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企業紹介 |内田洋行『ICT・教育業界の注目銘柄』

こんにちは、東京経済です。

今回は、教育業界やオフィス家具市場において名高い「株式会社内田洋行」について報告します。


【8057】内田洋行 -2024年7月期決算-

2024年9月21時点の株価(TradingViewから)

Chapter1 はじめに

 今回、株式会社内田洋行について報告する。同社は、教育市場やオフィス市場におけるICTシステムの構築・販売を行う企業であり、公共関連事業、オフィス関連事業、情報関連事業を展開している。また、少子化に伴う教育市場の変化に対応し、DX(デジタルトランスフォーメーション)推進を重要な課題として取り組んでいる。
 今回の財務分析は、同社が今後どのように成長するかの示唆を得ることを目的とする。以下、2章は企業概要、3章は財務諸表の分析、4章は財務比率の分析、5章で本稿のまとめについて述べる。

Chapert2 企業概要


本社ビル(著者撮影)


 株式会社内田洋行は、1910年に旧満州大連市において測量製図器械や事務用品の販売を開始した企業である。1941年に東京及び大阪にて組織整備を行い、現在の企業体制の基礎が築かれた。

 1950年に東京内田洋行と大阪内田洋行が合併し、全国展開を進めるとともに、1962年には電子計算機事業を開始し、ICT分野にも進出している。その後、海外展開を含めた事業拡大を積極的に進めている。また、同社は「人間の創造性発揮のための環境づくりを通して、豊かな社会の実現に貢献する」という企業理念を掲げている。情報の価値を高め、知の協創をデザインし、顧客の成長を支援することを使命としている。

 企業の目指す方向性としては、少子化やデジタル社会の変革に対応し、官民双方でのDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進を通じて、持続可能な成長を実現することにある。特にICT基盤の強化を図りながら、グループ全体のリソースを最大限に活用することで、競争力のさらなる強化を目指している。

Chapter3 財務諸表の分析

貸借対照表の分析

出典:著者作成モデル

 資産の部では、流動資産が大きな割合を占めており、FY2024/7では現金及び預金が約29,300百万円、売掛金等が約55,100百万円である。前年同期比で現金は約3.9%、売掛金は約19.1%増加しており、これにより流動資産全体が増加し、短期的な支払い能力が向上していると考えられる。固定資産については、FY2023/7の約26,500百万円からFY2024/7では約26,300百万円とわずかに減少しており、減価償却や資産売却が影響していると見られる。

 負債の部では、FY2024/7の流動負債が約38,000百万円であり、前年の約35,000百万円から増加している。これは短期借入金の増加が主な要因である。固定負債はほぼ横ばいで約20,000百万円を維持しており、負債全体では増加傾向にある。これにより、同社は成長に伴い運転資金や投資資金の調達を進めているものの、負債依存がやや強まっていることが伺える。この分析から、内田洋行は資産全体の増加と負債の増加がバランスしながら、成長を目指していることが見て取れる。

損益計算書の分析

出典:著者作成モデル

 2022年7月期の売上高は221,856百万円であり、前年から23.77%減少している。一方、2023年7月期の売上高は246,549百万円となり、前年から11.13%増加している。売上高の回復は顕著であり、企業が前年の減少から順調に業績を回復させたことがうかがえる。

 売上原価も2022年7月期の179,207百万円から、2023年7月期には201,943百万円に増加している。売上高の増加に伴い原価も増加しているが、利益率の維持にはさらなるコスト管理の強化が求められる。

 営業利益については、2022年7月期に7,890百万円であり、2023年7月期には8,436百万円に増加している。前年から6.92%の増加であり、この営業利益の回復は、企業の業績改善を反映している。売上高の回復が効率的に営業利益に結びついていることを示している。

キャッシュフロー計算書の分析

出典:著者作成モデル

 2022年7月期のキャッシュフロー総額は-1,043百万円であり、これはマイナスのキャッシュフローとなっている。この結果は、営業活動によるキャッシュフローの減少や、投資活動・財務活動の資金流出が大きかったことが要因であると考えられる。一方で、2023年7月期にはキャッシュフロー総額が10,025百万円と大幅に改善している。この増加は、営業活動からのキャッシュフローがプラスに転じたこと、または投資活動や財務活動による支出が減少したことによるものと見られる。

