2024年7月27日 サロン・ド・コテツ
これまで都内を中心に各地でおこなってきた、「歌とワイン」の新企画「サロン・ド・コテツ」がスタートします。構成は、まず前半にコテツの司会による、
コンサート、今回はコテツの他に魅力的な女声歌手が4名、そしてピアノには東京オペラ常連の金澤亜希子。後半には簡単なスナックや飲み物でアフターパーティー。お客様と出演者で和やかに楽しみましょう。また、マケドニア等のワインの即売会も併設、簡単な試飲も可能です。オペラ歌手の歌に馴染みのない方も、この機会にぜひ試しにいらっしゃいませんか?
プログラム
1. 石橋恵美
歌曲「セレナーデ」 R.シュトラウス
…音楽史上には有名な「シュトラウス」は二人。リヒャルト・シュトラウスはオペラ等の他に、多くの声とピアノのための歌曲を作曲。セレナーデとは、夜に屋外の男性が屋内の女性に歌う恋歌のジャンル。この曲では、まず男性が囁くように庭へと恋人を誘い、そして月光のもと、木の陰でナイチンゲールやバラに囲まれる抱擁の喜びが歌い上げられる。今回のように、女声によってもしばしば歌われる作品。
2. 原 芽衣
オペラ「こうもり」より
アリア「田舎娘を演じる時は」 J.シュトラウス
…いわゆる「オペレッタ」と呼ばれる、19世紀後半のウィーン等で人気のあった、貴族やブルジョアの人情味と舞踏場面等が魅力のジャンル。「こうもり」はその代表作。このアリアは、女優として一旗挙げたい女中業のアデーレが、自分の魅力と才能をアピールする名場面。田舎の純朴な娘、尊大な女王、そして若い貴族に言い寄られる奥方を演じていくのが楽しいアリア。
3. 菅沼千尋
オペラ「シャモニーのリンダ」より
アリア「私の心の光」 ドニゼッティ
…19前半に活躍したイタリアのオペラ作曲家ドニゼッティの作品。パリから離れた山あいの寒村の娘リンダは貧しい若者と恋をしている。彼との約束の場所に着くのが遅れた彼女は、彼の置いていった花を見つけ、うっとりの幸せな未来を想像したのち、溌剌としたアリアを歌う。
さて、紆余曲折の物語の結末は、実は若者は貴族で、いったんは彼女も彼の愛を誤解したものの、めでたく二人は結ばれる。
4. 伊藤いずみ
オペラ「ジャンニ・スキッキ」より
アリア「私のお父さん」 プッチーニ
…19世紀末から20世紀初頭に活躍したイタリアのオペラ作曲家プッチーニの唯一の喜劇オペラ。舞台は13世紀末の栄えているフィレンツェ。当時、財産の相続の仕方が変わりつつある時代だった。ある金持ちが死亡し、その財産を教会に全額寄付する羽目になることを避けたい遺族たちが、ずる賢いスキッキの知恵に縋ろうとするも、かえってスキッキにごっそりもっていかれるというお話。
この有名なアリアは、オペラの本筋とは少し離れ、スキッキの娘ラウレッタが愛する若者との結婚の許しを父に願うもの。騒々しい場面に挿入される美しいメロディーで大変有名。その調べはフィレンツェを流れるアルノ川を思わせる。
5. 小鉄和広
オペラ「魔笛」より
アリア「この聖なる殿堂で」 モーツァルト
…18世紀後半のみならずクラシック音楽全体を代表する作曲家モーツァルトのオペラ。当時格の高いとされたイタリア語ではなく、ドイツ語により、また、曲間に歌ではなく話される場面を持つジングシュピールという形式。メルヒェンのようにも受け取れるが、秘教的な内容が見え隠れしている。小鉄の見解では、啓蒙主義による人間の完成を目指し、それを抑えようとするキリスト教会勢力の打倒を描く内容である。
徳高いザラストロは軟禁しているパミーナ姫が自分の暗殺を企てたことを知るが、それを赦す。パミーナの抑圧的な母・夜の女王が、ザラストロを憎み、娘パミーナを脅していたことをザラストロは見抜いていた。彼は、この世界では復讐や憎しみは存在しない、我々は友愛により結ばれ、共により高き世界を目指すのだとパミーナを諭す。
6. 石橋恵美
オペラ「魔笛」より
アリア「消えたしまった愛の幸せ」 モーツァルト
…パミーナは、恋するタミーノが教団(フリーメーソンを思わせる)の「沈黙の儀式」の最中であることを知らず、自分に対して口を開こうとしない彼に対し絶望する。
7. 原 芽衣
歌曲「日記帳」 小林秀雄
…小林秀雄は2017年に没した作曲家で、同姓同名の批評家とは別人。パリに留学。この曲もシャンソンの雰囲気を持つ。浮き立つような三拍子で、少年の初恋が語られる。
8.菅沼・小鉄
オペラ「ドン・ジョヴァンニ」より
二重唱「手を取り合って」 モーツァルト
…ドン・ジョヴァンニは伝説上の人物・神をも恐れぬスペインの放蕩貴族。スペイン語発音ではドン・フアン。村の結婚式に通りがかったジョヴァンニは新婦ツェルーナと一瞬で恋に落ちる。この曲前半では「君の人生を変えてあげよう」というジョヴァンニに対し、あまりの幸運にためらうツェルーナであるが、しばらくして「行きましょう」と答え、二人は「無垢の愛」の喜びへの期待に胸を膨らませ、軽やかに声を合わせる。
9. 伊藤いずみ
オペラ「ラ•ボエーム」より
アリア「私が一人で路を歩くと」 プッチーニ
…作曲された時代より70年前、フランスの7月革命の頃のパリが舞台の青春群像物語。このアリアは「ムゼッタのワルツ」として知られている。
クリスマス・イブの混雑するカフェにパトロンと入ってきたムゼッタは、店内に友人らと座っているかつての恋人を発見する。自分の方を見ようともしない彼への当てつけに、このアリアを歌い出す。「私が一人でいると街の男たちが私の体を皆見つめる。私はその欲望の渦中でシアワセを感じるのよ」とスキャンダラスな内容を語り、しまいには「今のあなたも死にそうな思いでしょう!」とかつての恋人に言い放つ。
出演
ソプラノ 伊藤いずみ 石橋恵美 菅沼千尋 原 芽衣
バス・司会 小鉄和広
ピアノ 金澤亜希子
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