、幼児を取り巻く周囲の社会の大事なメンバーになりたいという願望であるから、真正性のある本物の母語話者のことばに触れるのがいちばんである。日本では「英語教育は幼児から」というかけ声とともに、生まれたときから英語で話しかける熱心なお母さんたちも増えているようであるが、母語である日本語を習得する大事な機会を奪うことになるので、要注意である。”
(中島 和子 完全改訂版 バイリンガル教育の方法ー12歳までに親と教師ができること アルク選書シリーズ (p.46) 株式会社アルク Kindle 版)
以上のことから、少なくとも音の区別ということに関しては生後半年から1歳の誕生日を迎える前までの間に英語ネイティブによる生きたコミュニケーションの機会を与えることが有効なのではないのかという結論に至りました(但し、私たち自身の結論に対し、上で引用した「世界標準の子育て」という本には第二言語(英語)に関しては「機械音」でも育てることが可能と書いてあったこと、も補足しておきます)。
ここでの大きな気づき、改めて強調すべきこととしては、”おうち英語”のあり方について十分に考える必要があるということです。
昨今、早期英語教育ということで、日常会話に英語を取り入れ、お母さんやお父さんが英語で子どもに話しかける”おうち英語”も流行しているようですが、上記参考文献にもあったように、親が不得手な外国語を使って話しかけても、ぎこちなくなり、真のコミュニケーションが取れませんし、子どもにとっても、親に対してどの言語で話しかけたらよいのだろうという混乱が生まれてしまいます。
英語が使えるようになってほしい、という願いがどんなに大きなものであっても、まずは母国語である日本語を習得することが子どもにとって何よりも大事です(母国語の能力が低いと、言語を使って考える、思考力まで低下しかねません。)ので、その点は十分理解したうえでおうちでの英語に取り組んだほうが良いと思います。
もちろん、遊びの中で、英語を使ったおままごとをするとか、英語のお歌を歌うとか、英語のカードゲームをするとか、そういった取り組みは、子どもが楽しんでいる限りは積極的に取り入れていったらよいのではないかと思います。
このあたりは、2つ目のポイントである、
0歳児から英語教育をしても日本語の発達が遅れることはないが、「一人一言語の法則」を維持することが大事。また、長期的には母語である日本語の能力が英語習得の基礎となるので日本語の能力を伸ばすことが英語以上に重要。
を解説する次の記事で詳述します。
ちなみに、TEDプレゼンの基になっている研究はアメリカの大学でのものですが、以下の写真にある、この研究に特化した大掛かりな機械(赤ちゃんに対して使っても安全、研究者の間では「火星からきたヘアドライヤー」と呼ばれているとのこと)を使っているようで、さすがアメリカだなと思わされた次第です。
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