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ただお金を稼ぐだけじゃない、誰かのために何かをする時間/中目黒店 名取

私たちトーキョーバイクは、街を楽しむための自転車をつくっている会社です。(詳しくは自己紹介をごらんください)
この連載「トーキョーバイクのひと」では、私たちの自転車が皆様のお手元に届くまで関わっている全スタッフを一人ずつご紹介します。

第8回目は中目黒店の名取さん。入社のきっかけとなった旅先での自転車との出会いや、この春アルバイトができなかった期間に気付いたことを話してくれました。

中目黒店  名取 美樹(なとり みき)
大学2年生のときにアルバイトとしてトーキョーバイクに入社。中目黒店でセールススタッフとして働く。着なくなった服や本を捨てずに譲る物々交換イベント"JOTO"を企画したり、グラフィックレコーダーとして様々なイベントに招かれたりと多方面で活躍中。現在は自転車を使う街空間をテーマに卒論を執筆中。

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旅先で自転車のある暮らしの良さに気づく

ーー入社のきっかけを教えてください

そもそも全然自転車にも乗っていなかったし、詳しくなかったんですよ。だけど大学生になってから色々なところを旅して、ちょうど振り返ってみると思い出の残っている街が自転車の多い街だったなって気づいて。

大学の春休みを使ってデンマークの田舎で陶芸家のやっているゲストハウスのスタッフとして働いていたんですけど、そこへの中継地でコペンハーゲンに立ち寄った時に自転車に乗る機会があったんです。道も広いし、人もせかせか歩いていなくて、ゆったりしている。東京では電車で携帯電話ばっかりいじって、せかせか歩くのを結構ストレスに感じていたから「あ、自転車があるとこんな生活できるんだ」って。

それで帰国後にアルバイトを探し始めた時に、自転車屋さん!と思い立って、谷中店にふらっと遊びに行ったのがきっかけです。

ーーそれで「よし応募しよう!」となったんですか?

谷中店に行った時は自転車を買う意識は全くなく、ムーンスターのスニーカーを見に行くついでだったんです。でもお店でスニーカーを試着していた時に、スタッフがすごく気さくで。普段の買い物の時にはしない、たわいもない話をしたんです。

私は服屋さんで話しかけられるのがあんまり好きじゃないんですけど、帰りがけに「なんか、いつもと違った」と思って。その日は恥ずかしさを感じなくて、すごくあったかい気持ちになって扉を出たんです。それで、ここで働いたら大学生活のあと半分が楽しくなりそうだなって応募しました。

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何もできなかった時間に、アルバイトがしたいと思った

ーー今年の春から夏にかけて、しばらくアルバイトに来られない期間がありましたよね

そうですね。ただその期間があったから、ここで働くのが私にとってリフレッシュというか、サウナに入って整うのと同じような感じだと気づきました。

コロナウィルスによる都内の緊急事態宣言中は、ずっと何もできませんでした。学校もなくて、アルバイトもいけない。何にもできなくてモヤモヤしていた時に、一番やりたいと思ったのはアルバイトなんですよ。もちろん学業も大事なんですけど。

ただお金を稼ぐだけじゃなくて、人と話してスタッフとも話して、自分の知らないことを吸収して、それをどんどん好きになっていくこの時間が、自分にとって必要なんだって。

トーキョーバイクでのセールスの仕事は、自分の全然知らない人がお客さまとして来て、その人のライフスタイルをちょこっと覗き見して、その人がそこに自転車を盛り込みたいんだなっていう話をちゃんと聞く。

それって誰かのために、何かをする時間なんですよね。

実は私、少し前まで自分のことばかりで全然人の話を聞けていなかったんです。だから誰かのために何かをする、これまでしていなかった頭の使い方をしていきたいし、今はそれが少しずつできるようになってきた感覚があって。だからここに来ることで自分の背筋が伸びるんです。

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ーー人の話をちゃんと聞いて、その人のために何ができるかを考える場所。そういう場として、ここで働いているんですね。

私は大学生になって長野から東京に出てきたんですが、とりあえず自分は一人だから何にもないし、自分のことを話さなきゃ誰も知ってくれないと思っていたんです。だから大学でもアルバイト先でも、会った人にはまず自分のことを話して満足していたんですよね。

