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乗る人の愛着につながる一台にしたい/中目黒店 店長 木村

私たちトーキョーバイクは、街を楽しむための自転車をつくっている会社です。(くわしくは自己紹介をごらんください)
この連載では、私たちの自転車が皆様のお手元に届くまで関わっている全スタッフを一人ずつ紹介します。

第7回目は中目黒店店長の木村さん。自転車のカスタマイズを希望されるお客さまに応えていく中で、その人らしい一台を一緒につくる楽しさを語ってくれました。

木村 祐太(きむら ゆうた)
総合スポーツショップやスケートボード専門店を経て、2019年にトーキョーバイク入社。店舗メカニックを経て、2020年より中目黒店店長。

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お客さまの生活に合うように、丁寧に説明する

ーー仕事内容を教えてください

基本的にはセールスメカといって、接客と自転車のメカニックをしています。店長として書類の管理や事務作業、組み立てや修理のスケジュールも見ています。

ーー中目黒店のお客さまはどんな方が多いですか?

通勤で自転車をお探しの場合は、家も職場も都内で比較的近い方が多いですね。仕事も買い物も渋谷新宿圏内というような行動範囲の方が多いです。この辺は東西に走る電車の路線が多いので、縦(南北)の交通手段がなくて困っていて、自転車があると便利という声はよく聞きますね。

ーー実際にはどんなお話をするんですか?

トーキョーバイクの直営店にいらっしゃるお客さまは、自転車の見た目はシンプルで良いけど、実際何がいいのか?を知りたくてお店に来ている感じがします。それなのでどういう目的で自転車に乗りたいか、最初にイメージを聞きますね。

それにあわせてこのモデルが良いですよとか、バスケットをつけたら乗りやすいと思います、というような提案をします。

デザインや予算でモデルを選んで来店されるお客さまも多いのですが、それだと実際の使用目的と合わない場合もあるんです。そういう時に何故これがいいのかというのは、説明するようにしています。疑問を持ったまま納車までいくより、少しでも明朗にしてあげるほうがいいのかなって。

ーー何に使いたいかを聞いて、目的感とモデルが違ったら、きちんと説明するんですね。

お客さまの気持ちを否定するまではいかないですが、できる限りのアドバイスはして、実際に試乗して納得して選んでもらえるようにしますね。

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ーー試乗コースの工夫はありますか?

坂の多い中目黒、渋谷、新宿などで乗りたいという方には、基本的に坂を試してもらうようにしています。試乗では代官山方面の鎗ヶ崎交差点のあたりですね。実際にそこが通勤ルートになっている方で、登れるか不安ですという方も多いので。

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変速のないモデルを検討されているお客様には、坂道で両方を試してもらいます。変速がなくても意外にいける!という場合も多いです。

他にも近距離向けのTOKYOBIKE LITEというシングルスピードのモデル(変速ギアがない)があるんですが、それをご検討のお客さまには平らな道をひたすら乗ってきてくださいとお伝えします。

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ーー平らな道も試してもらうんですね。シングルスピードのモデルの場合、坂だけ試せばいいのかと思っていました

何故かというと、このモデルはスピードを維持するのが大変なんです。かなり軽い乗り味で作られているので、坂道はすごく楽に感じるんですが、フラットな道を走り続けて時間が経つとしんどくなってくる。それを試してもらって、先に知っておいてもらいます。乗り始めてからあれっ?とならないようにですね。

自分なりの自転車にすることが愛着につながる

ーー働いていて印象的な出来事はありますか?

中目黒店は外国人のお客さまがよくいらっしゃるんですが、いい意味ですごく要求してきてくれる方が多いですね。例えばフレームカラーはこれでいいんだけど、昔自分の国で乗っていた自転車のハンドルに似たものを探して欲しいとか。ピンポイントのこだわりがあったりします。

ーーそのままの形で購入するのではなく、さらに自分のこだわりをカスタマイズで反映させるんですね。

日本人のお客さまに比べると、自転車をカスタマイズする前提で来ている感じですね。パーツをチョイスして、自分なりに自転車を楽しむのが当たり前というか、自分が乗るんだったら自分らしい自転車にしたいという人が多い。

それはすごくいいなと思います。
自転車に限らず身につけるものを、自分でしっかり選んだことに意義を見出して、それが乗る人の楽しさにつながっていく。お金をかけたというよりは、自分なりの時間をかけて選んだとか、ちょっとこだわりを見せる部分に愛着を持ってくれるのかなって。

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ーーお客さまの中で特に記憶に残る方はいますか?

