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頭金無しで世田谷にマンションを買ってみる。第4章~住宅ローンの迷宮

住宅ローンという迷宮

 金融業の端くれを生業とする私からしても、住宅ローンは不動産業界に次いで独特の世界が出来上がっているな、という印象でした。ましてや普段から金利や保険や契約手続きに慣れない方が自分で手続きをやろうとすると非常に苦労するだろうなと思い、今回noteにまとめるきっかけにもなりました。

 スマホで書類提出が完結する銀行もありますが、多くは未だに紙の申込書や本人確認書類を提出する必要があり、スキャン機能が付いたプリンターが活躍しました。プリンターをお持ちでない方は、コンビニなどで購入契約書や本人確認書類をある程度まとめてコピーしておくと良いかもしれません。

何を基準に銀行を選ぶか?

 金利が低いに越したことはありませんが、個人的には団信(団体信用生命保険)を基準にしてみると各銀行の差が見えてきます。私が基準した団信の保障内容は「がん保障50%」が無料で付くかどうかです。これは簡単に言えば、がんと診断されるとローン残高の50%が免除、さらに金利を0.1~0.2%上乗せすると、100%免除という保障内容です。低金利で人気の住信SBIネット銀行の団信は、所定の疾病で入院180日以上や就業不能が180日以上などの条件でローン残高の免除がありますが、これは実際にはかなり高いハードルということが想像できます。一方で初期段階でもがんと診断される可能性は、想像したくありませんが十分あり得る気がします。もちろんしっかり治療をして完治してもローン残高は免除されたままです(保険会社が銀行に保険金としてローン残高を一括で支払ってくれます)。なかなかがんと診断されただけで1000万単位の保険金が出る商品はありませんが、住宅ローンならではの保障内容といえます。

 少し情報が古いところもあるかもしれませんが、比較サイトなどで事前に情報を集めてみると、各銀行の特徴が掴めて来ると思います。

変動金利か固定金利か

 住宅ローンの金利の種類ってたくさんあってよくわからないですよね。私も最初はそうでした。ただ、私の担当してくれた不動産会社の人曰く、いまは変動金利一択だそうです。それを解説しているYouTubeチャンネルなんかを紹介してくれて、自分なりに納得しました。理由を簡単に説明すると、
1)日本の景気を過去と将来10年スパンで見て、金利を上げられる状況にない →納得 
2)金利が低いうちに借入元本を早く減らすと将来の金利負担が軽くなる →納得
ということで、変動金利を前提に各銀行の条件を確認しました。

変動金利とは

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 変動金利とは、基準となる金利(一般的には短期プライムレート)が上がれば住宅ローン金利も上がり、下がれば下がるというもの。この短期プライムレートとは銀行が企業に貸付けるときにも基準となることがあり、主に1年以内の短期資金の金利の目安になることが多いです。ここ10年以上は短期プライムレートは1.475%で変わっていませんが、一応変動するものです。住宅ローンの基準となる店頭金利は、メガバンクは2.475%であることが多く、そこから1.90%優遇というわかりにくい表示となっています。優遇幅は変わりなく、基準金利が2.575%となれば出来上がりの金利が0.1%上がって0.675%となって変動することになります。
 つまり住宅ローンの変動金利をかなり一般化して説明すると、1年ローンを35回(35年)繰り返して、その都度そのときの金利を適用する(=変動する)契約内容と言えます。その応用版として当初10年固定、以降変動金利という住宅ローンもありますが、最初の10年は金利を見直さない、11年目からそのときの金利を適用するという条件となります。

実際に住宅ローンに申込んだ結果

 意識して街中を歩いてみると、意外と住宅ローンの広告って多いんです。Googleさんの高性能なAIは完全に私もターゲットにネットのリスティング広告に住宅ローンの情報を未だにバンバン出してきます。

 私は団信が充実しているネット系の銀行を中心に最終的に12行に申込みをしました。就活と同じで、最終的に本命のひとつが通れば良いのですが、申込みから結果の連絡が早く、条件が最も良かったソニー銀行で本審査が通過しました。

モゲチェック経由の事前審査
ペアローン:auじぶん銀行、イオン銀行、静岡銀行 →否決
単独審査:常陽銀行、八十二銀行、りそな銀行 →可決

自分で申込み(事前審査)
可決:ソニー銀行、ジャパンネット銀行、楽天銀行、三井住友銀行、auじぶん銀行(ただし減額)
否決:イオン銀行、住信SBIネット銀行、三菱UFJ銀行

本審査
可決:ソニー銀行
否決:ジャパンネット銀行
審査取り下げ:新生銀行、楽天銀行

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銀行ごとの印象

 不動産会社経由の事前審査は「モゲチェック」という一斉審査のサイト経由か、地銀は紙の申込書にハンコを押して提出する形式でした。自分で申し込んだネット系の銀行は最初は人間を介さず、ネット申込みとメール連絡で済みます。

