SDSノート_20いつものもしも「アーティストトーク7」
こんにちは。ソーシャルダイブ・スタディーズ(以下 SDS)、コーディネーターの工藤大貴です。今回は9/1に実施されたアーティストトークのレポートです。前回までのSDSについては下記をご覧ください▼
第20回レクチャーとなる9月1日(水)のアーティストトークは、「いつものもしも」プロジェクトメンバーであるオンデザインパートナーズと株式会社良品計画のみなさまをゲストにお迎えしました。
▲MUJI 企画デザイン担当部長の宮尾さん
良品計画さんにはSDS初回レクチャーにもご登壇いただきました。
「いつものもしも」では、東日本大震災時に石巻で被災地支援に取り組んできたオンデザインパートナーズと、良品計画が市民一人ひとりのVOICEを可視化して、災害に備えるワークショップやフィールドサーベイをおこなってきました。
今回は、良品計画が販売している「くらしの備え」シリーズに関する制作ストーリーや防災に関するトピックをご紹介いただくと同時に、SDS参加者が「MUJIにつくってほしい防災・デザイン」アイデアを考えるワークも実施しました。多くのVOICEがでてきた今回のレクチャーでしたが、その様子をメンバーにレポートしてもらいます。それではぜひご覧ください▼
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SDSメンバーの池田奈津です。大学を卒業し5年ほど経営コンサルティング会社に勤めていましたが、今月から学生に戻り、イギリスの大学院でアートマネジメントを勉強する予定です。
留学に向け有意義な準備・インプットをするため、SDSに参加しています。東京ビエンナーレを題材に芸術祭のつくり方を学び、運営・展示に携わる方々から直接お話を聞くことで毎回刺激を受け、留学に向けた学びのスイッチを入れることができています。
今回は9/1、防災の日にちなみ「いつものもしも」プロジェクトで考えられてきた地域防災についてお話を伺いました。
レクチャーに参加し、東日本大震災から既に10年が経過し、無意識のうちに自身の危機意識が薄れていることに気付かされると共に、気候変動と共に各地で続く自然災害はまさに「もしも」ではなく「いつも」身近にあるものだと改めて認識しました。
ondesignさんがヒアリングしまとめた生活者の「VOICE」では、普段なかなか共有する機会のない私たち市民の声が可視化されていました。地域が異なれば「VOICE」も異なり、求められる防災も変わることから、同じプロジェクトを他地域でも実施したら、さらに新しい発見がありそうです。
ondesignさんの強みに良品計画さんの強みが掛け合わされ、建築だけで解決できない課題にアプローチできるようになった、という点も印象的でした。
良品計画さんの防災セットには「防災の日常化」という言葉の通り普段から持っていたい・欲しいと思うアイテムがスマートに詰まっていました。コンセプトも明確かつ生活の一部に馴染むデザインはさすがで、製品開発の過程を詳しく聞きたくなりました。
我が家にも防災グッズはありますが、誰もが持っているような防災グッズに付け加えることができる、という点も魅力的でした。
後半は「MUJIにつくってほしい防災・デザイン」のアイディアをチームで出し合いました。私たちのチームでも、昨今の自然災害発生時の状況や実際に避難所の運営をお手伝いされた方の体験をもとに、議論を交わしました。
近年の傾向を考えると避難生活が長期化することも多く、災害後に安全を確保するための道具はもちろん、その後の生活を心地よく快適に過ごすためにどんなサポートが必要かを話し合いました。
避難生活の長期化に伴って避難所のセキュリティをどう守るかが問題になったり、沢山寄付が集まっても必要とする人々に届けられなかったり、初期防災ではアプローチできない課題も多く見えてきました。
長引く避難生活で蓄積されるストレスを少しでも癒すため、避難所をどのような空間に変えて行けるかという観点での意見交換も興味深かったです。「防災の日常化」の意識を持ってこそ、あらゆる角度から生活の満足度を上げるような防災が提案できると感じましたし、その部分でアートやデザインに出来ることも多くありそうだと感じました。
様々な意見や提案を聞き、自身が避難者となる視点だけでなく支援者となる視点も持ちながら防災と向き合うことができ、今後取り組めることの可能性は無限にありそうだと感じた時間でした。
各チームの発表を聞いた後には、「次回の東京ビエンナーレでは避難所をつくりたい」というお話も出ており、その際は是非お手伝いしたい!と思うと共に、今から次回の開催が楽しみです。お読みいただきありがとうございました。
第20回レクチャーの記録はここまでとなります。それでは、またSDSノートにてお会いしましょう。