「一人10万円もらえる」と聞いたけれど、私ももらえるの?(DVや児童虐待で避難している人へ)
1 「一人10万円」の対象はだれ?
こんにちは。弁護士の熊澤美帆です。今日は、「一人10万円もらえる」という特別定額給付金についてお話しします。
総務省が、特別定額給付金について特別サイトを作っていて色々な情報がのっています。
総務省 特別定額給付金ポータルサイトはこちら
大雑把にいえば、日本に住んでいる人は全員もらえます。大人も子どもも、外国人(不法滞在者をのぞく)も、生活保護受給者も、もらえます。「令和2年4月27日時点で、住民票がある」ということがポイントです。
ただ、「申請制」です。オンライン(マイナンバーカードがある人限定)、もしくは、郵送で申請しないともらえません。申請期限は、郵送方式の申請受付開始日から3か月以内です。
申請・受領は「世帯ごと」に行うことになっています。「世帯ごと」というのは、「住民票が一緒の人ごと」ということです。
各市町村ごとに、世帯主宛てに郵送で申請書類が届きます(原則として、令和2年4月27日時点で住民票がある自治体から届きます。)。
つまり、「一人10万円もらえる」けれども、申請や受取は「世帯主」が行うことになります。
自分の住民票がどこにあるのか、世帯主は誰なのか、予め確認しておきましょう。そして、申請をしなければもらえないということを忘れないでください。
2 住民票とは違う場所に住んでいる場合には、10万円はもらえないの?
DV被害で住民票を残したまま別の場所に住んでいる人、児童虐待で住民票を親元に残したまま別の場所に住んでいる人など、いろんな事情から「住民票とは違う場所に住んでいる」人もいます。
この方たちは、何もしないままでいると、「世帯主」である配偶者や親のところに申請書類や10万円が送付・交付されてしまいます。
「親の所にいってしまうけど仕方ないよね・・・」
などとあきらめないでください。今住んでいるところで、受け取れるかもしれません。
ここについては、当初なかなか情報がなかったのですが、「今住んでいるところで受け取れないと困る」「親の所に送られたら、親にとられてしまう」という声がたくさんあがり、総務省から情報が出ています。
事前申出期間後の親族からの暴力等を理由とした避難事例の取扱いについて(令和2年5月1日付事務連絡)
簡単にいうと、今住んでいる自治体で特別定額給付金を受け取るためには、「暴力などを理由に世帯主とは一緒に住んでいませんよ。」という申出を行う必要があります。
婦人相談所等からの「確認書」や、配偶者暴力防止法による保護命令があれば、この「申出」をすることができます。申出は、随時可能とされていて、既に世帯主に支給されてしまっていても問題ありません(世帯主が返還を求められることになります)。
「婦人相談所にも相談していない」「保護命令も出ていない」という人もあきらめないでください。
まず、今から住民票を移して支援措置をかける(※DVの加害者に住民票を見せないでくださいという措置。)という方法もあります。これについては、今お住まいの自治体で相談してください。市民課などが担当のことが多いです。「支援措置がかかっていない期間を作らない」「転出の際の、転入先の記載に気を付ける」など注意点もあるので、住民票を移す手続をする際には、市役所等で相談をしてからにしましょう。
さらに、「住民票はそのままにしておく必要がある」という人もいると思います。ただ、「今は児童相談所もかかわっていない」「警察にも相談していない」という場合にどうしたらいいかについてはなかなか情報がありません。
実際、未成年で一人暮らしをしているケースにつき、私が行った対応をご紹介します。
最初、住民票のある自治体に電話をかけたり、総務省に電話をしたりしました。自治体には、「まだ自治体には情報が下りてきていない」と言われたり、総務省には電話がつながらなかったり…総務省のページをみても分からないという状況が続いていました。
どうしたものかと思っていましたが、「これは、今住んでいる自治体とかけあう方が早そう」と思い、
(今住んでいる自治体の名前)+(特別定額給付金)
とネットで検索をしました。そうすると、今住んでいる自治体の「特別定額給付金」に関するページが出てきました。そこに書かれている担当部署に電話をかけました。
話が早い!!
すぐに対応してもらえました。
「児童虐待で親元を離れていること」、「住民票は親元にあること」、「今は婦人相談や児相は関与していないこと」を伝えました。
そうすると、「本人に来てもらって今の状況・事情の説明をしてほしい」、「今の家に『住んでいる』ということを示せる資料」と「身分証」をもってきてほしいとの回答でした。
「今の家に『住んでいる』ということを示せる資料」は、賃貸借契約書とか、ガス料金の明細、本人宛(今住んでいる家宛て)の封筒などでいいとのことでした。
後は、本人が資料を持って役所に行けば、本人が今住んでいるところで申請、受領することができます。
役所の方も「本人が書く書類はそんなに難しくないので、書類だけ持ってきてもらえればお手伝いします。」と言ってくれました。
今回はとてもスムーズに自治体が対応してくれましたが、自治体や個別の事情に応じても変わってくると思います。今回のケースはあくまでも一例ですので、同じ対応になるとは限りませんが、参考になればと思います。
まずは、(今住んでいる自治体の名前)+(特別定額給付金) とネットで検索して、担当部署につながることです。一度電話したら、担当者の名前を聞くのを忘れないようにしてください。人がかわると一から事情を説明しなければいけなくなってしまうので気を付けましょう。
3 申請を悩んでいる方へ
DVや虐待で避難している方のなかには、
「親(配偶者)がもらえばいいよ。」と思っている人もいるかもしれません。「親(配偶者)も生活大変そうだし」とか、「親(配偶者)に迷惑かけてるし」と思っていませんか。
私は、「気にせず、あなたが受け取るべきだ」と思っています。
あなたはちっとも悪くありません。
親(配偶者)も一人10万円もらえるんです。あなたがもらえる10万円は、親(配偶者)のものではありません。
あなたもこのコロナ禍で大変な思いをしていると思います。あなた自身のために使っていいんですよ。
(本稿は2020年5月19日時点の情報に基づく記事です。)
文責 弁護士 熊澤 美帆