自転車に無知だったから、自分が驚いた熱量で伝えられる/中目黒店 西村
私たちトーキョーバイクは、街を楽しむための自転車をつくっている会社です。(くわしくは自己紹介をごらんください)
この連載では、私たちの自転車が皆様のお手元に届くまで関わっている全スタッフを一人ずつご紹介します。
第6回目は中目黒店の西村さん。接客に留まらず、発信や店舗の改善まで幅広く活躍する日々について語ってくれました。
西村 夢見(にしむら ゆみ)
都市観光を学び京都と東京の2拠点生活をおくっていた大学生時代に、アルバイトとしてトーキョーバイクに入社。セールススタッフとして中目黒店に勤務。高校はメルボルン、大学は台湾に留学経験がある。
アルバイトのきっかけと働いてみた印象
ーーアルバイトに応募したきっかけは?
私は大学が京都で、そこで自転車を使ってみたら意外と面白かったんです。その次に東京でアルバイトを探そうと思った時に、そういえばトーキョーバイクって自転車屋さんがあったなって思い出して。
ホームページを見た時に、この会社は自転車を売るというより自転車のある生活を売っている感じがしたんです。これなら自転車をよく知らない私でもできそうだなと思って応募しました。
ーー実際に働いてみて、どんな風に感じていますか?
すごく寛容だなと思います。京都と東京の2拠点生活で採用してくれる所って、あんまりなかったんです。それなので、ここは人で見てくれているんだなという印象が最初にありました。
仕事で失敗した時にも思うんですけど、みんなフォローが優しいですよね。なんやかんや尻拭いをしながら、私には笑顔で大丈夫だよって言ってくれる。感情的に怒られたりはしないので、仕事がしやすいです。
モノを買うお店として、お店のレイアウトなど以前に、人の出す空気感がすごくいいなと思っています。結局はスタッフの楽しさが、言葉よりも一番伝わるところだと思うので。
ーー接客をしている時に意識してることはありますか?
逆に意識しすぎてしまう節があるので、意識しないようになりました。
私はもともと接客がすごく苦手で。トーキョーバイク以前のアルバイトでは声もでないし、震えるし、はぁっ・・・って緊張していたんです。
会社として言ってはいけないことがあったり、一人のお客さまについていい時間が決まっていたり、考えることがすごく多かったんですね。色々考えすぎて、接客がなかなかできない時期があったんです。
ここではほとんど接客上のルールやノルマはなく、その時の状況に応じてという感じなので。考えすぎないようにしていますね。
自分が驚いた熱量で、お客さまに伝える
ーー中目黒店のお客さまは、購入時にさらにカスタマイズをされる方が多いと聞いています。何か理由があるんですか?
カスタマイズとは、自分のライフスタイルや好みに合わせてパーツを加えたり変更したりすること。自転車の場合は買い物用としてカゴをつけたり、見た目を変えるためにタイヤの色を変えたり、乗車姿勢を変えるためにハンドルを変更するなどがある
私自身も自転車のどこをどれだけ変えられるのか、変えた時の値段はどうなるのか、などカスタマイズについて最初は全然見えていなかったんです。
お店に展示する自転車をメカニックが組み立てるのを見て、その度に「こういうことができるんだ!」とびっくりしていました。そのびっくりした熱量でお客さまに伝えると、お客さまがそれを取り入れてくれることはよくありますね。
ーー自分がびっくりした熱量を伝える。どんな風にですか?
例えば美味しいカフェのケーキを見つけて、友達に「あそこ、めっちゃ美味しいから行ってみて」という感じで言っています。だから難しい単語や自転車用語は使いません。これとこれをいくらで変えたら、この見た目になるんですよとお伝えしますね。
ーーあるパーツを変えた時に実際何が変わるのか、乗り味・見た目・値段がどうなるのか。なかなかわからないですもんね。
そうですね。お客さまが疑問に思いそうなことを、私が先にメカニックに聞いています。お客さまと同じ目線で自転車を見て、橋渡しというか、つないでいくという気持ちで伝えていますね。
自転車に無知だったからこそ、伝えたい記事を書く
ーーお店では接客以外にも、ホームページのスタッフノートをいくつか書いていますよね。
スタッフノートとは、トーキョーバイクのホームページ内にある社員のblog記事のこと。通勤に自転車を使っているスタッフのレポートや、雨の日の装備、好きなコーヒー屋さんの紹介など、街と暮らしを楽しむための記事がそれぞれの言葉で綴られている
私は自転車について無知のレベルで入社したので、接客をしている中でこういうことが知りたいな、自転車でこういうことができるんだという発見があります。それをお客さまが知ってくれたら、もっと自転車を好きになってもらえるんじゃないか。そんな切り口で書いています。
例えば輪行の記事は、自転車のことを本当に知らないこんな私でもできるんだよ、と京都から東京まで新幹線で運んだ時のことを書きました。
輪行とは、電車や飛行機などの交通機関を利用して自転車を運ぶこと。その際、持ち運べる大きさにして専用の袋に収納する。
旅先が都市なら、自転車は便利な相棒になるんです。実際自分がやってみて、自転車と自分の可能性が広がりました。
他にも自分の自転車を実際にメンテナンスに出した体験など、これから書いてみたい切り口はいっぱいあります。
もっと楽にできないかを常に考える
ーー他にもお店の細かい改善を提案したり、実行していますよね。外国人のお客さま向けの英語の納車説明を作ったり、パーツの展示方法の変更をしたり。
中目黒店は最近外国人のお客さまが本当に多いんです。私は高校時代にオーストラリアのメルボルンに留学していて。英語の納車説明は、私がいなくなった後に英語が苦手なスタッフしかいない状況になったとしても、まわしていけるようなシステムがあるといいなと思って作りました。それを作れたら私がいた意味があったのかなって。
ーーお店のレイアウト変更は、自転車の鍵を選びやすいようにしたんですよね?
