ブラオケ的クラシック名曲名盤紹介 〜オケ好きの集い〜 #10『21世紀のチューバ協奏曲』
協奏曲と言えば、ピアノ協奏曲やヴァイオリン協奏曲などをイメージする人が多いと思われるが、当然のことながら、ある程度認知度が高い楽器であれば、その楽器専用の協奏曲を作曲する作曲家も現れてくる。例えば、アホが作曲したコントラファゴット協奏曲、パーシケッティのイングリッシュホルン協奏曲、エワイゼンのテナーサクソフォン協奏曲やバストロンボーン協奏曲、ラヴィ・シャンカールのシタール協奏曲など、多岐に渡る。今回ご紹介するチューバ協奏曲も、ヴォーン・ウィリアムズをはじめ、多くの作曲家が作品を残している。その中で、今回は「21世紀のチューバ協奏曲」と題されたCDをご紹介したい。
本CDは、その名の通り、21世紀に作曲されたチューバ協奏曲をピックアップしたCDであり、かなりマニアックな音源となっている。収録されている作品は以下の通り。
1. フレドリク・ホーグベリ :ロッキー・アイランド・ボート・ベイ
2. ヤン・サンドストレム :レモン・ハウス
3. カレヴィ・アホ :チューバ協奏曲
どの作品も、指揮者はマッツ・ロンディン、オーケストラはノールショピング交響楽団が演奏しており、注目すべき点は、ソリストがオイスタイン・ボーズヴィークであることだ。オイスタイン・ボーズヴィークは、ノルウェーのチュービストであり、数少ないフルタイム・ソリストの1人である。エンターテイナー性溢れるソリストであり、彼の有名な録音として、チャルダッシュの演奏がYouTubeにアップされているので、是非聴いて頂きたい。
どんな指の力をしているんだ?と思うが、そもそも論として、全ての点において意味が分からない。今回ご紹介する名盤は、オイスタイン・ボーズヴィークのために書かれた協奏曲集でもあり、想像通りの意味不明な超絶技巧の連発で、チューバの無限の可能性を感じさせてくれる。今回は、その中でもホーグベリ作曲の「ロッキー・アイランド・ボート・ベイ」について、一言触れたい。
ロッキー・アイランド・ボート・ベイ
作曲したホーグベリは、1971年に生まれたスウェーデンの作曲家であり、チューバ協奏曲以外にも、ソプラノサックス協奏曲など、マニアックな作品を創出している興味深い作曲家の1人である。ロッキー・アイランド・ボート・ベイは、2006年に作曲された協奏曲であり、使用音域が極端に広いだけでなく、重音やボイスパーカッション的なサウンドなど、現代奏法と言われる奏法を盛りだくさん活用している。楽章構成は以下の通り。
第1楽章 :Molto vigoroso - Intermezzo espressivo
第2楽章 :Love song - menuette – Grandioso
第3楽章 :Chanson Populaire - Percussion expo - Cadenza - Finale feroce
第1楽章は総じてエネルギッシュな音楽が繰り広げられ、断片的なフレーズをソリストにより幾度となく提示されたのち、鍵盤打楽器と金管により作られる神秘的な雰囲気をバックに、ソリストの重音により締められる。続く第2楽章は、印象深い旋律がソリストにより提示され、少しずつ変化を伴いながら弦へと引き継がれる。やがて、感傷的な盛り上がりを示すが、突然の静まりのあと、チューバによる悲しげな旋律が再起される。最後の第3楽章は、チューバの超絶技巧全快で、シロフォンとのアンサンブルも必聴だ。そもそも全体的に伴奏しているオーケストラのレベルが高い。なお、オーケストラ・スコアは下記URLから閲覧することが可能なので、この超絶技巧さを体感するためにも、是非スコアを読みながら音源を聴いて頂きたい。
(文:おーじ)