最初の頃は怖かった接客。意外と好きだったことに気づくまで/中目黒店 中谷
私たちトーキョーバイクは、街を楽しむための自転車をつくっている会社です。(詳しくは自己紹介をごらんください)
この連載「トーキョーバイクのひと」では、私たちの自転車が皆様のお手元に届くまで関わっている全スタッフを一人ずつご紹介します。
第9回目は中目黒店の中谷さん。最初はお客様に話しかけるのも怖かったことや発注ミスなど、長く働く中で起きた事を率直に語ってくれました。
中目黒店 中谷 晋(なかや しん)
大学2年生の時にアルバイトとしてトーキョーバイクに入社。セールススタッフとして中目黒店で働く。大学では経済学部に在籍、来春の卒業に向けて現在はモラトリアム満喫中。
柔軟な職場と多趣味な同僚達
ーー中谷さんは中目黒店で初めて採用されたアルバイトでしたね
ここで働きだして3年目に突入しました。2021年の春の大学卒業と同時にアルバイトも卒業予定です。最近は友達や知り合いがよく買ってくれるんです。僕がトーキョーバイクで働いているのを知ってて、「自転車探してるんだけど、そこ行くわ」みたいな。それはすごく嬉しいし楽しいですね。
ーー入社のきっかけを教えてください
仲の良い大学の先輩がトーキョーバイクの自転車に乗っていたんです。アルバイトを探していた時に、たまたま採用募集を見かけて「あっ!」て。でも当時は乗ったこともなかったです。
それまで自転車に乗るのは近所だけで、区をまたいで乗ることはなかったので、今はだいぶ変わりましたね。大学生活の後半になって行動範囲も広がり、今まで電車で行く場所だったところへ自転車で行くこともあります。
ーー働く中で感じたお店の印象は?
かなり柔軟ですね。
アルバイトでも、いい提案はバンバン通るしやらせてくれる。
お店もどんどん変わっていくんです。僕の勤務は週末なんですが、出勤する度に毎週オペレーションの一部が変わっている。それに対応していくのは難しいところでもあるんですけど、でもそうやって柔軟に変えていける体制があるんだなって思いました。
ーー頻繁に変更があると、そこに対応するのは大変そうですが・・・。
そういう意味では「これってどうしたらいいですか?」という質問に対して、嫌な顔せず誰でも答えてくれるのはありがたかったです。聞けば大丈夫っていう、頼りきっている感じはちょっとありますね。
ーー共に働くスタッフはどんな人達でしたか?
何か趣味があったり、他の活動をしているスタッフが多いですね。だからスタッフ間でお互いの好きなこと、例えば「ここに行ったら美味しかったよ」と外食の話や、「今かけるならこれでしょ」と店内で流している音楽の話をしたりします。
先日すごく素敵だなと感じたことがあったんです。谷中店の店長とご飯に行ったんですが、結婚指輪をされていたんですね。聞いてみると、吉祥寺店のスタッフが作った指輪だったんです。そのスタッフは大学で彫金を学んで、仕事の傍らアトリエで自分の制作もしている。そういう同僚に結婚指輪を作ってもらうなんて、トーキョーバイクじゃないとできないよなと思いました。
そういうことがすごく楽しいです。僕がそういう人達を好きなだけかもしれないけど。
発注ミスで違う商品が届く
ーー仕事で失敗した事はありますか?
あります、あります。
自転車のオプションパーツを発注する時に品番を間違えて、全然違う商品を頼んじゃったり。ある日トーキョーバイクの自転車には取り付けられないカゴがたくさん届きましたね・・・。
鍵でも在庫を補充するための注文で、異なる品番を記入するミスをしたことがあります。今まで取り扱ったことのない鍵が届いて困ったんですが、返品する前に試してみたら「意外と使い勝手いいじゃん!」となって、お店で展開するようになったこともありました。
ーー怪我の功名ですね。ミスをしてしまった時は、どうするんですか?
店長に「すいません、実は・・・・」と謝ります。そうすると「どこで間違ったの?」とプロセスを確認されつつ、「あとはやっておくから大丈夫だよ」ということが多かったですね。
意外に人と話すことが好きな自分に気づいた
ーーここでアルバイトをするまで接客業の経験はありませんでしたよね
最初はお客さまに声をかけるのも怖いくらいでした。今は何か好きなものが一緒だったらいいな、くらいのテンションで話しかけることができるようになった気がします。
ーー確かに最初のうちは自信がなさそうでした。でも今はお客さまとの会話を楽しみながら接客しているように見えます。変化の理由は思い当たりますか?
