見出し画像

Netflix『地面師たち』

2017年8月、五反田の土地をめぐり起きた50億を超える詐欺事件が連日報道された。
大企業が詐欺にあった衝撃は大きかった。

この事件をモチーフに小説家・新庄耕が書いた「地面師たち」を映像化したのが本作品だ。


この作品を観たとき、私は、非現実的な詐欺の構造を目の当たりにしながら脳裏によぎる実際の事件とのリンクに好奇心を掻き立てられた。

さらに、虐待的で利己的な得体の知れない世界観にぽつんと存在する、心を無いものとした綾野剛演じる辻本拓海の変化に心を掴まれてしまった。

心理、社会や組織に興味のある方にはハマるだろう。要するにほとんどの人が面白いと思うだろうと思う。
キャスティングからその怖そうな香りは伝わるが、この作品の中で重要な緊張感はその怖さではなく交渉という意味でのスリルのため、怖いものが苦手な方でも楽しめるはずだ。

この作品の面白いところは、人間臭さである。
詐欺師のプロでないと成立しないと言われる高度なスキルを持つ詐欺集団「地面師」は土地売買で巨額の金を騙し取ることを生業とする。
ゆえにそのリーダー格は終始腹の底を明かさない。
血も涙も無いような言動だが、この人を象徴する「エクスタシー」という言葉から人間味が溢れている。

本作で脚本も務める大根仁監督は、映画ドラマの「モテキ」、「トリック」「エルピス」などでも監督を務めている監督だ。
視聴者として観たい作品をつくることに軸を置いているようで、まんまと私は、騙す側、騙される側、警察の構図に息をのんだ。

騙す側と騙される側の交渉、
詐欺集団として仲間であってもその中で行われる交渉、
社内稟議を通すための社内政治の交渉、
警察と詐欺師の交渉。
その誰もが自らの立場を掛けた交渉がが交差する。


大根監督が作品制作にあたる経緯を
インタビューで以下のように答えている。

「身近で起きたニュースに関心を持っていたところ、
ある日書店にそのことを題材にした本が並んでいました。
吸い込まれるように手に取り、1日で一気に読み切った。
本の出版社、集英社に自分で直接電話して映像化権にエントリーしました。
既に何社かエントリー済みだったこともあり、すぐに愛のある企画書作って送ったんです。」


以下の動画内でも作品について出演者が語っている。
(ネタバレあり)


作品の面白さもさることながら、事件そのものも前代未聞で興味深い。

事件の実態に関心を持つ方はその調査内容が書かれていた以下のノンフィクションがおすすめだ。


いいなと思ったら応援しよう!