写真集は欲しいときにない
こんにちは、路上写真家のTokyo Street PIX/TPIXです。
今日は、欲しかった写真集を買ったお話ですが、写真集の魅力についても考えたいと思います。時間があればお付き合いいただけると嬉しいです。
さて、欲しかった写真集というのは森山大道の『光と影』です。
写真家・森山大道氏が1982年に発表した写真集で、今回買ったのは2019年発売の新装版(月曜社)です。
吉祥寺の古本屋さんで、1年くらい前に見つけたことがあったのですが、定価6000円で古本が4000円位でしたので、このくらいの価格差なら森山氏にも印税が入る新品で買おうと思い、この時は買いませんでした。
しばらくしているうちに、新品の在庫がなくなってしまい、古本も1万円を超えるようになり、入手の機会を失ってしまいました。
先日行ったGINZA SIXの蔦屋書店に、新品の『光と影』を発見し、プレミア価格込みで9800円でしたが、新品で1万円以下なら買いだと思い、即購入となりました。
この写真集は、森山氏が1972年に『写真よさようなら』という写真集を出して以降、低調な時期を経た後の復活を象徴する写真集です。
タイトル通り、街に存在する光に身も心も自ら入り込み、と同時に、そこにできる影もまた、存在意義を証明するものとしてあることを発見することを再認識させてくれます。
個人的に印象に残ったのは、芍薬の花、逗子の桜花、自由が丘の電柱などです。
芍薬の写真は、まだ現像していない時から手応えを感じていたそうで、個人的には森山氏復活のきっかけになった1枚だと思っていますが、フレームいっぱいに写るさまは、花が持っている生命力と、太陽からの光を花びらいっぱいで浴びる様子が象徴的なら写真です。
桜花は有名な1枚ですが、モノクロの桜なのに、観る者が桜色に脳内変換してしまう不思議な写真です。この写真を観ると、写真の不思議な力と森山氏の圧倒的な写真力とも言えるセンスを感じざるを得ない写真です。
電柱の写真は、一見するとただの電柱を撮った写真なのですが、電柱の貼り紙防止のイボイボの表面を頂点に、そこから側面に至る影のグラデーションが美しい1枚です。単なる街の景色からも光と影を感じさせる素晴らしい写真です。
この写真集の巻末には、「懐疑ー1972-82」というタイトルで、『写真よさようなら』から『光と影』に至る10年間の軌跡が、森山氏の言葉で書かれています。一般的には森山氏スランプ期という認識ですが、その間に得たもの、失ったものについて知ることで、この写真集の重みを改めて感じました。
1冊の写真集が写真家の手を離れ、自分のもとに来た時、例えばこの写真集の場合は1982年の初版から2024年の現在まで、42年間の時空を超えてやって来たと言えますが、ここに収録されている写真と自分の中にある記憶のシナプスが結びつき、誰も知ることのできない自分だけの世界を観ることができるのが、写真集の大きな魅力だと思います。
私が小学生の時の写真が、今アラフィフのおっさんが見ている不思議さ。そして、その写真家は、現在も現役で写真を撮り続けている奇跡。
何を伝えるのか。
何が伝わるのか。
普段からカメラ片手に写真を撮っている人こそ、写真が持つ時空を超える力を信じて写真を撮って欲しいと思いますし、過去の写真を見返した時に、今の自分が何を感じるのか楽しみにしながら撮れれば幸せではないかと思う今日この頃です。
あと、写真集は欲しいときが買い時です。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。またお会いしましょう。路上写真家のTokyo Street PIX/TPIXでした。
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