友達が飲食店で働き始めたのをきっかけにその店へ行くようになったり、自分が外で飲む機会がすごく増えて。そういうちょっと話せる馴染みの店が増えたらいいなって考えながら、僕自身が街に出るようになったんです。
その延長線上にあるかもしれないですね。
逆に自分がそういう飲食店のスタッフのような心持ちで、ご来店されるお客さまに対して話しかけられるようになったのかも。「普段どの辺で飲みますか?」とは聞かないけど、「普段どの辺に行きますか?」という場所の話はしますね。
例えばお客さまが「代々木上原のあたりには行きますね」と言ったら、「あの辺は公園も近くていいですよね。僕もこの前近くのどこどこへ行って」というような話ができるかなと思って。
ーーそうやって会話の糸口を探すんですね。
自転車そのものにそこまで詳しいわけじゃないし、暮らしや街の話題の方が楽しいと感じるので、自転車自体についてよりもそういう話をしますね。
最初は怖かったけど、やってみると意外と接客が好きだったんだなって。今振り返ると、掛け持ちしていた塾のアルバイトでも他の人が事務作業をしている中、僕は基本的に高校生と喋ってばかりでした。実はそういうのが好きだったんだと気付きましたね。
好きなものと好きな時間
ーートーキョーバイクのラインアップの中で、好きなモデルはどれですか?
TOKYOBIKE CS Limitedですね。僕も乗ってます。
まったく自転車を知らない中で、普通にぱっと見て、これなら乗ってもいいかなって思えるデザインとちょっとメタリックな塗装。ちょっとクロスバイクいいかもと思っている同年代の大学生に一番勧めやすいイメージです。
ーーこれなら乗ってもいいかなと思えるのはどの辺ですか?
クロスバイクに興味を持っている人は、ちょっと走りたい気持ちもあると思うからタイヤが少し細めでスピードの出る乗り味がいい。
僕よりちょっと上の世代はもう少し凝った、例えば「麻布のピスト専門店で買ったんだよね」というような自転車に乗っている。そういう先輩方とスペックの張り合いはしないけど、高級時計じゃなくApple Watchをつけて別のステージにいくような感じ。そういう意味でのちょうどよさで、同世代の友達にも勧めやすいですね。
ーーお気に入りのオプションパーツはありますか?
その・・・・発注ミスをした鍵です。最初は「うわっ!間違えた鍵が、たくさんきた。」って悩みました。だけど店長に「中谷君、頑張って売ってね」と言われて、お客様に勧めていたらだんだんこの鍵いいなって思ったんですよ。
最初は中途半端な長さだなって思ったんですけど、伸ばしてみると意外とあるんですよね。長すぎて絡まったり、持て余すこともない。太さはあるから、安全面での安心感はありつつ、軽い。
お客さまに「ちょっと持ってみてください。軽いですよね。もし自転車にカゴをつけないなら、鍵は軽いほうがいいと思いますよ。」、そんな風にお客さまに説明しているうちにこの鍵いいなってなりました。
ーーここからは少しプライベートな質問です。暮らしの中で好きな時間はどんなことをしている時ですか?
大学の友達で誰かの誕生日だったりすると、10人くらいの友達と渋谷にある麗郷という中華料理屋によく行くんです。
そこでテーブルを囲んで、瓶ビールと紹興酒の瓶と、麻婆豆腐を頼むんです。10人前の麻婆豆腐が直径30cm超の皿にのってドーンってでてくる。
そうやってみんなでテーブルを囲んで、わいわいするのが楽しいですね。最近はできていないんですけど。
できるだけ外にいたいので、来年働きだしてからの目標も毎日仕事終わりに飲みに行くことです。それがあれば、仕事も早く終わらそうって頑張れそうなので。
ーー自転車で行くのが好きな場所や道、時間などはありますか?
初台から新宿に向かって先輩と一緒に走ったことがあったんです。夜の甲州街道をがーって行くだけなんですけど、新宿駅と小田急の間のニューマンの近くを通った時に、東京!って感じました。
その時僕はトーキョーバイクで、先輩は有名ブランドのロードバイクに乗っていて。僕はトーキョーバイクを背負ってる以上、これだけスピードも出るんだぞ!って割と頑張って漕いだんですよ。そしたら先輩も「え、トーキョーバイクってそんなに早いの!?」と内心思いながら、必死に漕いでいたみたいで。蓋を開けたら、二人とも背伸びしてただけだったんですけどね。
東京で生まれ育ったけど、初台ー新宿は電車で行く場所だと思ってたんですよ。自転車に乗ったら、こんな簡単に行けるんだなって思いましたね。
(取材・文)小西
(写真)橋原