東京まちづくりゼミ~政治で学ぶ「社会を変える」のサードドア~ 23区エリア・プレイベントレポート
今回は、3月からスタートする「東京まちづくりゼミ」のプレイベントの様子をレポートします。
【東京まちづくりゼミとは?】
リアルな政治課題をテーマに若者の主権者意識と課題解決能力を高める全10回のゼミ形式のワークショップです。最終的には、東京都知事候補者への政策提言を行います。
今回のプレイベントは次の3つのパートで構成されました。
①内藤賢司さんによるセミナー「くすぶる若者の破壊力を創造に変える」
②東京まちづくりゼミ模擬授業
③東京まちづくりゼミ説明会
それではイベントの内容をご紹介していきます。
⑴内藤賢司さんによるセミナー「くすぶる若者の破壊力を創造に変える」
第一部のセミナーに登壇してくださったのは、ゼロ高等学院代表の内藤賢司さんです。
今の学校教育が抱える課題
43万人って何の数字でしょう?わかる人います?これは不登校生徒の数です。
不登校の学生が増えている原因の一つが、学校が社会の変化についていけてないということ。学校と社会の違いはいくつかあって、大きな違いは次の3つです。
①学校で教えることには正解があるけど、社会には決まった正解がない。
②学校は一つの場所に同じような人が集まるけど、社会は出身地も年代もバラバラ。
③ルールを守るのか、ルールをつくるのかという違い。
一番大きな違いが3つ目で、学校はルールを守ることを求められるけど、社会ではルールをつくることを求められます。文科省の人もルールを守るのは得意だけどつくるのが苦手だから苦労してるんだと思います。
ゼロ高で学べること、ゼロ高の学び方
小中高大学と学んで就活をするわけですが、今の学校教育と社会の間には大きな溝があります。社会の中の学校というかたちでその溝を埋めようとしているのが「ゼロ高」で、社会で求められることや必要なことを学ぶのがゼロ高の目的です。
日本財団による不登校傾向にある子どもの実態調査でわかった、子どもたちが学校に求めていることは次のようなことでした。
「自分の好きなことを追求したり知りたいことを突き詰める場所が欲しい」
「自分の学習ペースに合った手助けが欲しい」
これはゼロ高でやっていることです。
多くの高校では大学進学のためにほとんどの時間を費やしますが、ゼロ高では「高校の卒業資格を得ること」、「自分に何ができるのかを知るため」に時間を使います。社会に出て必要なのは、「何が好きで何が嫌いか」「何が得意で何が苦手か」を把握することなんです。
いろんな場所に行っていろんな体験をすることを重要視しています。教科書で画一的なインプットをしても学習には繋がらないことが多くて、自分の体験と理解を通してアウトプットするのがいい学習方法だと私は思っています。
ゼロ高でも教科書を使った勉強もしますが、それよりも行動や理解の違いをいかして自分なりのルールや正解を決めていくという学習方法を実践しています。
テストの点数よりも大事なのは、自分が何をしたいのかを知ることです。正解を求められることはないけど、その代わりに自分なりの答えを見つけないといけないというつらさはあります。人との関わり方やお金の稼ぎ方はそれぞれ違うので、自分で試行錯誤することが大事なんです。
それと、これまでの学校と社会の分断された関係性を変えることを一つのミッションと考えています。学校→就活→社会ではなく、社会の中に学校があるということです。その境界線を引き直すことができればという想いをもっています。
大切なのは語れるストーリーがあること
偏差値や定期テストの得点は、「点」の評価でしかありません。これからは背景にある継続的なストーリーを語ることが大切になると思うんです。
堀江さんやキングコングの西野さんを見てると、ストーリーを語ることで人をひきつけたり信頼を得ていることがわかります。
これまでは「高学歴」っていうことだけでも評価されたけど、そういうわかりやすい評価があっても、決まったことしかできなくて例外に対応できなければ意味がない時代になっていますから。
センター試験のような誰かがつくったシステムの中で評価されるよりも、その人がどうやって生きてきたかの方が大事だと思うんです。大事なのはストーリーをどう描くかということ。
高校2年生でゼロ校に入ってきた子がやりたいことはないと話してたんですが、ふと「寿司屋になりたい」ともらしたことがあって。本当にやる気あるのかなと思って、「じゃあ試しに自分で1000貫握ってみたら?」と言ったんです。
