40歳、妊婦となる うつの兆候
胎動を感じない!?
無事、40歳の誕生日を迎え、6ヶ月を過ぎたあたりから、体の変化が凄まじいスピードで起こった。それまでは普通に履けていたパンツも靴下も1週間ごとに次々に履けなくなり、出産後も着れる、という一見マタニティに見えないサロペットも日に日にお腹の部分に余裕がなくなっていく。立ち上がるのも一苦労で、だんだんと腰痛もひどくなってきているように感じるし、体も全体的になんだか重い。この中に人がいるんだもんなぁ、と自分の体ながら今までに味わったことのない不思議な感覚。
「そろそろ胎動を感じてくる頃だと思いますよ」なんて助産師さんに言われたけれど、これが実は全然感じないのだ。当初、本気でもしかしたら私はお腹が鈍感なのではないか……と本当に悩んだほど6ヶ月を過ぎてもいわゆる「あ、動いた!」的な物を感じる事がなかった。SNSやネット検索をすると4、5ヶ月ぐらいの人たちが早くも「お腹の中で動いているのを感じます」とか「お腹を蹴ってるのを感じる」なんて言っている。何か赤ちゃんに異常があるのではないか、と次の健診が来るまでの間、気が気でなかったので、健診でお医者さんに思い切って聞いてみた。「あのいわゆる胎動ってのを感じなくて……」と、お腹にエコーを当てながら聞いていたお医者さんが「あ、ほら、動いてますよ」とエコーの画面を見せてくれながら、動いている様子を教えてくれた。「ぶっちゃけ、胎動ってもっと7ヶ月、8ヶ月ってなってこないとまだまだお腹に余裕があるのでそこまで分からないものなんですよ。早い時期に胎動を感じた!と言っている方がいますけど実際、半分くらいは気のせいのこともありますから(笑)」と。気のせいって、と思わず笑ってしまったけど何となくそんな気のせいを感じてしまう気持ちも妊婦としてはわかるような気がした。やっぱり動いてないと不安だもん。妊娠について初めてで本当に1つ1つが知らなかったことだらけだ。本格的な暑さを迎え、「夏は本当に熱中症に妊婦さんは気をつけてくださいね」と言われ、この日も無事、健診を終えた。
病気の兆候。
お腹がいよいよ目立ってきて、暑くなってきた8月半ば。相変わらずバリバリ仕事をしていたこともあって、このところ夫の過保護に拍車がかかっていた。お昼は食べたか、水分はとっているか、妊婦は虫歯になりやすいからキシリトールのガムを食べた方がいい、生肉、生魚はだめ……などなど。大好きなお肉もとにかくよく焼いて火がしっかりくっきり通ってるものじゃないと食べてはいけない。我が家は夫も料理をしてくれるので家事はできる人がやる方式なのだが、ある日、夫が料理をしながらずっと難しい顔をしていた。
「どうしたの?」見ると、半分焦げているようなかなりよく火が通った鶏肉がフライパンの上にあった。「これ、火、通ってるよね?」誰がどう見ても焦げてしまっている鶏肉は、火が通り過ぎくらいなのにそう聞いてきた。「え?だって半分焦げてるじゃん」私は一体、どういうこと?と思いながら、その鶏肉に手を伸ばそうとしたが、いきなり、ダメ、と夫。「鶏肉は菌もついてるから、触っちゃダメ。とにかくちょっと失敗しちゃったから今日は何か取ろう」と、言って出前のメニューを私に見せて、フライパンの上の鶏肉を捨ててしまったのだ。もともと私なんかよりも繊細で神経質、そして心配性なところがある夫のことなので、妊婦への食事のことでより過敏になってるのかも、とこの時は特に気にしなかった。でもこれが病気の始まりだったのかもしれない。今でも一体どうしたら良かったのか、悩んでいるけれど答えは出ない。後から大変なことになることも知らず、私は相変わらず心配性だねぇと軽口をたたきながら出前メニューのタコスのページを開いた。