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海外フリーランス案件が違法労働だった件

先日、私は日本で働く外国人がリスクを理解せずに個人事業主になる例があるという内容で以下の記事を書きました。

実はその後も興味が尽きず色々なケースを確認したのですが、どうやらLinkdIn界隈には違法労働を個人事業主にさせようとする企業すらいるらしいと知るに至ったのです。

そこで今回は早速空き時間を使って実際に、

その様な業者に接触→内定までもらってみて、実態を確認して来ました。
皆さんにはぜひこんな仕事に引っかからないでねとお伝えしたいです。

LinkdInに現れる高単価求人

噂を聞いたのは前回の記事を書いた後のこと。

ある日本在住の友人に最近どブラックフリーランスの調査にハマってるんだと話をしたところ、

「そんな求人はありふれてるよ。なんならLinkdInを覗いてみればすぐに見つかるはずだ」

と、貴重な情報をくれたのです。

えぇマジで…?

ということでモノは試しに実際にLinkdInを覗いて見ました。

すると…

ある。実際にある!

旅行の予約をする簡単なお仕事

相手企業はアメリカの旅行会社で、現在日本在住でツアーに関係するホテルや鉄道の予約業務ができる人間を探しているとのこと。

「この仕事は英語でアメリカ本国とのスタッフとコミュニケーションができる社員を求めています」

正直、この内容を読むと自分の英語力でも大丈夫か気になったものの、他は本当にアルバイトでもやれるような内容に見えます。

なんだ、簡単そうじゃん。

そしてさらに、きっちり募集要項に記載されていたのが以下の内容でした。

「この契約はアメリカ本社であなたを正規雇用する契約ではなく、アメリカ本社からの業務を個人事業主として業務委託してもらうための契約になります。よって、税金の支払いなどは貴方に行っていただく必要があることをご注意ください。」

ふ~む。了解。まぁとにかく面接してみよう。

契約書は合格しないと確認できないですから。

5次面接まで毎日面接

ということで、早速英語で簡単な履歴書を作成して

先方に提出してみました。

すると、提出した翌日に早速メールが来ており、、

「おめでとうございます。あなたの履歴書を確認しました。素晴らしい内容で感銘を受けました。我々としては是非貴方とお会いしたいと考えています。明日の日本時間10:00より面接が出来ませんでしょうか?」

ファッ明日!?
明日10時!?

早すぎるやろ!

と思いつつこれがアメリカ流なのかもしれないと、了承のメールを送りました。

ただし、日本国内で業務中時間なので日本時間の朝の7時からじゃダメか?と確認したところ、10分で返事があり「OK!」とのこと。

いや、OKなんかーい!

そんな事を考えながら面接の準備をいそいそと進めていると、早くも時間は経って当日7時。そこから怒涛の合格→翌日面接ね→合格→以下ループを繰り返す事になりました。

これが計5回の面接だ!

  • 人事マネージャーとの初回面接

    • 現在のキャリアの確認

    • なぜこの仕事を志望するか確認

  • 筆記試験

    • 「例えば団体客が京都に行きたいとしたらどの交通機関を予約する?」など実技の試験

  • ブランドマネージャーとのニ回目面接

    • 現在の会社の状況なども説明されつつ、企業へのカルチャーマッチを確認された模様

  • 将来の同僚との短時間連続面接(3人)

    • 3人の将来の同僚と30分ごと1.5時間で面接。

    • 各人と上手くやっていけそうか確認

ここまで経過した時間が概ね5営業日。つまり、ほとんど毎日面接していたことになりました。

そして…

「おめでとうございます。是非貴方と働きたいと考えますので、個人事業主としての労働契約書をお送りします。つきましては電子サインをして頂き即時メールで返送いただけますでしょうか。期限としては本日含めて3営業日以内です。」

いや、だから契約内容の確認が3営業日しかないって早いねん…怖いわ…

薄すぎる契約書がメールで届く

さて、こうして内定通知と共に届きましたるは英語で書かれた契約書。

確認をしてみると日本の常識からすればこんな内容で大丈夫か!?

と思う文面が並んでおりました。

特にやばいと思った例を並べるとこんな感じ

(法的文書っぽく書きたくないのでゆる~く書きます)

  • この仕事の範囲:
    この仕事は観光業をしている我が社の手伝いが主な業務だよ。例えば、公共交通機関やホテルの手配などをしたりするよ。

  • 仕事に関する損害賠償責任:
    あなたはこの仕事に関係することにのみ責任を負うよ。

  • 他社業務との兼任に関して:
    他社と仕事をする場合はあらかじめ私達の会社に報告してもらうよ。

いやいや、一体これなんですか。
合計3ページ位の薄っぺらい契約書が来たと思ったら内容がこれですよ。例えば口頭では有給休暇は20日あると言っていますが、そもそもが業務委託契約書になっています。

業務委託契約に有給休暇なんてそもそも存在しないじゃないですか!

それに業務範囲の定義も曖昧で、なおかつ損害賠償責任に関してはさも「私達はフェアな企業です」とでも言いただけに「業務責任はあなたの業務に限定します」って記載していますが、自分の業務以外の責任まで押し付けられて良いわけないじゃないですか。

これ書いてること無茶苦茶ですよ?

しかも極めつけにはフリーランス扱いしているのに、他の企業と同時に働くことを規制するような条文を入れている始末。もうこれではいつでも切り捨てられる都合のいい駒になってくれと書いてあるラブレターじゃないですか。

なんじゃこりゃ。終始、無茶苦茶や!