それで周りに知り合いはいっぱいできたし、つながった。だけどある時、だから何?という風になっちゃって。どこに行っても自己紹介はしっかりできるけど、たわいもない話ができない感じというか。

あぁこれはヤバイなって。
そういえば私は自分のことだけ話していて、相手のことは聞いているつもりで実は聞いていなかったことに気付いたんです。就活の始まる前くらいのタイミングだったかな。

客観的に見たら、自分はなんて痛い人なんだ・・・って結構ショックで。

それで、それは一回止めようと。今度は周りの友達や知りあいのために、外側に広げていくんじゃなくて内側に掘っていきたいと思いました。相手のために何かする、相手に寄り添うみたいに、今までとは真逆にしたいなと思ったんです。

ーーその後、何か変化がありましたか?

そうですね・・・、トーキョーバイクの接客にどう繋がっているかはわかりません。だけど、それに気付けたことでお客さまがただのお客さまじゃなくて、同じトーキョーバイクを持つお友達みたいな感じでお話できるようになったかな。図々しいかもしれないんですけど。

自分が好きだから、人に勧めるのが楽しい

ーー最初は自転車は乗らないし、興味もそこまでなかったんですよね。2年経って、変化しましたか?

やっぱりこの仕事は自転車が好きじゃないと、全然知識が頭に入ってこないし、ほどよく自転車というものに対しては向き合わないといけない。

私も最初は別に好きじゃなかったし乗る気もなかったけど、きっかけはよくわからないけど好きになっちゃって、友達からも自転車の人と思われるようになりましたね(笑)

今はすごく好きだからよく乗るし、街で見かけると「あっ、トーキョーバイクだ!」「めちゃ可愛い!」てなります。「なんでこのカスタムにしたんですか?」って、持ち主に話しかけたくなる。

それくらい好きだから、そこで働くのが誇りでもある。愛がすごすぎて、みんなに勧めちゃいますね。

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ーートーキョーバイクでは知り合いに勧めたからといって、インセンティブがあるわけではないですよね。

一台売ったら、いくらもらえるとかないですもんね。

最近自分のインスタグラムのストーリーで、自分が乗っている自転車を発信していたら、周りの人が3人ほど買ってくれました。買う前にちょっと相談したいと私にメッセージを送ってくれる子達がいて、どんな感じで乗りたいのかを聞いてオンラインカウンセリングの様にやりとりをしていました。

そうやって友達がだんだん乗ってくれて、すごく楽しいなって思っています。

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好きなものと好きな時間

ーートーキョーバイクのラインアップの中で、好きなモデルはどれですか?

私が乗っているTOKYOBIKE CS Limitedです。デザインが好き。私は機能面よりもデザイン重視だったので。

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ほどよく自分らしいのってなんだろうってカスタムを考えて、メカニックの同僚達に相談しながら作った自分の自転車が好きです。今はBROOKSというイギリスの老舗サドルメーカーの革サドルが欲しくて、BROOKS貯金をしてます。

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名取さんのTOKYOBIKE CS Limited (本人撮影)

ーーお気に入りのオプションパーツはありますか?

Velo Orangeというブランドのハンドルですね。前傾になるストレートハンドルと、ゆったりしたプロムナードハンドルのちょうど中間のような感じで、私にちょうどいい。ちょっとだけ前傾姿勢にもなるから、スピードもだせます。

ーーここからは少しプライベートな質問です。暮らしの中で好きな時間はどんなことをしている時ですか?

私は何かした後が、全部好きなんですね。
例えばサウナだったら、サウナの後のご飯が好き。

それから汗を流した後にみんなで飲む一杯がすごく好き。それ自体がすごく美味しいんじゃなくて、自分もみんなも頑張って働いた後、その仲間と一緒に飲めるのがいい時間だなって思います。

ーー自転車で行くのが好きな場所や道、時間などはありますか?

最近は勤務が終わった後、同じアルバイトの西村さんとの帰り道がめっちゃ好きなんですよね。だいたい同じ方面なので、お店の営業後に一緒に帰るんです。

帰り道の信号が多くて、信号で止まる度に今日あったことや次の予定をちょこっとずつ話したりするのがすごく楽しくて。帰り道が通学路みたいな感じ。誰かと一緒に何かの後に走るのが好きですね。

あとサウナ帰りの自転車も好きです。まじ、気持ちいいです。


取材・文/小西
写真/橋原