トーキョーバイクの自転車に鍵はついていないので、お客さまに合うものを選んでご購入いただくんです。ただ鍵の種類が多くて、悩まれる方が多かったので、試しに配置を変えてみました。
それまではレイアウト重視で決まった場所に収まるように並べていました。そうすると説明があちこちに飛んでしまうし、ぱっとみたときの情報量が多すぎると感じたんです。それで一列に並べてみようと。
左から右へいくほど強度があがります、と提案できるようになりました。安全面を気にするならこのあたり、手軽さをとるならこれかこれ、とお客さまが選びやすくなったと思います。
ーー発信からオペレーションを考えての改善提案まで、活躍の幅が広いですね。
もっと楽にできないかなと考えるのが、癖なんです。お店で働いている中で、常日頃考えて動いてはいますね。
でもそれを「アルバイトがやっていいよ」という寛大さもここにはありますね。それ自体を言えなかったり、そこまでまかされない職場も多いので。「実際にやってみて、無理だったらそれでいいよ」と言ってくれる感じなので、ストレスなくやれてるかな。
そこも長くここで働いている理由なんだと思います。
好きなものと好きな時間
ーートーキョーバイクのラインアップの中で、好きなモデルはどれですか?
TOKYOBIKE 26です。構えずに気軽に乗れるモデルですね。カラフルな色が好きで、私はマスタードを選びました。置いてあってもかわいいです。
写真:西村さんのTOKYOBIKE26(本人撮影)
変速ギアも付いていて、マルチに何も考えずにストレスフリーで乗れるのが良いです。
個人的に細すぎるタイヤだとすぐ転ぶんですね。もっとタイヤが細くてスピードがでるモデルもありますが、段差や点字ブロックを避けようとか、自転車をこいでいる時に考えるのが嫌なんです。坂が見えた時にあれ登れるかな?と考えるのも嫌だから、変速ギアが付いていた方がいい。
自転車で走るときの気配りに時間を割くのではなく、「あのパン屋さんのパンが美味しそう」と走っていて感じることに頭をもっていきたい。自転車自体にそこまでこだわりがないからこそ、私はこのモデルがいいですね。
ーーお気に入りのオプションパーツはありますか?
自転車のリアキャリア(荷台)に取り付けられるパニアバッグです。汗っかきなので、リュックだと背中に密着するのと自転車のペダリングが重く感じるのが嫌なんです。
私はできるだけものから解放されたい人間なので。これならハンドリングも取られないですし。
でもなかなか言葉では良さが伝わりづらいんですよね。一週間お試しで使ってみたらわかってもらえると思うんですけど。だからこそ推したいですね。
自転車って購入した後、修理やメンテナンス以外ではなかなかお店に行かないと思うんですけど、もし買った後に来てくれたらそういうお話ができるのにとは思います。
より自分のライフスタイルに合わせて、もう少し自転車をアップグレードしたら楽しくなる。それを伝える手段の一つとしてもスタッフノートは書いています。
ーーここからは少しプライベートな質問です。暮らしの中で好きな時間はどんなことをしている時ですか?
ちょっとルーティーンから外れた時が好きです。普段これをする時間が好きというより、普段しないことをしてる時間が好き。
ーー最近だと例えば?
ちょうど彼がインターンで京都から東京に2ヶ月間来ていて、Airbnbを借りて週の半分を一緒に住んでるんです。
ーー面白そうですね!普段の自分と違う生活になりますね。
彼は東京が憧れの地のような感じで、朝ご飯はここへ行きたい!夜はここ行きたい!というのがあって、ちょっと観光客っぽい感じなんです。
私は東京に住んでいる時間も長いし、明日仕事なのに今からそこに行くの?と億劫なんですけど、自分も東京の観光客のノリだったら意外にいけるなと思って。
億劫だったのが、楽しい!に切り替わる瞬間がすごく好きです。自分の価値観をちょっと入れ替えてあげたり、視点を変えた瞬間に見えてくる新しい楽しさがあって。それを見つけるのが好きですね。
ーー自転車で行く場所で好きな場所や道、時間などはありますか?
断然、京都です。もともと京都で自転車が好きになったので。
道はわかりやすいし、駐輪場も探さなくていいし、ちょっと行けば自然もある。自転車のスピード感と街の規模感、自然と都市のミックス感がすごく相性がいいなって。何も考えずに走れるのもいいですね。
取材・文/小西
写真/橋原