忘れられない春の記憶
朝、目を覚ますとうぐいすが鳴いていた。
冬の寒さも和らいで、春を肌で感じることが増えてきてた今日この頃。
4月に入り、外を歩くとスーツを着た人をみる機会が増えたように感じる。どこかフワフワしていて、宙に浮いてしまいそうな危うさを持った、初々しさ。
そんな彼ら彼女らを目にして、初めて東京に来た記憶が蘇る。
11年前、地方の田舎から期待とワクワクだけを胸いっぱいに詰め込み、新幹線に乗り東京へ向かう風景。
当時、高校を卒業したばかりの私たちは東京へ旅立つ人を駅で見送ることが流行っていて、その時も12人くらい駅に来てくれた。
その時は不安なんてひとつもなく、これから始まる東京での新生活にただワクワクと胸を躍らせて、電車の中で移り変わる景色を楽しんでいた。
初めての寮生活
高校を卒業して、働き始めたわたしが最初のすみかとして選んだのが、会社の寮だった。寮のルールとして住めるのは3年まで。で、それを超えると出ていく必要があったので、最初の仮住まいとしては最適だと考えそこへ住むことに。
寮には同期もたくさんいて、早速グループラインを作って写真を撮り、これから始まる社会人生活を今か今かと待ちわびていた。
社会人デビュー
それから、千葉のパスタ屋さんへ配属が伝えられた。場所はディズニーランド近くの駅で、会社終わりに夢の国に遊びに行ける!と胸が躍った。
元気な挨拶で迎えた初日。
「よろしくお願いします!」
優しい感じの主婦さんとフリーターの方に自己紹介をして、まずはキッチンの仕事を覚えるため、パスタの上にかけるトッピングを勉強した。
最初は少しでも覚えられることに楽しさを感じて、家に帰ってからも同期たちが愚痴やらを話す中で、一人レシピを覚えるため分厚い広辞苑くらいのレシピ本を読み漁るほど、意気込みは増していた。
スランプ時期
すべて順調!と思われていたけれども、
ここからうまくいかない時期に突入。
頑張ろうとしても、空回りしてうまくいかない。
3か月が経過して仕事も慣れてきたはずなのに、
逆にできなくなっている気がして、自信が減っていくように感じる日々。
思い切って同期に打ち明けてみると、意外と同じように悩んでいる子たちが多く、自分だけじゃないんだと安心した。
自分と同じ悩みを抱えている人がいると思えると、わたしだけじゃないと励みになる。
***
最初の頃は少し間違ってても、周りの人が優しくフォローをしてくれる。
それが、時間が経つにつれてできるようになるのは当たり前のこと。少しでもミスしようものなら、大げさに指摘される。
これが、社会の洗礼。働くことの厳しさを感じた。
ららぽーとに異動
そこから1年務め、場所も、人も、作る料理も、すべてが新しい2度目の新天地で働くことに。
はじめて働いた場所を離れることは少し心細かったけれども、新しい場所でも挑戦してみたい思いもあって、割とすんなり受け入れられた。
環境で変わる
新しく上司になる人は元々わたしの同期と一緒に働いていて、その子が異動することになり後任で入ることになったそう。
怖い上司だと聞いていたので少し不安になりながらも挨拶をしてみると、優しく色々気にかけてくれた。作る料理もパスタから長崎ちゃんぽんになり、似ているところもあってかスムーズに仕事を覚えることができた。
初めて自分の経験が繋がったと感じて、仕事が徐々に楽しくなっていった。
この時、輝ける場所や環境があることを知る。
新社会人として働くあなたへ
春は出会いと別れの季節。今までの場所を飛び出して、新しい環境に身を置おいて、楽しみと不安を感じながらも挑戦する時期。
なかなか上手くいかないことや、辛いと感じる時もあるかもしれない。
けれども、諦めずに続けると、どこかでやってきた経験や知識が生きる時が必ず来る。
辛くてしんどい時も乗り越えられると信じて前を向きたいし、そうやって東京で粘り強く生きていきたい。
written by みんちゃん