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【LAST SEASON ESSAY 2024 #3】SA 市川 拓実

自然な選択だった。

「フルヒットはもうやめた方が良いですね」
医者に告げられたとき、迷うことなくRBからSAに転向することを決めた。何かチームに貢献したかった。別の道もあったと思う。

SAとしてチームを勝たせるには、圧倒的な知識が必要だ。
幸いにも少しだけ選手経験があったので、先輩の選手からいろいろな話を聞けた。SAの先輩やコーチの方々とも積極的にコミュニケーションを取りにいった。
その年からOffenseチームはFlexboneを採用したが、その黎明期にSAとして設計に関われたのは大きかった。

3年生で、OCのアシスタントをやらせてもらえることとなった。コーディネーターのやることは多岐にわたると知った。
Offenseチームに対して最善の戦略を提示し、実際にPlay Callをするというのはあくまで一部分に過ぎない。
それをするためにはいろいろな障壁とぶつからざるを得ない。さまざまな異なる意見を統合し、ときには自分のやりたいように突っ走る。
そんなリーダー性が求められると感じた。自分がそうなりたいと思うには、少し時間がかかった。

アメフトというスポーツは面白い。まだ中学生だったが、3-28から逆転したあのSuperbowlをみれば理解できた。
しかし実際に当事者になると面白さは別次元だ。2年生の秋シーズン、初戦で逆転勝利したときの映像はまだ脳裏に焼き付いている。

その景色を、後輩に見せないといけない。
そう感じるようになった。

BIG8との入替戦を終えて4年になり、OCを務めることになった。その日は3年くらい前の遠い過去のようにも思えるし、昨日のことにようにも思える。

失敗だらけの1年だった。

なにか今年大きく変えたものがあったかと言われれば、ないと思う。
その時に自分が最善だと思う選択を繰り返し、失敗も繰り返してきた。
ただそれだけだ。

その時大きな決断と思っていたことも、後から見てみたら小さい選択の一つだったのだろう。
ただ、その小さい選択一つ一つで結果が大きく変わるかもしれないという責任感だけは、どんなときでも失わないようにしてきた。

リーダーの選択が結果を全て決めるというのは大きな間違いだ。
しかし、リーダーがビジョンを示さなければ、誰もついてきてくれない。
決めたことを振り返って正解にしていけば良い。そこに責任が付きまとう。

後輩が成長していると思ったとき、すこし幸せを感じられる。

なにもアメフトなんてやらなくてもよかったはずだ。奪われていったものは計り知れない。家族との時間、高校同期との関係性、勉学や睡眠、それらの大切さは分かりながらも、勝つために中途半端にしてしまった。
反省はしつつも、後悔はない。

今週末、4年間の全てを賭けるには絶好の機会がある。
負ける理由は山ほどある。
残念ながら勝つというのは全く自然なことではない。

そう、それを、掴みに行く。
あのときの選択を正解にするために。

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