50貫くらいでやめたとしてもやってみることが大事だから、とりあえず挑戦すればいいと思ってたら、本当に1ヶ月で1000貫握ったんです。本当にやる気あるんだって驚きました。
そのタイミングでちょうどお寿司屋さんを開く人を紹介してもらって、「こいつ1ヶ月で1000貫握ったんです」と話したら「ちゃんとサマになってる」と認められて彼は今そのお寿司屋さんで働いてます。
ゼロ高ではテストでいい点をとるよりも、語れるようなストーリーがあるかどうかを大事にしたいと思っています。
ゼロ高を始めたきっかけ
ずっとエンジニアをしていたんですが、ものをつくることに飽きてきて。ちょうどその頃に子供が3歳くらいになって、もっと社会的に意義があることをしたいと思い始めたんです。
私がゼロ高を通じて一番変えたいのは、自分で命を絶つ子どもがいるという状況です。崇高な教育理論とかカリキュラムなんてどうでもいいと思っていて、自分で命を絶つ子どもがいない状況が一番ですから。
ゼロ高に入ってきた当時は「ダルい」「死にたい」とか言ってた卒業生が遊びに来て、激しく自己主張してるんですよね。彼らは少なくとも死のうとはしてないし、生きるために争おうとしている。彼らを見てると、そのままでいてほしいなと思って嬉しくなります。
これまでゼロ高をやってきて思ったのは、大人が邪魔をしなければ若い人は勝手に成長するし助け合うということです。放っておいても勝手に学ぶしやり遂げるから、大人は邪魔しないことが大事だと思っています。
▼「東京まちづくりゼミ」多摩エリアプレイベント開催報告はこちら(画像クリックでもとびます)
⑵東京まちづくりゼミ模擬授業
第二部の模擬授業をしてくださったのは、元教員で現在はNPO法人「Very50」の職員である中山諒一郎さんです。
模擬授業では、参加者のみなさんに5つのグループに分かれていただき、課題解決に取り組んでもらいました。
■お題1 : 社会課題の解決策を考えてみよう
問題解決の一般的なフローは次のようになります。
【問題解決のフロー】
課題の発見
↓
問題分析をして真因を特定する
↓
解決策を考える
↓
解決策を実行する
それではフローに沿って問題解決にトライしてみましょう。
ステップ1:課題の発見
思いつく社会課題を付箋に書き出してみてください。「こうならいいな」という理想と現実にギャップがあれば、それが課題です。
ステップ2〜3:真因を特定して解決策を考える
書き出したらどれか一つ選んで解決策を考えてみましょう。解決策だけでなく、絵や文章で思考プロセスを残しながら書いてみてください。
問題を解決するには、真因を特定することが重要です。原因を特定できたと思っても、それが真の原因でなければ、いくら頑張っても問題は解決できません。
真因を特定するには、問題分析での網羅性を高めることがポイントです。たくさん原因を洗い出して、その中から本当の原因を見つける必要があるからです。
真因を特定するにはまず問題を切り分け、切り分けた問題をさらに掘り下げることが重要です。この時に役立つのが、「イシューツリー」というフレームワークです。
■お題2 : 「数学の点数が上がらないのはなぜ?」をwhy分析してみよう
「数学の点数が上がらないのはなぜか?」、この問題を「イシューツリー」を使ってwhy分析してみましょう。
それでは「イシューツリー」使ってwhy分析を繰り返し、問題の解決策を考えてみてください。why分析は最低3回、できれば5回繰り返してみてください。
■お題3 : 自分自身の課題解決策を考えてみよう
最後は自分の課題の解決策を考えてみましょう。今の自分の課題だと感じていることを一つ選んで、問題分析を繰り返して解決策をリストアップするところまでやってみてください。
まずは「しなきゃいけない」という思い込みを捨てることが大切。自由にやりたいことを考えてみてください。
隣の人と思考プロセスやアイデアをシェアして、フィードバックし合ってみてください。
問題解決能力を高めて人生をより良いものにしよう
人生は問題解決の連続です。好きな人を口説いたり、家を買ったり。問題解決能力を高めると、社会がより良い場所になり、みなさんの人生がより豊かになり、不幸を少なくすることもできます。
いろいろな課題を目の当たりにすると、不安になることもあるかもしれません。でも時間がかかったとしても、どんな課題にも必ず解決策はあるはずです。
私が教師をやめてからも教育に携わっているのは、若者が社会を変えられると信じているからです。「東京まちづくりゼミ」で問題解決能力を高めて、一緒に社会を良くしたり、自分の人生をよりよいものにしていってほしいと思っています。
⑶東京まちづくりゼミとは?