これ資格が必要な業務では?

と、既に契約書からしてブラック企業の片鱗を見せつけてくれているわけですが契約金は普通よりは高い月45万円。

う~ん、まぁもうちょっと真面目に契約できるのか考えてみるかと思ったところ、この様子を見ていた私の親から一言もらいました。

「いや、それ旅行業として登録が必要な仕事内容じゃない?」

えっ…

あっ、まじや。これ資格が必要な業務や!

行政書士のホームページを確認するとどうやら旅行業に関する何らかの資格が必要な業務のようです。しかも、これを持たずに無許可で仕事をすると「1年以下の懲役、または30万円以下の罰金」

ゴリッゴリに犯罪です。

とはいえ、なまじ月収が高いので各都道府県の役所に問い合わせして、海外の企業から業務を請け負うのであれば資格は必要ないんじゃないかと聞いてみました。

そして、その答えはこう。

「初めに、明確に回答させていただきますとあなたの業務は海外の企業のために働く、働かないに関わらず資格と届け出が必要な業務になります。したがって資格がない状態で従事した場合は違法労働となります。

また、その様な契約を求めてくる外国の企業に仮に損害賠償責任などを求められた場合この国の司法があなたを保護することはかなり難しいでしょう。その他給与未払の問題なども発生する可能性は十分ありますが、その場合は現地の法廷で争う必要があります。

この仕事はそれだけのリスクを秘めていると言えます。」

相手企業へ報告、謎の言い訳

「カクカク・シカジカ。というわけで私の方で今回の契約内容を確認しましたところ以上の点で資格のない者が業務をすることには違法性がある可能性を確認しました。御社はそもそもこの問題に関してご理解されていたのでしょうか。業務を始める前にまずこの点を確認させていただきたいです。」

これだけのリスクを聞いたので、もはやさっさと逃げ出したかったのですが、一応の確認でこちらの企業にメールで確認をしてみました。そしてそれに対する先方の返答はこう。

「まず私は日本担当のエリアマネージャーですが、日本在住ではないため現地の法律の専門家とは言えません。ご了承ください。

しかし、現状あなたの指摘した点は概ね問題ないかと考えています。なぜならアメリカにおける契約はフリーランス契約になっていますが、これを日本の役所に伝えなければ実態としては社員のように見えるからです。

そのうえで現在はそちらのスキームを利用してあなたの同僚になる予定の人間も日本で働いていますが1年以上問題は起こっていません。大丈夫ではないでしょうか?」

いやいやいや、明確にフリーランス契約はするけど、日本の役所にバレそうになったらこれは雇用契約ですよって嘘つけって言ってるじゃないですか!何の冗談なんです?これ。

この会社悪意があるなら普通に酷い企業ですが、もしや違法性を理解していないようにすら見えるのでより質が悪いです。この後もメールのやり取りをしたのですが常に最後言われるのは

「とにかく、法律の専門家ではないが、この契約に問題はないと思うよ」

との話だけ。とても信用できないのでこの話はお断りしました。

知らない、でも逮捕されるのはあなた

以上が私の体験談です。

元からもしかして詐欺なんだろうか、どこかでお金を振り込めと言われるんじゃないかと思いながら潜入していましたが、まさか違法労働をしろという落ちだとは思わず驚きました。

もちろんこんな会社で働くわけがありません。契約は無茶苦茶しかもリスクは会社が取らないと言ってるのに私が一緒に働けるわけじゃないじゃないですか。

しかし恐ろしいのはこの会社それなりに売上がある企業なんですよ。

ネットで分かる限り調べた結果、実態もあって30億円くらいの売上があることを確認しました。それぞれのメンバーのLinkdInの経歴だってきれいなものです。

しかも面接中は「今後日本に支社を設立するつもりだ。」とか「企業として上場も視野に入れている」とか話をしてました。

まぁ現状は日本国内では違法なスキームを駆使して売上を立てているんですがね。言ってることとやってることが乖離してて信用できません。

そんなわけで、むしゃくしゃしたので、Lineのアカウントをもらっていた同僚になる予定の人にメッセージを送ってみました。

「この仕事の内定を頂いたものの、カクカク・シカジカで恐らく違法労働になってると思うよ。しかもあなたは日本に住む外国人としてビザを維持する必要がある以上、逮捕されたら危険だよね?早く身を引いたほうが良さそうだよ」

するとこの人から返ってきた返事もこう。

「えっ?資格が必要なの?税理士に聞いたときは問題がないって言ってたのに。資格が必要なのはどっかでみたことがあるけど、私の日本語能力だと試験に合格することはほぼ無理だよ。」

もうダメじゃ、この人達。みんな企業も個人事業主として働いてる方も摘発されてないから違法に働いてるわ。どうなってんのよ。

皆さん、今回の経験で学んでほしいのは、恐ろしいことに企業も同僚も皆法律を知らないor知っていて違法に仕事をしている可能性があるってことです。

そしてそんな時契約内容が業務委託契約だと最悪捕まるのは

あ・な・た

貴方なんです。

この途方もないフリーランスの沼の実態わかってもらえましたでしょうか?あの会社とそこで働いてる人達は私が観光庁に通報したら捕まるのですが、それでビジネス継続できるのでしょうか。

もう、それ以上は知りたくありません。

海外暮らしをせずともリスクはどこにでもありますが、やはり外国人を騙す世界のリスクは現地人を騙すよりもずっと簡単に社会的ゲームオーバーが待っていると思った体験でした。

本当に皆さんも気をつけてもらえればと思います。

それでは。

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