「短編コント」 龍と虎 (侏儒ものがたり)
〈 古来日本ばかりでなく中国やアジアでは、龍と虎は強大な力と才能豊かな器量をあわせ持つ人物にたとえて描かれてきた。龍は意味あい的にはちがうけれど、西洋では翻訳上ドラゴンと訳され、虎はマレー語でハリマオと呼ばれた。〉
ここ禅寺で有名な文学院では次の代を誰に継がせようかと、夏目和尚は思いあぐねていた
そこで弟子の者の中から3人、茶川、菊珍、ふぉーを呼んで力量を試してみようと思った
和尚が、3人を前に座らせていった
「むかしから狂暴とも思われている龍と虎は、戦国武将や禅僧たちからいろんな思いで取りあげられてきた、もしお前たちが生まれ変われたら、どちらになりたいと思うかな」
「わたしは先人の教えを学んで深く文献を読みつくし、あたかも雲立つなかを登りあがっていく龍になりたく思います」と、茶川はいった
「ぼくはむしろ現実の庶民の中で生活するような知恵をつけ、それでいて人びとに大いなる風を呼び起こさせる虎になりたいですね」とは、茶川と性格の違う菊珍の言葉だった
それから、ひとり最後に残ったふぉー、何を思ったのか、スッと立ちあがって、ああ怖と言って、この場からスタこらさっさと出ていった
そんな、ふぉーの後ろ姿を見ながら、おもわず和尚はつぶやいていた
「ふふふっ、あいつ、なかなかやりよるわい」