令和6年度「東海北陸・みよし矯正展」を紹介!刑務所の矯正活動が社会復帰を支える
東海北陸・みよし矯正展とは
「東海北陸・みよし矯正展」は年に一度、名古屋矯正管区および名古屋刑務所主催により開催されるイベントで、今年で34回目を迎えます。
このイベントは、刑務所での作業によって生産された品質の高い製品を手頃な価格で販売する一方で、地域住民に矯正行政の取り組みを紹介し、理解を促進することを目的としています。
東海北陸地方における矯正展としては最大規模を誇る「東海北陸・みよし矯正展」は、さまざまな催し物により、開催するたびに大盛況となっている一大イベントです。
東海北陸・みよし矯正展の目的
「東海北陸・みよし矯正展」は、法務省が主唱する「社会を明るくする運動」の一環として行われています。
収容されている受刑者の改善更生や、少年に対する教育・社会復帰支援のため、矯正行政が果たしている役割や日々の教育活動、改善指導などを紹介しています。出所者などを地域で受け入れていただくため、矯正行政に理解を深めてもらったり、出所者等の再犯防止につなげることを目的としています。
東海北陸・みよし矯正展はどんな内容?
第34回東海北陸・みよし矯正展は、名古屋刑務所で開催されました。
<東海北陸・みよし矯正展の内容>
スペシャルゲスト(ラミレスさん、加藤里奈さん)トークショー(19日のみ)
刑務所作業製品の展示・即売
模擬居室の展示(1/1スケール)
刑務作業の実演・体験コーナー
施設見学
キッズ刑務官写真撮影
護送車両・職業訓練車両の展示
性格検査
刑務所パン販売コーナー(数量限定)
矯正広報パネル
受刑者、少年院生の教育作品展示
職員採用広報パネルの展示、ほか
ステージイベント アイドルグループ idrip、Re:Clash、Star☆Tのライブ 豊田大谷高校ダンスステージ 近隣小中学校による演奏等、さまざまな演目が目白押し
はしご車の乗車体験(19日のみ)
パトカー・白バイ展示(20日のみ)
ミニショベルカー操作体験
メイクアップアーティストによるヘアアレンジ&写真撮影
タミヤラジコン実車化展示
ドローン操作体験
己書による書道体験
キッズダンス
和太鼓演奏 ほか
多種多様なイベントや出展が揃い、名古屋刑務所の広大な敷地を生かしたプログラムが組まれており、一日を通じて楽しむことができます。
2024年(令和6年)東海北陸・みよし矯正展の様子
開場前から200人以上の来場者が行列を作り、先着200名にはオリジナル木工グッズ(スマホスタンド)が提供されました。2024年の「東海北陸・みよし矯正展」には、2日間で11,285名が訪れ、初日午後の雨にも関わらず、多くの方が足を運びました。
毎年恒例、刑務所で作られるパンが大人気!
毎年恒例で、刑務所で作られるパンの販売コーナーには、開場してすぐに行列ができました。
刑務所内で実際に出されているパンを手に取ることができる珍しさや、1つ100円という手頃な価格も相まって、毎年人気のコーナーです。行列が必至のため、最後尾を示す看板が準備されているほどです。購入は1人1個までと制限されていますが、1日目にはチョコレートパン1,000個、2日目には豆パン1,000個が瞬く間に完売しました。
今年は監獄カレーだけでなく、初の監獄ラーメン!
