ミヒャエル・ゾーヴァ〜映画『アメリ』で登場した印象的だったあの絵

2001年公開の映画『アメリ』で、主人公の女の子・アメリの寝室の赤い壁に掛けられた２枚の絵画が印象的なシーンとして登場します。この映画は、そのユニークなビジュアルとストーリー、そして空想好きな女の子、アメリという魅力的なキャラクターによって、フランス本国、そして全世界でもロングラン・ヒットとなりました。日本でも当時、アメリブームがおこり、これらの絵画を記憶している方も少なくないでしょう。

ミヒャエル・ゾーヴァ『治療中の犬』2001年

絵を描いたのはドイツの画家ミヒャエル・ゾーヴァ。彼はドイツのベルリン出身で、幼い頃から絵を描くことが好きでした。ベルリン芸術大学で美術教育を学び、在学中の学生運動への参加が、彼が自身の作品に社会や政治に対する風刺的な要素を取り入れるきっかけとなりました。卒業後、短期間美術講師として勤務しましたが、すぐにそれを辞め、独立した画家としてのキャリアを歩んでいくことを決意します。その道のりは容易なものではなく、郵便局でのアルバイトも経験しました。絵を描くことだけで生計を立てるのが困難だったため、広告、ポスター、雑誌のイラストなどの仕事にも手を広げました。

1992年に転機が訪れます。「二つの世紀」というグループ展の成功が、その後のキャリアに大きな影響を及ぼしました。『ケーラーの豚』を含む彼の作品が新聞や雑誌で注目を集め、これにより仕事の依頼が増加し、ゾーヴァの知名度も上昇しました。ゾーヴァの日本での人気に火をつけたのは、前述の通り、ジャン・ピエール・ジュネ監督の映画『アメリ』への彼のアートワークの参加でした。