 この2年間を比較すると、2023年7月期における資金繰りの大幅な改善が顕著であり、企業のキャッシュマネジメントの改善がみられる。また、営業利益の増加と並行してキャッシュフローの回復が確認されており、今後の事業活動においてさらなる成長の可能性がうかがえる。

Chapter4 財務比率の分析

成長性の分析

出典:各社決算短信

 ROA(総資産利益率)を見ると、内田洋行は2024年7月期に12.05%を記録しており、競合他社である大塚商会(14.32%)、コクヨ(7.79%)、オカムラ(12.55%)と比較して、やや平均的な水準である。売上高EBIT比率および総資産回転率の観点では、内田洋行の効率的な資産運用が示されており、特に総資産回転率が利益創出に寄与している。

 一方、ROE(自己資本利益率)に関しても、内田洋行は12.05%であり、競合とほぼ同水準である。売上高当期純利益率、総資産回転率、財務レバレッジを構成要素として見た場合、内田洋行は安定した利益率と適切なレバレッジ管理により、競合に対して遜色のない成果を上げている。
 全体として、内田洋行は競合他社に比べ、資本効率および資産効率ともに堅調な運営を行っていると考えられる。

効率性の分析

出典:各社決算短信

 総資産回転率を見ると、大塚商会は1.8回と最も高く、内田洋行(1.25回)、競合するコクヨ(0.94回)やオカムラ(1.12回)と比べて大塚商会の資産効率が非常に高いことがわかる。

 売上債権回転日数では、大塚商会は1.73日と回転が早く、コクヨ(0.91日)、オカムラ(1.09日)に対しても優れている。棚卸資産回転日数は大塚商会が57.45日で、コクヨ(76.36日)、オカムラ(94.83日)と比較して資産効率が良好であることが確認できる。
 買入債務回転日数については、大塚商会が15.51日で、コクヨ(44.26日)、オカムラ(26.01日)よりも短い期間で支払いを行っていることがわかる。

安全性の分析

出典:各社決算短信

 内田洋行の自己資本比率は42.6%であり、これは大塚商会(61.07%)、コクヨ(70.27%)、オカムラ(61.09%)と比較して低い数値となっている。自己資本比率が低いということは、企業の資本構成が他社と比べて脆弱であり、外部からの資金に対する依存度が高い可能性が示唆される。

 さらに、インタレスト・カバレッジ・レシオに関しては、内田洋行は157.72倍であり、オカムラ(157.59倍)とほぼ同水準であるものの、大塚商会(1536.02倍)には及ばない。これは、大塚商会がより多くの利息支払い余力を持っていることを示しているが、内田洋行も十分なキャッシュフローを確保しており、利息負担に対する余裕があることがうかがえる。

 全体として、内田洋行は自己資本比率では競合に劣るものの、負債比率やインタレスト・カバレッジ・レシオから見ると、慎重かつ安定した財務運営が行われていることが確認できる。

成長性の分析

出典:各社決算短信

 内田洋行の増収率と当期利益増益率は、他社と比較して大きな変動が見られる。特に、内田洋行の2期前の増収率88.54%と当期利益増益率44.51%は、他社を大きく上回っている。一方、コクヨは2期前に減収・減益(増収率-5.11%、増益率7.53%)しており、業績に課題が見られる。内田洋行の増益率に関しても、1期前は76.5%の増加を記録しており、これは他社の大塚商会(-9.63%)、コクヨ(-45.78%)に比べて圧倒的に高い数値である。

 総じて、内田洋行は他社に比べて成長が顕著であり、増収・増益ともに大きな進展を遂げている。しかし、競合に比べると増収率や増益率の変動が大きく、安定性という観点ではさらなる改善の余地があると考えられる。

Chapter5 終わりに

 内田洋行は、教育市場やオフィス市場におけるICTシステムの構築・販売を主力とし、少子化やデジタル社会の変革に対応してDXを推進している。財務面では、流動資産と負債が増加しつつも、資産運用の効率化が図られ、成長を続けている。売上高は前年から回復し、営業利益も増加しており、キャッシュフローの改善も顕著である。

 一方で、自己資本比率が競合他社に比べて低いことから、資本構成の強化が課題である。全体として、内田洋行は持続可能な成長を目指しつつも、安定性と成長性のバランスを取るためのさらなる改善が期待される。



以上!!
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