名古屋刑務所で出されるカレーの味を再現した「監獄カレー」が、キッチンカーで販売されています。「監獄食をたべた事ありますか?」というキャッチコピーが興味を引き、来場者の注目を集めています。
今年は「監獄ラーメン」が初めてのお披露目です。刑務所のレシピを基にしたカレーがラーメンにかかっていて、ここでしか味わえない限定メニューとして話題を集めました。物珍しさも相まって、多くの来場者がその味を堪能していました。
食欲をそそるキッチンカーが勢揃い
キッチンカーや飲食出店ブースで会場内はとても賑やかでした。
名古屋の名店「味仙(みせん)」や「世界の山ちゃん」のキッチンカーも出店し、多くの注目を集めていました。
野菜や果物を販売しているブースは行列ができるほどでした。
甘味処のブースも出店されていました。
焼きそばやフランクフルト、いか天やたこ焼きなどの屋台やキッチンカーも出店し、会場には食欲をそそる良い香りが漂っていました。
ラーメンのキッチンカーやパンの販売ブースも設置され、ペットボトル飲料も販売されていました。
メインステージ前には日差しを避けられる休憩スペースが設けられ、キッチンカーや販売ブースで購入したものを楽しむ方や、休憩する方々で賑わっていました。広々としたスペースで、多くの来場者がゆったりと利用できるようになっていました。
安くて良いモノが勢揃い!刑務所作業製品の魅力
矯正展では、刑務所作業製品の購入を目的に来場する方も多く、来場者の要望に応えるべく、数多くの刑務所作業製品が展示即売されています。
横須賀刑務支所で作られているブルースティックや、函館少年刑務所で作られているマル獄シリーズは注目を集めています。
矯正展ならではの大きな家具(ソファやタンスなど)や、木工製品も多く展示即売されています。
革製品の靴や鞄なども展示即売されています。どの製品も丈夫でありながらリーズナブルな価格なので、刑務所作業製品にはリピーターも多く見られます。
自分を知ることができる性格検査テスト
性格検査コーナーでは、刑務所で実際に行われる性格検査を模倣した簡易版を無料で体験できます。60の質問に「はい/いいえ」で回答していくことで自身の性格の特徴を知ることができるようになっています。
机に向かい、黙々と質問に回答する来場者。回答が終わると、性格検査の結果が1〜2分で印刷され、持ち帰ることが可能です。結果を見せ合って楽しむ来場者同士の姿も見られ、会場は和やかな雰囲気に包まれていました。
大人も子供も楽しめる体験コーナー
会場には、無料や500円程度で体験できるブースがいくつか出店されており、多くの家族や友人同士で楽しまれていました。
七宝焼きや組紐の体験では、実際に刑務所で作業を教えている職員から直接指導を受けることができます。
みよし市更生保護女性会のブースでは、「ほごちゃん」の塗り絵やちぎり絵が体験でき、小さなお子さんたちがスタッフに教わりながら楽しんでいました。世代を超えた交流が生まれる素敵な場です。
ヘアメイクアップアーティストによる本格的なメイクを子供が体験できるコーナー。メイクを受けた女の子たちが嬉しそうに笑顔になる姿が印象的でした。
「己書(おのれしょ)」という筆ペンを使った体験や、ドローン操縦体験など、普段なかなか体験できないようなブースもありました。
作業現場で使われる車両や護送用車両が展示されており、来場者は実際に触れたり車両に乗ったりすることができます。車両の前で記念撮影をする方々も多く見られました。
地域住民や様々な団体で賑わうブース出店
刑務所や一般企業を含む約50のブースが出展され、製品販売や活動紹介、遊び体験などが行われ、来場者の注目を集めていました。
ボードゲームやカードゲーム、輪投げ、ミニショベルカーなど、大人も子供も一緒に楽しめるブースもあり、多くの人で賑わっていました。
TAMIYA(タミヤ)のラジコンを実車化した車両が展示され、実際に中に入ることも可能でした。車と一緒に子連れの家族が記念写真を撮影する姿が多く見られ、注目を集めていました。
パトカーや白バイに触れることができたり、小さな子供向けに刑務官の制服を着て撮影できるコーナーもあり、こちらも子連れの家族に人気でした。
スペシャルライブやスペシャルゲスト、地域住民の皆さんで盛り上がるステージイベント
1日目にはラミレスさんと加藤里奈さんを迎えたスペシャルゲストトークショーが開催されて盛り上がりました。
メインステージでは、地元の方々やさまざまな団体が会場を盛り上げ、スペシャルライブとして「idrip」「Re:Clash」「Star☆T」も出演しました。
みよし市のご当地キャラクター「キューちゃん」も、東海北陸・みよし矯正展を盛り上げるためにやってきていました。子供に人気があり、一緒に撮影する様子が見受けられました。
刑務所の単独室を再現したブースに入れる!
