出来上がった時のお客さまの笑顔が見たいだけ/メカニックステーション 西澤
私たちトーキョーバイクは、街を楽しむための自転車をつくっている会社です。(詳しくは自己紹介をごらんください)
この連載「トーキョーバイクのひと」では、私たちの自転車が皆様のお手元に届くまで関わっている全スタッフを一人ずつご紹介します。
第12回目はメカニックステーションの西澤さん。自転車業界では誰もが知るスポーツバイクメーカーから転職した理由や、お客さまを思い浮かべながら組立をする毎日について語ってくれました。
メカニックステーション 西澤さん
海外自転車メーカーにて丸の内や表参道等の直営店店長やスーパーバイザー、商品企画等を歴任した後、トーキョーバイクに入社。メカニックステーションにて、自転車メカニックとして勤務。
自転車の良さを皆に知ってもらえる立ち位置の会社
ーー前職も自転車メーカーで働かれていますよね。スポーツバイク業界では誰もが知っている企業を経て、トーキョーバイクを選んだのはどうしてですか?
自転車業界をピラミッド構造で説明すると、三層に分かれていると思います。
一番下の裾野が広い層が、生活必需品として自転車を使用するママチャリの層です。トーキョーバイクは中階層だと思います。自転車のデザインに興味がでてきた方、又は乗ることを趣味にしようと考えている方の層です。
上の層はスポーツとして自転車が好きで色々と詳しい方が多いんですけど、自分は自転車の良さや面白さを皆に知ってもらえるきっかけの位置にいたいと思って。そうするにはトーキョーバイクは自分の希望が一致する会社だと思いました。
お客さまがトーキョーバイクをきっかけに自転車のことを知って、他社のスペックの高い自転車に移っていくのは全然いいんです。自転車を知らない方が一番入りやすい位置にあるブランドなので、自転車業界の中ではとても重要な立ち位置にいると思います。他にない会社なので長く続けていかなければならないと思っています。
組立は大変になっても、オプションが多い方が嬉しい
ーーメカニックステーションは毎日ひたすら組立をする部門ですよね。ルーティンに飽きたり、流れ作業になってしまわないんですか?
トーキョーバイクの自転車は工場で生産された後、埼玉県浦和市にある倉庫で保管されます。その倉庫の一角にあるのがメカニックステーション。お客さまが直営店やオンラインストアで注文した自転車の大半が、この場所で組み立てられます。
同じ作業の繰り返しではあるんですが、一台ずつオーダーの内容が違うので、そうはならないですね。
トーキョーバイクの自転車はそのままの状態で購入することもできますが、ハンドルやサドルなどの部品を変更することができます。ライトやベルも元々はついていないので、ご自身で好きなものを選ぶことができます。それらのオプションは、人によって違うんです。
ただ正直なところ、オプション無しのオーダー表を確認するとちょっと残念には思っちゃいます。接客したスタッフがもうちょっとアイデアを加えて提案をできていれば、お客さまが自分のスタイルにあったオプションを選べて、もっと納得した形になったのではと思っちゃうんですよね。もちろん、何もオプションがない状態がお客さまの希望の形ということもあるとは思うんですが。
色々なオプションがオーダーされている自転車は、お客さまのこだわりとスタッフの提案がうまくはまったんだなと思って嬉しくなりますね。
ーーオプションがあればあるほど、組み立てるのは大変ですよね。メカニックの立場からすると、オプションは少ない方がいいのかと思っていました
もちろんオプションがない方が手順は少ないので、時間的には早く終わります。でもそれでよしとするのは、自分の作業が楽で早く終わるからいいという自己満足ですよね。
注文されたお客さまがこのハンドルを選ばれたんだな、このライトを選ばれたんだな、良いセンスだな、といった想像をできるのが嬉しくて楽しいです。なので大変だとは思いません。
全てはお客さまに満足してもらうために
ーー仕事で一番気を使うのはどこですか?
お客さまが完成した自転車を見た時に「あれこんなのだったっけ?」と思わせないように、きちっと仕事をすることですかね。出来上がった時のお客さまの笑顔を見たいだけなんです。その笑顔が長く乗ってもらえる理由になるかなと思っちゃうんですよね。
だから組立の中で好きな工程は、組み立て作業後の完成時です。お客さまのオーダー表通りに組み上げて、オプションも全部つけて出来上がった時が一番いい。お客さまの満足する形、それを自分の目で確認できるので。
ーー完成した自転車は各直営店に配送されてお客さまに納車されるか、ご自宅まで配送されるので、実際には西澤さん自身が納車することはほとんどないですよね。それでもお客さまの笑顔をいつも考えながら、作業をしているんですね
そうですね。だから直営店の繁忙期などにヘルプで接客に入るのもすごく好きです。やっぱり直接お話したいというのもありますから。
自転車によりいい状態で乗ってもらいたいので、納車の時にフィッティングをしながら「椅子の高さや前後位置で、乗り心地や疲れ方が変わるんですよ」「坂道をいち早くかけあがるためにグイグイ漕ぐこともありますけど、路面状況に合わせて上手にギアを選択すると、足が太くならないですよ」とお伝えしたりしますね。
モノを買う時にいい気分で買ってもらえた方が、その気分は長く続きますよね。フィッテイングしてもらえたり、漕ぎ方も教えてもらえて良かったなとお客さまに思ってもらいたいんですよね。
ーーこれからやってみたいことはありますか?
お客さまに満足してもらう、商品の原点には立ってみたいですね。商品企画のようなことですね。
トーキョーバイクはオリジナルのオプションパーツが多くないので、自分達で作ってブランド名が刻印されていて、それをスタッフが自信を持って勧められたら、お客さまも安心して購入できますよね。
それでさらに我儘なんですが、自分で企画したものを直営店で自分で売りたいです。反応は人からの情報じゃなくて、自分で見てリアルに肌で感じたいんですよね。
前職でも商品開発をやっていたことがあるんですが、その時の顧客層はほぼ男性で女性は1−2割でした。うちの場合は女性の割合がもっと多いから、そういう目線でオプションを選んだり作ったりするのも必要だと思います。
好きなものと好きな時間
ーートーキョーバイクのラインアップの中で、好きなモデルはどれですか?
TOKYOBIKE 26ですね。カスタムの幅が広くて、いじれる要素があるので。やっぱりメカニックなので、すぐいじりたいってなっちゃうんですよね。
ーーお気に入りのオプションパーツはありますか?
お客さまのライフスタイルや乗り方の希望によりますね。その人に安心感を持って乗ってもらいたいと思っているので。
ーーここからは少しプライベートな質問です。暮らしの中で好きな時間はどんなことをしている時ですか?
難しい質問ですね・・・。休みの日の午前中ですかね。何も考えてない時間。テレビはついているんだけど、集中してみているわけでもなくその前でぼーっとしている時間が好きですね。
ーー自転車で行く場所で好きな場所や道、時間などはありますか?
多摩川を走るのが好きです。自宅から羽田方面に行くのか、逆に奥多摩方面に行くのかは気分によって変わります。信号がなくて、景色が気持ち良くて、空が大きいから。そういう意味では皇居の前も結構好きですね。
時間帯は悲しい気分の時は夕方、楽しい時は晴れている昼間に走ります
(取材・文)小西
(写真)橋原