FA5/CB5[金融リテラシー/高難度]中央銀行のマンデートに資産価格を管理することを入れませんか(2022/10/14updated)
中央銀行は経済の血液であるマネーの動きを相当程度コントロールすることができます。それを通じて経済全体をコントロールできる立場にあります。一般の人にはその姿が見えにくいものの、経済の王様と言えます。中央銀行には政府からマンデート(委任された権限)が与えられています。基本的にはそれに雇用の最大化と物価の安定を含んでいます。
物価の上昇は人々から購買力を奪います。特に貧困層や給与所得の無い年金生活者に与える影響が大きく、社会を不安定にします。失業率の上昇は失業者の所得を失わせるだけでなく、他の人の所得の伸びを抑えます。物価と雇用は人々の生活に直接的な影響を与えます。それゆえ、中央銀行のマンデートになっています。
金融政策はそのマンデートを達成する過程で、雇用の最大化のために金融緩和を行うとその間接的な効果として、株や不動産などの資産価格が理論価格から上方に乖離する場合があります。一方、物価の安定のために金融引き締めを行うとその間接的な効果として、それら資産価格が理論価格から下方に乖離する場合があります。中央銀行は資産価格を管理することが問われていないため、その扱いについてフリーハンドと言えます。つまり、金融緩和が行き過ぎて経済バブルを引き起こしても、その後に金融引き締めでその経済バブルの崩壊を引き起こしてもその責任は免れます。
資産価格の振幅は間接的ながら資産効果を通じて景気に影響を与えます。その上昇は景気に好影響を与えます。加えて資産を持つものと持たざるものの格差を拡大し、貧富の格差を広げます。社会の平等に対する合意を反映していません。一方、その下落は逆資産効果を通じて、景気に悪影響を与えます。社会の安定から考えて、無視できるものではありません。資産価格をコントロールすることも中央銀行のマンデートに組み入れることが適当と思われます。
1980年代の日本の経済バブルの発生、1990年代のその崩壊の原因は専ら日本銀行の金融政策が引き起こしたものです。株価や不動産の価格の大きな変動についてほぼ批判されていません。また米国中央銀行Fedのジェローム・パウエル議長は2021年にインフレ率が高まってもそれを軽視して金融緩和を続けました。2022年9月でCPIが前年同月比8.2%増と高インフレとなっていることで、その批判を受けます。しかし米国の株価について2022年の上半期のダウ平均を取ると年初来で15.3%安と大きく調整しても、その責任は問われません。2021年から金融引き締めを行っておけば、株価のアップダウンは避けられたはずです。