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死んだ目の移民と、キラキラしてる観光客。海外生活は泥を這うが如し
ミンくん?ミンくん聞いてる?うどんを聞いて?注文だよ!注文。
ベトナム人を睨みつけていた。
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ここの丸亀製麺の店長はどうやらスパルタ式のようだ。本人は私に聞こえない声でベトナム人のバイトに「注文を聞け」、と指示しているつもりみたいだが、残念ながら丸聞こえである。
叫ばれている相手、恐らく名前はミンくん、は死んだ目で斜め45度上を見ていた。サボタージュを決め込んでいるなら結構覚悟が決まっている。結局、今回はこのベトナムの戦士が店長に勝った。この雰囲気に耐えきれなくなった隣の日本人店員が私に注文を聞いてきたからだ。
孤独なミンくんの戦いは今後もしばらく続くのだろう。終わりはいつだ?それは出稼ぎ目標を稼ぎ終えたらだろうか?それともこんな酷い扱いをされても終わりも考えず日本で働き続けるのか?
釜玉うどんを席に運びながら、
ふとそんな思考が走った。
かけうどんを食べ終えると、私は店を出た。
足取りが重い。ランチがもう終わってオフィスに戻らないといけないことも理由の一つだが、昼飯時に怒鳴られるベトナム人を見ながら食事をしたので胃もたれしてしまったのもある。
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渋谷は平日でもごった返している。
スクランブル交差点では群衆がまさに波のように広がっている。もはや最近は、はしゃいで写真を撮る観光客の方が日本人より多いんじゃないだろうか 。
信号が青になるのをぼーっと待ちながら、京王線の方に目を向ける。
聞いたところによると、この津波を見る最高のスポットが京王線の駅舎らしい。確かに目を細めて遠くを眺めると何人もの観光客がこちらを見ていた。
不思議な話だ。そんなに俺たちを見るのが面白いのだろうか?
意味もなく、交差点の人混みに聞き耳を立ててみる。すると60代くらいの白人男性が「なんだ人がいるだけの交差点じゃないか」と不満そうな声を妻に漏らしていた。
するとその声を無視するかの如く、彼の娘がアニメのキーホルダーをたくさんぶら下げてながら波の中に突っ込んでいった。どうやらこの旅の主役はこのご主人ではなく娘さんらしい。
「おじさん、マジレスはダメだよ、観光なんだから楽しんだ方がマシだよ。あなたたちはあのミンくんと違って現実を直視しなくてもいい、観光客様なんだからさ。」
そう思った。
目の色が違う移民と観光客
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この渋谷には対照的な2者が混在している。
片方は移民の労働者で、もう片方が夢の世界を楽しんでる観光客、つまり、どちらも外国人だ。
そして彼らが交差する渋谷、こういう観光地は私に両者に目の色が違うと実感させてくれる。
まず人種が違う。どんなに人種差別撲滅を訴えても貧しい地域と豊かな地域がこの星にはあって、白人は金持ちのことが多い。だからコンビニやあのうどん屋で働く彼らはアジア人だが、微笑んでる観光客は白人だ。
話は変わるが妻が見せてくれた金持ちメキシコ人のクライアントはスペイン人と見分けがつかないくらい100%白人だった。
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400年のスペイン支配が経っても混ざらない何かを感じる。
また、この2者は漂わせている雰囲気すら違う。それが目の輝きを異なったものにさせる。観光客は驚きと非日常感で目をきらめかせているが、移民の目は漆黒の闇に染まってる。あんな立ち仕事続けていれば誰だってそうなる。
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特に、移民は否が応でも「労働」から逃げられないのだから、観光客が楽しんでいるその非日常が労働する彼らにとってはただの苦痛だ。
...なんて、話は海外生活をしているブロガーはみんな書いていることか...
なら私はもう一段階踏み込んで話そう。
例えば、よく日本の労働環境が嫌で海外就職する人がいるが、彼らは移民という立場でマスコミが言っているような欧州の寛容なワークスタイルは享受できるのだろうか?
