トーキョー・アルテ・ポップ スペシャルトーク&ライブ(1)東京で交わる明確な線
楠見:みなさんこんばんは。ようこそいらっしゃいました。江口寿史さん!
江口:こんばんは。たくさん集まってますね。
楠見:そしてルカ・ティエリさん!
ティエリ:こんばんは。
楠見:私はこの展覧会のキュレーターで、司会を務めさせていただきます、楠見です。よろしくお願いいたします。今日はお二人とこの展覧会について話をするというのをすごく楽しみにしてきました。いろいろとお聞きしたいことがありますが、まず、この展覧会のタイトル「TOKYO ARTE POP トーキョー・アルテ・ポップ」の説明をさせていただきます。言葉としては「ARTE POP」というのはイタリア語で「ポップアート」のことですが、お二人の展覧会を企画するときに「TOKYO ARTE POP トーキョー・アルテ・ポップ」というあえてイタリア語で、東京なんだけど日本語じゃなくてイタリア語にしようと考えました。私がこの展覧会について書いた解説文がお手元にある方も多いと思いますが、そこでこう定義をしているんです。
要は、言葉にしがたいものを提示してみたいと思ったんです。ですが、今日はトークショーということでそれをあえて言葉にしなければいけない。ということで、お二人のアーティストのお力を借りたいと思っています。トークの前半はお二人の絵について、それぞれ影響を受けてきたコミックや、その他のカルチャーについてお話しいただけたらと思います。
それから、この展覧会は江口さんが、「線」をテーマにしたいという風におっしゃられていて、その話をしながらルカさんからこの言葉をいただいたんです。
Linea chiara(リネア・キアラ)
これはイタリア語ですけれども。フランスのBD(ベデ ※Bande Dessinée バンド・デシネ)など、フランス語ではリーニュ・クレールといって「明確な線」という意味です。19世紀のエッチングとかハッチングしたような線描画ではなくて、もっとくっきりとした、はっきりとした絵でコミックを描くという、印刷技術と関係があるんでしょうけれども、ヨーロッパのマンガの伝統、スタイルとしてあるわけです。お二人の絵に共通するものがこの「明確な線」(リネア・キアラ)であると思うんですね。で、せっかくなので今日はイタリア語をひとつ、この「Linea chiara(リネア・キアラ)」、覚えて帰ってください。
絵の中のリネア・キアラと同時に、実は僕にはもう一つ明確な線が見えたんです。お二人が今ここ東京で2023年に交差している線。これまで日本で、あるいはイタリアでそれぞれ絵を描いてきて、ここ東京で出会い交差しているという。このお二人の絵のお仕事を通じた部分の交わりというのをこの展覧会で表現できたらいいなと思って。
それで会場をご覧になられた方はイメージできると思うのですが、壁にかけられた作品とは別に、中央に展示台を置いて、そこにお二人が影響を受けてきた本をたくさん並べていただきました。でもあの展示台を見ただけでは置いてある本が一体何であるか、ひとつひとつ説明をしていないので、お分かりにならなかったこともあると思います。なので今日はそのことについてお話しいただけたらと思います。
ということで二人の明確な線(リネア・キアラ)を辿っていきましょう。
資料展示
トーキョー・アルテ・ポップ スペシャルトーク&ライブ(2)へ続く。
一つ前の記事はこちら↓