山の神
1月17日は「山の神」の日です。
林業や製材業など、山から恵みを受けて仕事をする人が、山に感謝し、1年の安全を願う日です。
この記事では、私たちの業界のお正月ともいえる「山の神」を紹介します。
「山の神」@東京チェンソーズ社有林(9:00am)
2014年に購入した社有林。その一角に設置された石づくりの祠が東京チェンソーズの「山の神」です。
「山の神」は山で働く人が山に祀った”神様”にこれまで1年間無事に仕事できたことを感謝し、また、これから始まる新たな1年の安全を願う、山に暮らす人たちに古くから続く行事です。
山を大切にするという気持ちも込められています。
檜原村では現在は毎年1月17日に行なわれていますが、かつては毎月17日に行なわれていたそうで、その日は棟梁が、働く人たちにお餅を配って回ったという記録もあります。
昔は土日祝日なく仕事していたので、月に1度くらいは休もう、という意味合いもあったようです。
また、日程も全国的に決まってるものではなく、年末に大きく行なうところもあれば、夏に行なうところもあるといったふうで、地域性のある行事でした。
社有林では、しめ縄と紙垂(しで)を垂らし、榊と塩、米、水、お酒、そして鉈を奉納した祠の前で、代表・青木亮輔が社員・スタッフに今年1年の安全を誓いました。
「各人がしっかり仕事することで、森も街も良くなる。そのためにも怪我なく1年を過ごせるようにしたいと思います」(青木)。
続いて全員で参拝。供えたお神酒をいただきました。
これで社有林の「山の神」は終了。
この後、毎年恒例の集合写真を撮影し、クルマに乗り合わせ、大嶽神社へ。
「山の神」@大嶽神社(10:00am)
檜原村を象徴する山・大岳山(標高1,266m)は片方の肩が上がった特徴的な山容で、江戸時代には江戸湾の漁師の目印になっていたという山です。
今もその独特な形は遠くからもはっきり分かり、遠方からの帰りに、奥多摩街道や五日市街道を通ると、なぜか道のど真ん中、進む方向にその山が見えていたりします。
大岳山は古くから山岳信仰の対象にもなっていた山で、山頂近くにはオオカミを守護神とする大嶽神社(奥宮)が建っています。
(私たちが向かったのは、この奥宮ではなく、山麓の集落にある里宮です)
オオカミは山に暮らす者だけが実際に目にすることができた動物で、檜原村では「オイヌサマ」と称して崇めてきました。
山の幸の恩恵に浴すると同時に山の恐ろしさを身を染みて感じてきた檜原のような山村ならではの信仰の姿といわれています。
現在も大嶽神社のオイヌサマのお札は害獣除け、盗難除けのご利益があるとして、戸口に貼り付けている家をよく見かけます。
また、オオカミを「大神」と書き、山の神とする伝承も残っています。
弊社では創業以来、この大嶽神社で「山の神」を行ってきました。
今回は弊社も所属する檜原村木材産業協同組合が主催となり、林業・製材業のほか、組合に所属し、檜原村の木材を扱う会社も含めおよそ40名が参加しました。
普段、同じ檜原村の山や、木材を通じて共に仕事をしている仲間ですが、一同に会するのはこの「山の神」が唯一の貴重な機会となっています。
大嶽神社では宮司さんのお祓いを受け、お守りをいただきました。
新年会@橋本旅館(11:30am)
神社での安全祈願を済ませたあとはお待ちかね(?)、新年会です。創業からしばらくは代表・青木の自宅で開くことが多かったですが、昨年からは村内・本宿にある橋本旅館を会場に行なっています。
大広間に集まった30名が、会社の垣根を超えて思い思いに飲み、語り合います。
初めに行なった神社での安全祈願も大事ですが、こうした仲間間での親睦を深めることも重要なことなのかなと思っています。
「今年もご安全に!」
本文で触れた1月17日の「山の神」のほかに、新しい現場(山)に入る日、大き目の木を「山の神」に見立て、カップのお酒を備えて、そこで安全を祈願していたことがありました。
作法は簡単なものでしたが、その現場に入るメンバーひとりひとりが静かに考える、とてもいい時間だったと思います。
ひと呼吸置く、そんな感じかもしれません。
最後にまったく余談ですが、現場で「山の神」をやっていた頃、供えるカップ酒は地元の「喜正」が基本でしたが、どこか出かけた際、ご当地のカップ酒をそれ用に買ってくるのがささやかな趣味となっていました 笑