今年も施設見学が実施され、実際に刑務所の内部を見学することができましたが、こちらは単独室を忠実に再現したブースの写真です。来場者は中に入って見学することが可能です。室内にテレビが置かれている点は、多くの方にとって意外な発見かもしれません。
普段は滅多に目にできない環境を体験でき、刑務官に直接質問したり説明を受けたりする貴重な機会となっています。
矯正に関する取り組みについて
東海北陸・みよし矯正展では、広報活動の一環として広報パネルを展示しています。これらのパネルを通じて、来場者は刑務所内での活動の取り組みについて知ることができます。
名古屋刑務所をはじめとする矯正施設では、出所者が再び刑務所に戻らないよう、再犯防止に向けた計画が推進されています。再犯の主な原因は「住む場所がない」「就職先がない」という2つの要因で、どちらか一方ではなく両方の支援が不可欠です。出所者の社会復帰を円滑に進めるためには、社会全体の理解と支援が求められます。
こうした背景のもと、矯正行政への理解を深め、支援を促すことを目的に矯正展が開催されています。
矯正広報パネルだけではなく、受刑者が作った文芸作品も展示されています。
2025年6月から「拘禁刑」という新たな取り組みが始まります。「変革する矯正」として、矯正広報パネルで紹介されています。
名古屋刑務所長の部屋が公開!
今年は名古屋刑務所の所長室が公開され、どのような場所なのかを見たいと多くの来場者が訪れました。所長の椅子に実際に座ることもでき、来場者はその座り心地を体験しながら所長の雰囲気を感じ取っていました。
名古屋刑務所の歴代所長の顔写真が並んだ額も展示されており、60代にわたる所長たちの姿から、名古屋刑務所の長い歴史が伝わってきます。
名古屋刑務所の空撮写真も展示され、昔と今の比較ができるようになっていました。写真からは時代の移り変わりが感じられ、敷地面積の縮小や刑務所周辺の変化も見て取れます。
刑務官が名古屋刑務所の歴史を教えてくれることで、名古屋刑務所に関する理解が深まる場でもありました。
東海北陸・みよし矯正展を通じて地域の方々へ伝えたいこと
「東海北陸・みよし矯正展」を通じて伝えたい想いについて、名古屋刑務所の統括矯正処遇官・土川さんにお話を伺いました。
「今回のテーマは、『変革する矯正』です。刑務所の存在意義を問われることのないよう、刑務所自身が変わっていく必要を感じ、このようなテーマで取り組んできました。矯正展を通じて可能な限り日常の生活指導の様子などを見てもらい、地域の皆さんに理解していただければ幸いです。
刑務所作業製品の売上は、刑務作業の新たな原材料費や犯罪被害者への支援等の資金となっています。小物類などは常設の展示場で購入いただけるのですが、家具などの大きなものは矯正展のような機会でなければなかなか購入できないのでぜひ触れていただきたいです。
来年から刑務所では『拘禁刑』が始まります。拘禁刑とは、個々の受刑者の特性に合わせて、必要な刑務作業または指導を行う法律です。拘禁刑の目的は、単なる制裁ではなく、更生と再犯防止に重点を置くことですが、これまでの懲役刑や禁固刑の仕組みとはだいぶ異なるため、実際の方向性や手段を模索しています」
名古屋刑務所について
名古屋刑務所は、法務省矯正局の名古屋矯正管区に属する刑務所です。名古屋矯正管区内で最大の規模を持つ基幹施設。日本人だけでなく外国人も含め、収容されている男子刑務所です。
名古屋矯正管区は、法務省矯正局の地方支分部局として、管轄地域(富山県、石川県、福井県、岐阜県、愛知県、三重県)内にある矯正施設(刑務所、拘置所、少年院、少年鑑別所)の管理運営を図るための指導監督調整等に当たっています。
名古屋刑務所がある名古屋矯正管区について
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei08_00106
名古屋刑務所の基本情報
最寄駅は、名鉄豊田線の三好ヶ丘駅。駅から徒歩20分もしくはバスで10分ほどの距離です。「名古屋」と付いていますが、名古屋駅からは1時間少しかかる場所にあります。
所在地
〒470-0208 愛知県みよし市ひばりヶ丘1-1
交通手段
●名鉄豊田線「三好ヶ丘駅」下車徒歩20分
TEL 0561(36)2251
FAX 0561(36)2256
刑務所作業製品の展示場も併設されています。
〇営業時間
9時~12時15分、13時~15時45分(土日祝日を除く)
〇展示・販売製品
名古屋刑務所で製作された木工製品、洋裁製品、印刷製品、金属製品、窯業製品をはじめ、全国の刑務所から集められた様々な刑務所作業製品が展示されています。
名古屋刑務所
https://www.moj.go.jp/kyousei1/kyousei05_00058.html
〈TEXT/はなまきケイ〉