外国人のお客様の中でも特に印象に残っている方がいて。その方も細かいこだわりがたくさんあって、色々カスタマイズをしたんですが、完成した自転車をとても気に入ってくれたんですね。

それで納車した次の日、「この自転車、かっこよくない?」とわざわざ言いにまた来店してくれたんです(笑)自分がチョイスした自転車なんだから最高にかっこいい!という自信をふつふつと感じるような方でした。

自転車に携わる人間としては、僕はこうやって乗りたい!と事細かに言われるくらいのほうが熱が入るというか。それに応えたいって気持ちになりますね。

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ーーこれからやってみたいことはありますか?

昔働いていたスポーツショップで自転車を扱っていた時のことなんですが、修理でいらしたお客さまの自転車がかなりボロボロの状態だったんですね。それで修理のお見積りをお出ししたら「その金額なら、もういらないです。これは処分します。」とおっしゃられて。

その時ショックだったんです。もちろん買った時の意欲が無くなってしまうのは当然なんですが、少し悲しくて。自転車って日々のケアや、定期的なメンテナンスで長く乗れる乗り物なんですよ。だから自転車は乗り捨てるものという感覚をなくしていきたいです。

もちろん人それぞれでその人の自由なんですけど、せめて自分の接客した方にはそういう感覚で、ちゃんとケアすれば長く乗れますよというのは伝えていきたい。

先ほど話した自分のこだわりを反映させるカスタマイズは、自分の自転車に愛着を持ついいきっかけになるはずなので、そういう形でも伝えていけたらいいなと思っています。

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好きなものと好きな時間

ーートーキョーバイクのラインアップの中で、好きなモデルはどれですか?

TOKYOBIKE 26ですね。いろんな乗り方ができるモデルです。ゆるくも乗れるし、スピード出そうと思えば出せます。僕はもともと汎用性の高いものが好きなので、何かに特化してるよりは、自分のテンションや気分で変えられた方がいいかなって。

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ーーお気に入りのオプションパーツはありますか?

ハンドルですかね。自転車は色々なパーツでできていますが、ハンドルを変えると同じフレームでも乗り味が大きく変わるんです。
元々のハンドルで満足している方も、2〜3年その自転車に乗ったら、少しハンドルを変えてみてほしいですね。

「もうちょっとスピードを出したい」「もう少しゆったり乗りたい」といった実際に数年乗ったからこそのフィードバックを反映させて、乗り心地の良さに変えられるので。見た目も変わるので気分転換にもなりますね。

ーーここからは少しプライベートな質問です。暮らしの中の好きな時間について教えてください。

映画を見ている時です。映画館も好きだけど、月に一度くらい家から出ずに、閉じ籠って映画を見る時間は最高です。外が晴れていると、罪悪感もあるんですけど。基本的に普段家にいる時間がほとんどないので、そうするとたまに充電が切れちゃうんです。

DVDを5〜6本借りてきて、籠ってそれを全部見終わるまで続ける。起きてすぐ1本目の映画をスタートして、朝ご飯を食べながら流して、ただひたすらそれをやる。快適な温度に設定して、窓の映り込みとかが気になるんで、全部カーテンも閉めていったん真っ暗にしますね。

ーー映画のお供はなんですか?
ポテトチップとコーラです。一袋じゃ足りないので、途中でなくなって、それを買いに行く休憩時間も最高ですね。次何食べよっかなって。

ーー自転車で行く場所で好きな場所や道、時間などはありますか?

家の近くの荒川土手です。時間帯は、ちょうど日が沈んだくらいの時間。
夕日がちょうど山に隠れていくんですけど、隠れきって西日がなくなったくらい。

特に何も持たず自転車だけで出かけて、土手の原っぱに座ってぼーっとする時間が好きです。

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取材・文/小西
写真/橋原