そんなわけない。
天国を求めて地獄に降りていく人たち
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大学時代の友人達の幾人かがいつも言っていた。「日本社会は労働地獄で、こんなところにいたら死んでしまう」と。
だから彼らは天国を目指した。ヨーロッパだ。1人はドイツに、そしてもう2人はフランスに旅立って行った。
しかし、結果は残酷。彼らは労働ビザを取得できなかった。というわけで、働けないからと今は専業主婦/主夫になっている。
これは一体どういうことだ?
労働地獄から抜け出す前に、労働できてないじゃないか。それ、どういう体を張った皮肉なんだよ。
例えば、日本は女性が活躍するには社会的に難しいからドイツに行くんだと、ドイツ語を学んでいた大学の同級生は言っていた。夢の国に渡航後、彼女は駐在おじさまの愛人になっていた。
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その後、夢は付き合っているドイツ人彼氏(いや、別に彼氏いるんかい!というツッコミは置いといて)と結婚して彼に養ってもらうことにいつしかなっていた。人生の方向転換は全く問題ないが、そもそも社会人として活躍したくてドイツに行ったんじゃないのか?
結局その友人も数年して音信不通になった。今は何かが起きてドイツのバリキャリになっていることを祈るばかりだ。
海外は泥沼ばかりじゃないか
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ここ10年出会う人、多くが皆こんな感じなのだ。8割はこんな感じで、残りの2割は普通とは違うことができる特別なバックグラウンドがあって、しかも誰もついていけない努力をしていた。
幼少期長くカナダに住んでいて、医者の勉強をしてるハンガリー在住の日本人
3代続く差別に疲れ果て、日本で生活しなくていいなら何だってやってやるとイギリスで楽器のチューニングをして働く韓国系日本人
子供の頃フランスに住んでいて、そのまま仏国籍を取得した音楽の先生。なお、イタリア人とのハーフ
全く、「普通の日本人」ではない。彼らみたいな人以外にとって海外就職はは「再現性のない博打」だ。
だってそうだろう。
労働条件をマシにしたいなら方法はいくらでもある。例えば難しい国家資格を取ろう。極論公認会計士をとればぬる〜く働いて500万くらいもらえる事務所は国内にポツポツある。
こっちの方が再現性はよっぽどマシだ。試験がとても難しいとわかっているからみんなやらないだけだ。
だが、海外移住と海外就職は難しいことすら世間に知られていない上に再現性が低く、難易度が高い。
積立投資はやらないのに裏カジノに直行して金を稼ごうとする奴を人は普通止めるが、海外就職は止めない。なんかいいイメージだからだ。
マジレスしすぎたかな。
とはいえ、こんなマジレス話ばかりするとこの現実に耐えられる人と、耐えて現地で地位を築いた人以外読んでもらえないというジレンマに苦しむことになる。
ヤスラージャーナルさんという、カナダ移民するための戦略を語るYoutuberさんがいる。
彼の語る移住戦略はどれもごもっともで、実際彼も現地企業でマネージャーとして働いているのだが、その情報の有用性に対してチャンネル登録者は少ない。これは明らかに言ってることがマジレスすぎて、夢を見たい大多数の人たち(つまり留学エージェントやワーホリ業者のカモ)を逃しているからだ。
私も、こういう情報を書くと、ハートを頂けるのは決まって海外に在住が長い方に偏る傾向があるのだがそれでもいいと思っている。
私がこれをやっているのは趣味だからだ。
趣味で移民がどうなるか知りたいから、自由研究して発表しているだけ。
そこに価値を置いて読んでもらえればそれだけで嬉しいのだ。
さて、今日も夜が更けてきた。数年前から日本企業のサラリーウーマンになった外国出身の妻も「早く寝ないと、明日も私がミスして課長に怒られるだろ!」と私を急かしている。
非日常ではないし、辛いこともあるが楽しい日常に戻ろうと思う。私は博打するより、毎日努力を積み重ねて生きる。