埼玉県立小児医療センター

フクシマの事故で子どものガンは増えているのか? #2


小児がんデータを探す

フクシマの事故で、がんの人数は確実に増えている。でも、日本では高齢化が進んでいるので、がん患者が増えるのは当然だと思われている。

がん患者の総数を調べても被ばくの証明にはならない。高齢化と関係ない小児がん(0歳から14歳まで)の患者数が増えていれば、老化が原因ではないと推測できる。

私は統計を探す事にした。


まず、福島の事故前のデータを探した。こちらはすぐに見つかった。

「がん対策推進協議会小児がん専門委員会」の資料に、日本の小児がん患者数と発症率のグラフがあった。その説明を抜粋する。

・0歳から19歳までの未成年者のがんは毎年、2000人から2500人が発症している。

・小児がんに罹る子どもは、1980年以降、徐々に減ってきているが、発症率に大きな変化はない。

・つまり、患者が減ったのは治療成績が上がったからではなく、子どもの数が減った為である。

期間は1975年から2005年までだ。2011年のフクシマの事故の後は、どう変わっただろうか?或いは、変わらなかったのだろうか?

がん情報サービスというサイトにアクセスして、フクシマの事故以降のグラフを得た。小児がん専門委員会も同じデータサイトで作成しているから、二つのグラフは連続している。変化があるのか、並べて比べてみる。    まずは、患者数から。


小児がんの患者数

上のグラフ:(福島の事故前)1975年~2005年  

          下のグラフ:1975年~2014年



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note 小児がん患者数 ~2014年


次に、子ども10万人当たり何人ががんになったか、年齢別の罹患率を表す。

小児がんの年齢罹患率

    上のグラフ:(福島の事故前)1975年~2005年 

    下のグラフ:1975年~2014年

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note 小児がんr罹患率 ~2014年

http://gdb.ganjoho.jp/graph_db/index


ん、ん~?

確かに2005年までのグラフでは、専門委員会の説明通り「患者数は減るが、発症率は変わらない」と言えるが、2014年まで見ると微妙に違う。

2007、2008年くらいを境にして、患者数が増え、発症率は上がっているように見える。

この頃、何があったのだろうか?

私は、柏崎刈羽原子力発電所の放射能漏れを疑っている。

画像5

2007年7月16日、 新潟県中越沖地震が起き、東京電力柏崎刈羽原子力発電所は最大震度6強を感知して自動停止した。東京電力は当初、「この事故で出た放射能は微量で健康への影響は無い」としていた。が、後に、訂正した。「タービン建屋の復水器の放射能除去装置が地震で止まってしまい、放射性のガスをそのままドライベントした」と公表した。

ベントとは、原子炉や格納容器の中の汚染された空気を外へ逃がす作業。
ドライベントとは、フィルタを通さずに汚染された空気をそのまま外部へ放出する事。

東京電力は、原子炉が自動停止すると復水器のフィルタ装置が自動で外れる仕組みを知らなかったそうだ。結局、作業員が手動で装置を再開させるまでの二日間、ドライベント状態で濃い放射能が排気塔からダダ漏れした。

この時、どれほどの量の放射能量が出たのか、東京電力は明らかにしていない。東京電力は「微量で問題ないので報告義務は無い」としたが、それは「法的責任を問われない量」という意味でしかない。現在の法律では、気体になった放射能や放射性希ガスをベントしても罪には問われないからだ。

この事故については、下のブログが詳しい。


話しを元に戻す。

2007年以降、小児がんの発症率が上っているかもしれないが、このグラフでは期間が短くて判断できない。

それで、小児がん学界の医師達の意見を探してみることにした。


小児がん専門委員会

フクシマの事故があった年の8月、小児がん専門医委員会は、「~今後の小児がん対策のあり方について~ 」を協議している。フクシマからの放射能については言及しない一方で、小児がんの患者へは継続的な治療と長期のケアが必要だと提言していた。

2015年、小児がん専門委員会はその具体的な対策として、全国を7地区に分け、地区ごとに拠点病院を定めた。15の拠点病院は、毎年、協議会を開いて情報を共有している。

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拠点病院の協議会のホームページに2015年以降のデータを見つけた。が、グラフにはしない。理由は、2014年に統計方法が変わり、以前とは違う年齢帯で表されている為だ。連続性が無いので、数字を羅列するだけに留めておく。

それでも、見ていただければ、小児がんの患者数が増えている事はおわかりいただけると思う。子どもの数はどんどん減っているのに、だ。

フクシマの事故の影響があるか否かは、各自の御判断にお任せする。専門委員会では、議論にさえ、なっていないので・・・。


小児がんの患者数(0歳から18歳まで)

        2014年     2015年    2016年     2017年 造血器腫瘍    1309     1556     1479    1479
(うち、再発)  (150)    (164)     (156)     (113) 固形腫瘍     1436     1690     1682                1800
(うち、再発)  (155)    (196)     (200)                 (166)
小児がん合計    2745     3246      3161      3279


(#3へ続く)


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