ジェームズ・ダイソンが dyson の掃除機を作るまで
5月7日(木)の「カンブリア宮殿」という番組で、「世界最強の創業者」として dyson の創業者ジェームズ・ダイソンが取り上げられた。彼の掃除機を作るまでの執念がすごかったので、note にまとめてみた。
掃除機を作り始めたきっかけ
1978年のある日、ジェームズ・ダイソンが家の掃除をしていたところ、掃除機の紙パックがゴミでいっぱいになってしまった。あいにく替えの紙パックが家になかったので、紙パックを再利用することにした。紙パックを切り開き、中のゴミを取り出した後、切り開いた穴をテープで防いだ。それから掃除機をかけてみると、掃除機は紙パックを再利用する前と同じで、ゴミをまったく吸い込まなかった。掃除機がゴミを吸わない原因を追求した結果、紙パックは一度ゴミを吸うとゴミで目詰まりすることが分かった。これが吸引力の低下を引き起こしていたのだった。
掃除機の仕組み自体に問題があることが分かったので、掃除機を作るメーカーに腹が立ち、かなりの不満を感じた。同時に、デザインやエンジニアリングを学んだ者として、「吸引力の低下が起きない掃除機」を作らなければならないと決心する。
世界初のサイクロン掃除機の開発に成功
ある日、製材工場の屋根に木くずと空気を分離するサイクロン装置を見て、サイクロン技術を掃除機に応用するアイデアを思いつく。そのアイデアを実現するため、一人で家の倉庫で掃除機を作る生活が始まった。5年後の1982年、5127個目の試作品で、ついに世界初のサイクロン掃除機の開発に成功する。
5127個もの試作品を作るまでの過程も面白かったので、簡潔に紹介する。最初の試作品は、ダンボールやダクトテープから ABS ポリカーボネートまで、素朴な材料を使って作られた。現在はイギリスのマルムズベリーにあるダイソン本社に展示されている。
15個目の試作品ができた頃、3人目の子どもが生まれた。住宅ローンもあり、家族を支えるためにもちゃんとした仕事に就けと友人からたびたび言われていた。1436個目の試作品ができた頃、奥さんが絵画教室を始めて家計を支えるようになる。3146個目の試作品ができた頃、エジソンの次の言葉に救われ、勇気づけられた。
資金難のため、ライセンス契約を目指す
ようやく満足の行く試作品を作ることができたジェームズ・ダイソンだが、その試作品を量産するための資金がなかった。そこで、ヨーロッパやアメリカに飛び、サイクロン技術を買ってくれる会社を探し始めた。しかしながら、交渉はすべて失敗に終わり、逆に訴訟に巻き込まれるありさまだった。ほとんどの企業は、新しい技術を取り入れることに全く関心を示さなかった。
1985年、ハイテク家電市場である日本へ訪れる。このとき、欧米とは違い、日本は試作品に対して大きな関心を示していた。このときのことをジェームズ・ダイソンは次のように振り返っている。
「日本人は新しい技術に興味を持ち、興奮してくれた。これは私にとって初めての反応だった。細部に気を配り、新しい技術に熱意を燃やす日本人に私はとても励まされた」
最終的に、エイペックスという日本企業とライセンス契約を結ぶことができた。1986年に日本のライセンス下で製造され、1987年に1台約20万円で販売された。1991年には日本の「国際産業デザイン見本市」で賞を受賞。世界初のサイクロン掃除機の誕生に日本が関わっていたことに驚く。
自分の会社を立ち上げる
日本企業とのライセンス契約により、ジェームズ・ダイソンはようやく収益化することができた。そして、儲けたお金を元手に、1993年に「Dyson」という会社を立ち上げる。このとき会社から発表された製品が「ダイソンDC01」である。ちなみに、DC は Dual Cyclone の略。
自社を立ち上げるのは、最初の試作品を作ってから実に15年後の出来事で、ジェームズ・ダイソンはこのとき46歳だった。その後も製品の開発や改良をし続け、会社は現在に至るまでに成長した。
ジェームズ・ダイソンの原動力の源
掃除機の試作品を作り始めてから会社を設立するまでの15年間、ジェームズ・ダイソンには収入が一切なかった。奥さんが家計を支え、必要なお金は銀行から借りていた。それに住宅ローンもあった。子どもも3人いて、友だちには家族のためにもちゃんとした仕事に就くようにと言われていた。それでも、トーマス・ワトソンの言葉に勇気づけられながら、ジェームズ・ダイソンはあきらめずにやり続けた。
ジェームズ・ダイソンのあきらめずにやり続ける原動力はどこからくるのだろか? 彼は、掃除機に対する「怒り」と「苛立ち」だと答えた。そして、紙パックの問題を解決すれば、きっとみんなが買いたがることを確信していた。ジェームズ・ダイソンの執念と行動力には驚かされる。
最後に、ジェームズ・ダイソンが残した言葉を記しておく。