第三部で話してくれたのは、東京都議会議員でTokyo Cross Pointの代表を務める奥澤さん。 「東京まちづくりゼミ」で学べることや、どんな目的があるのかなどについて、その想いを聞かせてくださいました。
イノベーター理論
イノベーター理論って聞いたことありますか?イノベーター理論というのは、100人の人間がいたら、その中でイノベーションを起こせる人は2.5%程度の2.5人くらいだという理論です。
イノベーションを起こせる人は変人だと思われるような人も多くて、社会の批判を受けながら行動していく人たちです。そしてアーリーアダプターというイノベーターに追随する人が15%くらいいると言われています。
アーリーアダプターは、さらに後ろにいる人を引っ張っていく役割を担っていて、新しい方向に進んで行ける人たちです。
今日いろんな人の話を聞いて、批判をされながら戦うのはちょっとつらいなと思うなら、とりあえず変人についていけばいい。そういう人が少しずつ増えていって、社会が徐々に変わっていくものだから。
「東京まちづくりゼミ」でやりたいこと
私は、今までの政治家としての活動だけで社会を良くできるとは思っていません。今までのルールの延長線上に幸せな社会が実現できていないから、今までとは違う答えを見つけようとしてます。
政治は社会課題のオンパレードなんです。これからは政治家が民間の人や若い人と協力して、新しい答えをつくっていかなきゃいけない。
「東京まちづくりゼミ」では、「課題を発見して調査研究して解決策を提案していく」というのをやっていきます。これを政治を使ってやってみませんか?という提案です。
そのプロセスはきっと、課題解決を高めたり、政治に興味を持つきっかけになったり、ネットワークを広げることにもつながります。最終的には6月にある東京都知事選挙の候補者に政策提言することを考えてます。
ゼミは全10回で、チームビルディングからスタート。課題を見つけて調査し原因分析して解決策をプレゼンして、政策提言するのが目標です。
これから必要とされる学び
これからは「アクティブラーニング」が必要だと言われています。「主体的・対話的で深い学び」や「学ぶことに興味や関心を持ち、自己のキャリア形成の方向性と関連づけながら見通しを持って粘り強く取組む」ことが重要だと。
でもこうした力を今の学校教育だけで身につけるのは難しいです。ゼロ高ではこれをやろうとしてる。だから今日は内藤さんに来てもらったんです。
日本の若者の多くが未来に希望を持てなかったり、将来を悲観してしまっていることがとても悲しいです。でも社会は変えられるし、みんなはもっと幸せになれるから。
大人と若者が、力を合わせて一緒に社会を変えていく。みなさんには、ぜひその主役になっていただきたいと思ってます。
・・・
3/1に「東京まちづくりゼミ #1 仲間を集めよう〜チームビルディングの極意〜」のイベントが開催予定でしたが、延期となりました。今後のスケジュールや詳細はこちらからご確認頂けます。