新型コロナウイルス対策に"災害対応"の知恵を
みなさん、こんにちは。
弁護士の大城聡です。
東京千代田法律事務所のnoteをご覧いただき、ありがとうございます。
日々刻々と状況が変わる中で、必要な情報を得ることの難しさとひとつひとつ判断することの重さを感じています。そのような中で、何か手掛かりになるようなこと、きっかけになるようなこと、少しでもお役に立つことをお伝えできればと思っています。
初のnote投稿です。どうぞよろしくお願いします。
1 ”雇用調整助成金”だけでは…
感染拡大防止のための自粛は、経済に大きな打撃を与えています。
この深刻な状況で、雇用を守ることができるかが大きな課題となっています。雇用を守るための支援制度としては“雇用調整助成金”があります。
雇用調整助成金は、事業主が雇用維持のために従業員に休業手当を支払った場合に、その一部を助成する制度です。政府は、特例措置として、対象者の拡大、被保険者期間の要件の撤廃、助成率の引上げを行っています。また、政府は、提出書類の削減など手続の簡素化にも取り組んでいます。詳しくは厚生労働省のホームページをご覧ください。
しかし、2月中旬から4月24日までの雇用調整助成金の申請件数は2541件、支給件数は282件にとどまっており、危機的な状況の中で十分に機能しているとは到底言えない状況です(2020年5月3日付日本経済新聞)。
また、雇用調整助成金の上限が労働者1人当たり1日8330円という問題もあります。政府は、上限額の引き上げを検討する方向としていますが、引き上げる金額も含めて課題が残っています(2020年5月3日付朝日新聞)。
2 ”災害対応”の知恵、失業給付の特例措置
このような状況の中、“災害対応”の知恵を生かして、事業の継続による雇用の場の維持や雇用関係を維持する緊急措置をとることを日本弁護士連合会が会長声明で提案しています。
新型コロナウイルス感染症による緊急措置として、労働者が失業したものとみなして失業給付を受給できる措置を講じるとともに、雇用調整助成金の迅速な支給拡大を求める会長声明(日本弁護士連合会)
新型コロナウイルス対策では、実は自衛隊が“災害派遣”されています(新型コロナウイルス感染拡大を 受けた防衛省・自衛隊の取組)。
自衛隊の”災害派遣”だけではなく、この危機を乗り切るために“災害対応”の知恵を生かすのはとても大切なことです。
激甚災害時に適用される「激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律」では、雇用保険法による求職者給付の支給に関する特例(同法25条)が定められています。これは事業所が災害を直接の原因として休止・廃止したため休業を余儀なくされ、労働者に休業手当を含む賃金を支払うことができない場合に、実際に離職していなくても、あるいは再雇用を約した一時的な離職の場合であっても、労働者が失業したものとみなして失業給付を受給できる制度です。
日本弁護士連合会は、政府が今回の緊急事態宣言に伴う事業の休止等にも同様の措置をとり、感染症収束までの間、実際に離職していなくても労働者が失業給付を受給できる特例措置を講じ、事業再開を目指す事業主による雇用の維持を図るべきだと提案しています。
提案:”災害対応”の知恵を生かして失業給付の特例措置を行う
3 早急に実現すべき現実的な提案
もしこの失業給付の特例措置が行われれば、雇用調整助成金を受けられない場合でも労働者が失業したものとみなして救済されることになります。雇用調整助成金は事業主が手続を行いますが、失業給付の特例にすれば労働者が自分で手続できるというメリットもあります。
雇用調整助成金の簡素化や上限引き上げなどを進めることは大切です。それに加えて、雇用調整助成金ではカバーできない人たちを救済するために、“災害対応”の知恵を生かした失業給付の特例措置が提案されているのです。
これは早急に実現すべき現実的な提案だと思います。
いのちと暮らしを守るために、政治のリーダーシップに期待したいです。
以上
文責 弁護士 大城聡
(本稿は2020年5月8日時点の情報に基づく記事です。)