メガバンク・地方銀行

 みずほ銀行は学生時代からメイン口座として、社会人になってからも給与口座として長年使っていて、店舗に来店予約をして相談するも実質的に門前払い。理由は、頭金をとりあえず50万円+諸費用を借りようとすると優遇金利が適用されないとのこと。物件部分のみでさらに頭金20%近く入れないと0.5%台は難しいとのこと。三菱UFJ銀行は事前審査で否決、三井住友銀行は事前審査は通過したものの、やはり頭金がないことがネックとなり、優遇金利が最大限適用されないとのことでした。メガバンクでは唯一口座を持っていない三井住友銀行のみが電話をしてきてくれて、親身になって相談にのってくれました。住宅ローンでの顧客に対する対応ひとつで、メガバンクの今後の行く末がなんとなく見えた気がします。

 メガバンク以外ではりそな銀行が非常に丁寧に対応してくれて、とても好印象でした。最終的には頭金や諸費用の点で最大の金利優遇幅が出せないためお断りしましたが、住宅ローンを取りたいという意思が明確に感じられて大きな銀行なのに、しっかりと顧客の方を向いた良い意味で庶民的な銀行だと感じました。

 常陽銀行八十二銀行は諸費用とリフォーム費用も含めて仮審査通過ということでしたが、保証会社が付いていることからやはり金利面で劣るためお断りしました。どちらも茨城と長野を地盤とする地銀ですが、首都圏の顧客を取り込まないと営業面で厳しいんでしょうね。不動産価格以上のオーバーローンにも積極的に応じてくれる印象です。多少金利が高くても審査が緩いところを希望される方は、不動産会社から地銀を紹介してもらうと良いかもしれません。

 参考までに新生銀行はメガでも地銀でもない旧長銀を母体とする普通銀行ですが、個人的な印象としては一番怪しい(不安を感じさせるという意味で)銀行です。一時期はATMの引き出しを無料にしたり振込手数料も無料化するなど個人向けにサービスを拡充していましたが、近年は改悪が進んでおり、私も貯蓄用に持っていた口座を解約してソニー銀行に乗り換えたほど安定感のない銀行です。住宅ローンの手続きに関してもネットでほとんどが完結するものの、生身の人間からの対応がなく、審査取下げの申し出をマイページからした直後にマイページが削除されて使えなくなるなど、いろいろと不信感を煽る感じなので、積極的に利用する必要はないと思います。

ネット系銀行

 auじぶん銀行は審査が厳しいとのことですが、金利と団信の条件はトップクラスだと思います。申込みもネット経由+郵送で結果連絡という形式で簡単かつ安心感があり好感が持てました。

 イオン銀行は事前審査で否決となったため本審査の手続きはわかりませんが、消費者向けの銀行として住宅ローンに力を入れているという印象です。

 住信SBIネット銀行はサブ口座として普段からよく利用しており、急速に住宅ローンの残高を増やしていていま最も勢いのあるネット系銀行のひとつです。ユーザーファーストな仕様で気にっているのですが、今回はマネープラザ経由の事前申込で残念ながら否決となってしまいました。低金利な分、口座を持っているユーザーでも厳しくみているのだと思います。

 ジャパンネット銀行もYahoo系の銀行として住宅ローンの取扱いを開始して残高を伸ばしているようですが、事前のAI審査を一瞬で通過し、専用フォームから本審査を申込んだところ一瞬で否決の連絡が来ました。事前審査って一体・・・とは思ったものの、良くも悪くも淡白な銀行だと思います。

 楽天銀行は途中で取り下げたのですが、何もかもが中途半端な銀行という印象で不安になりました。事前審査の回答は早く、すぐに郵送で本審査の申込みが届いたのですが、複合機でカラーコピーしたような申込用紙にハンコだけ押すようになっていて、やたらと提出書類が多かった印象です。適用金利もコミットされず、団信も可もなく不可もなくで完全な滑り止め銀行です。

 今回本審査が通過したソニー銀行は元々貯蓄用に口座を持っていて、金利と団信の充実具合が良いことから軽い気持ちで申込みをしてみたのですが、結果的に最良の条件かつ一番ストレスなくスムーズに契約まで至ることができました。事前審査はAIによる自動審査で回答が早く、郵送での提出書類も最低限で、ページ漏れ部分もメール提出による補完で対応するなど、合理的でユーザーファーストな印象です。専用サイトの手続き進捗具合も直感的でわかりやすいところなど、さすがソニーのUIだと思います。

頭金無しで住宅ローンを組むには

 諸費用も含めて住宅ローンを組むには、断然ネット系銀行がお得です。次に地方銀行。メガバンクは従前通り「頭金2割」というのが最優遇金利を引き出す条件のようです。ただし、借入できる金額は銀行ごとに基準が違うので、こればかりは数を打つしかないかなと思います。通常は年収の6倍が目安となり、それ以上は銀行ごとの判断になりそうです。

 私の場合は年収600万円に対して、借入希望額4100万円と約7倍となることから否決となったイオン銀行と住信SBIネット銀行は6倍を基準にしていると考えられます。auじぶん銀行は4100万円の申込みに対して、3600万円でOKが出たので確実に基準6倍です。おそらく8倍ぐらいまで許容しているのがソニー銀行と楽天銀行です。ただし、これらも個々人の属性(年齢や勤務先)と信用情報によるところが大きいので、ひとつの目安として参考にしてみてください。

さて、最終章では物件探しから購入決定、住宅ローンの手続きの総括を、実際の条件や数字を示しながらまとめたいと思います。

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