「飲む日焼け止め」は本当に効くのか?
男女ともに美容意識が高まってきた昨今、巷にはさまざまな美容商品が氾濫している。
その中でも近年注目されている「飲む日焼け止め」の効果と注意点ついて、今回考察したい。
「飲む日焼け止め」と日焼けの関係
いわゆる「飲む日焼け止め」として販売されているサプリメントは多いが、そのほとんどは活性酸素によるダメージの抑制を謳っている。
ざっくりと日焼けとは、
①太陽光(主に紫外線)が皮膚に当たると
②急性皮膚反応(サンバーン)により赤くなる
③黒化反応(サンタン)が起き,肌が黒くなる
といった一連の流れで起きることをいう。
「飲む日焼け止め」は主に②サンバーンのメカニズムに注目したサプリメントである。
どのような作用なのか
サンバーンは「活性酸素」の酸化ストレスが大きく関わっている。活性酸素の種類には一酸化窒素(NO)とシクロオキシゲナーゼ(COX)などがあり、これらから産生される物質によってサンバーンが引き起こされることがわかっている。
つまり理論的にはNO合成酵素阻害剤およびCOX阻害剤で活性酸素による酸化ストレスを抑えることができればサンバーンを軽減できる。その考え方を用いたのが「飲む日焼け止め」である。
人体を酸化ストレスから防御する方法は2つ。
1.ビタミンC、Eやポリフェノールといった抗酸化物質を摂取する
2.体内の抗酸化物質の発生を助ける
しかし、1.のように抗酸化物質を大量に摂取しても有効な濃度を維持することは難しい。
そこで、2.のように皮膚での抗酸化物質作成を誘導できれば、効果を維持できるのではないか、と考えられた。
「飲む日焼け止め」は、2.の生体内の抗酸化酵素を誘導する仕組みを用いているため、酸化ストレスを長時間軽減できるのではないかと期待されている。
「飲む日焼け止め」の効果と注意点
しかし、アメリカ皮膚科学会は「日焼け止めクリームや日焼け止め対策衣類の代替品として使うべきでない」と見解を発信している。
また、日本皮膚科学会においても「現在のところ科学的十分な証明がない。サプリメント服用に加え、日常的に日焼け止めの使用をお勧めします」とホームページに示している。
様々な研究データを揃えている「飲む日焼け止め」サプリメントは多いが、個人的にはその効果は限定的であると考えている。
内服のみで人体の複雑な日焼けメカニズムすべてを網羅的に抑制することは困難であり、その科学的根拠も不足しているからだ。
まとめ
太陽光から皮膚を守るためには「飲む日焼け止め」だけでは不十分であるばかりか、「塗る日焼け止め」の方が日焼け対策として効果的であると言わざるを得ない。
とはいえ、海水浴など肌の露出面積が増えるような特殊な場合は「塗る日焼け止め」に加え、「飲む日焼け止め」を服用は有用だろう。
「飲む日焼け止め」のみの使用で、日焼け対策ができる時代はもう少し先だ。