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バンクシー《シリア移民の息子》〜スティーブ・ジョブズがここに描かれた意味とは?

バンクシーは移民危機をテーマにしたいくつかのグラフィティ作品を制作します。その一つが、フランスのカレー近郊の「ジャングル」という移民キャンプに描かれた《シリア移民の息子》です。

カレーはフランスからイギリスに渡る最も近い場所であり、ドーバー海峡に面します。この地理的な特徴から、トラックの荷台やフェリーのコンテナに隠れてイギリスへの渡航を試み、アフリカや中東からの難民がイギリスへ渡るためにカレーを経由するケースが増加し、数千人の移民が一時的に滞在する「ジャングル」と呼ばれる難民キャンプが形成されました。描かれたのは2015年12月で、翌年2月29日にはキャンプ内で約100戸が解体されてしまいました。

《シリア移民の息子》に描かれた壁画の黒いタートルネック、ジーパン、丸メガネの人物は、アップルの創業者のスティーブ・ジョブズ。手にはオリジナルのマッキントッシュ・コンピュータと荷物を持っています。

私たちは、移民達は自国のリソースを浪費させるものであると考えている。しかし、スティーブ・ジョブズはシリア移民の息子だった。アップルは世界で最も価値のある国で、一年間に70億ドル以上の税金を支払っており、それは元をたどればシリアのホムスからやって来た若い移民の男(ジョブズの父)の入国を許可したのが始まりではなかったか。

バンクシー自身のコメント
バンクシー《シリア移民の息子》1995年 の再現展示(バンクシーって誰?展 より)

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389字
ヴェルデさん、かるびさんなど美術ライターも参加していただきました。それぞれの切り口のいろいろな読み物がが楽しめます。

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