陸路と海路で新宿→神戸→【博多】→ソウルへ【旅記録7】
日が明ける前、静まり返ったカプセルホテル「アクアヘ」をそっと後にする。外へ出ると、雨粒が静かに路面を叩いていた。
今日は、親切な駅員さんが渡してくれた時刻表を手に、三ノ宮駅から鈍行列車を乗り継ぎ、終着点の博多駅を目指すこととなる。
予定より少し早く駅に到着したものの、構内にはお茶をする場所も見当たらない。仕方なく外に出ると、目に飛び込んできたのは、始発を待つ人や、地べたで眠り込んだ酔っ払いさん。風邪ひかないといいけれど。
また乗り換え。
一本でも列車を乗り遅れれば、今日の計画が大きく狂いかねない。そんな思いが頭をよぎり、時刻表を片手に、自然と足が速まる。
都市部を抜けると次第に乗り換えの間隔が長くなり、時間の流れもゆったりとしてきた。日本らしい穏やかな田舎の風景へと変わっていく。
窓の外は雨の影響でグレーの景色が広がる。
そんな中、学生たちがさす色とりどりの傘が目に留まり、その鮮やかさにふと嬉しい気持ちになる。
それだけこの日は色が少なかった。
旅の途中、かつては賑わいに溢れていただろう町並みが、今ではひっそりと静まり返っている光景に何度か出くわした。その度に、時の流れと共に移ろう日本の姿を感じ、胸にわずかな寂しさが広がる。
それでも、その静けさの中に宿るかすかな温もりや、昔の暮らしの名残を見つける度に、どこか懐かしく尊い気持ちにさせられる。
西へ進むにつれ、列車に揺られる時間よりも、駅で列車を待つ時間のほうが長くなってくる。
その待ち時間が、旅路のリズムをよりゆっくりと変えていくように感じられた。
いくつかの駅で、列車を待つ時間を使い、韓国の友人へのお土産を少しずつ揃えていく。各駅のショップを巡りながら、どんなものを喜んでくれるだろうと思いを巡らせる。
朝5時に三ノ宮駅を出発し、鈍行列車を乗り継ぎながら19時に博多駅に到着。移動時間は14時間。
長時間の移動で、じんわりと体に広がる疲れを感じながらも、まずは何か温かい夕食で腹ごしらえ。
「博多」には美味しい食べ物が沢山あると聞くけれど、私が最初に頭に想い浮かんだのが、豚骨ラーメン。ということで、到着した駅構内で、すぐに美味しい豚骨ラーメンが味わえるお店を探し始める。
すると「ShinShin」というお店が評判良しと知り、早速向かうことにした。
ところが、お店の前には長蛇の列。耳に飛び込むのは韓国語、中国語ばかり。釜山に行く前に、既に異文化に飲み込まれるのだった。
正直、並び疲れてもうヘトヘト。。。
やっとこさ、店内へ。
席に座るなり、「豚骨ラーメン下さい!!」♪
そして数分後・・・
目の前に豚骨ラーメンが “こんばんは!!”
まず早速、 一口、スープをすする。
うっ、うまぁ~~。濃厚ながら臭みのないクリーミーな豚骨の旨味が口の中に広がり、さっきまでの疲れがいずこへ。
そして細麺は、絶妙なコシを保ちながらスープをたっぷりとまとい、スルリと喉を滑り落ちる。まさにこの一杯が博多の豚骨ラーメンだと感じさせる味わい。
目の前に置かれた新しい麺がスープに沈んでいく様子を見届け、再び箸を手に取る。一口、また一口と夢中ですすり、気づけば器は空っぽに。
そして丁度いい満腹感。体もポカポカ温まる。ほっ。
じゃぁ、次は宿探し。
行き当たりばったりの旅ゆえ、お手頃なホテルが見つかるかハラハラしながらネットを検索。ところが、リーズナブルな宿はどこも「満室」の二文字…。そんな時ふと思いつく。
「あっ!! どうせ明日は早朝出発だし、数時間滞在ならネットカフェでいいじゃん!」と。
向かったのは駅近の「サイバック博多駅前店」さん。
到着してみると、まずフロントの清潔感に驚く。店員さんの対応も親切そのもの。さらに店内を見渡すと、これまたピカピカで快適環境。
フリードリンクに加え、PCも使い放題で、調べ物もスムーズに進みそうだ。
さらにシャワーまで完備されていて、これならもう立派な宿泊施設と言っても過言ではない。
行き当たりばったりの身軽な旅には十分過ぎる設備で、思わず嬉しくなってしまう。
新宿、神戸、そして博多と移動をしてきて、ついに明朝、博多港から韓国、釜山へ船で渡る。
韓国に渡るのに、準備万端!!…と言いたいところだが、ひとつだけ結構な不安材料が残っていた。
それは、自分のスマホの機種が韓国で使えるのか!?
いくら調べてもこれといった具体的な情報は見つからず、スマホ会社に自分のスマホで通話できるのか問い合わせてみたものの、まさかの「分かりません」という返答…。
これはもう仕方がない、博多港か現地で何とかしようと腹をくくった。
満喫でシャワーを浴び、数時間の仮眠をとり、明日の釜山上陸に備える。
釜山に行くのは初めてなので、どんな景色や出会いが待っているのか、期待で胸が膨らむ。
明日から始まる韓国の旅を楽しみに、静かに目を閉じて眠りにつくのだった。
つづく