「短編コント」 古今東光、悪名もかたなし
1.
人の一生は、重き荷を負うて遠き道を行くが如し、とは徳川家康の言葉
でも女の一生は、一張羅のドレス着て、泥道を歩くがごとし、とも言われた
たとえば、ぬかるんだ泥道を若い女性が素敵なドレスを着て、泥がハネてこないように注意して歩いています
そこへ自転車が通りがかって、彼女のドレスに飛び散りました
チョッピン
「ほんとに、もう」 イライラ
またそこに、乗用車が通って、彼女のドレスに
ダバァ
「ああ、最悪」 顔の眉間がピクピク
おまけにダンプカーもやって来て、おかまいなく彼女のドレス全体に
ザブーン
さてみなさん、今度は彼女、どうしたと思われますか
全身に、サアーッといっしゅん血のケが引いたというか、開け直ったというか、無になったというか
何を思ったのか若い彼女、上品な靴も投げとばし、裸足になって、ドレスもめくり上げ、泥道を大股で歩いて行きました
それを見ていた、ふたりの親子連れ
お母さんが、そばにいた娘にこう言いました
見てごらん、女の一生はアレによく似ているのよ、あーなっちゃだめよ
こんなではないけど、とかく
最初の頃、何かいうと、信じられないとか、最低なんか言っていたのに、ある時から急に何があったのか、何を言ってもトーンが変わってみたいにバカみたいなんて、何ごとも興ざめしたような態度
どうなんだろうな、
政治討論で、みんなが口角、泡を飛ばしているなんて、バカみたいと思っているんだろうか
女っていうものはそういうモンだ
文壇で悪名を轟かしていた古今東光、
ここでも、女関係にも造詣が深い作家ならではの言葉でもあった
でも女には良いところがあるとも言ってました
(なぜか弁解してしまう、気くばりな日本人のボク)
2.
話は変わって
そんな古今東光を日頃から、生意気なやつだ、態度がでかいと思っていた、評論家の小宅壮一
カレは「一億総評論家」、「男の顔は履歴書」のコピーで名を売っていて、前から一度、奴をへこませてやりたいと思っていた
そんなある日、古今東光と小宅壮一はある都市の講演会に頼まれて、ゲストとして参加することになった
その前日の夜のことだった
古今東光が部屋で一服してのんびりしていたら、急に障子がガラッと開いて、小宅壮一が突っ立っていた
しばらくコチラをじっと見つめていたかと思うと、バタンと障子を閉めて行った
「いったい、なんだ」
またしばらくして、フトンでも敷いて寝ようかなと思っていたら、
ガラッと障子が開いて、小宅壮一が突っ立っている
そしてすぐバタンと閉めて、どこかへ行ってしまった
「なんだあいつ、しようがない奴だな」
ところが深夜、部屋が暗くなって、古今東光が眠っていたら、また小宅が部屋の障子をガラッと開けて、何かを確信したのか、バタンと閉めて離れていった
さすがに、古今東光もフトンから起きあがって、ため息をついた
「あの野郎、いったい何なんだ、どういう意味だ」
どうもあとになって古今サン、つくづく考えてみれば、オレが女を連れこんでいるのを見届けて、今後のためにも、弱点を握っておこうと思ったらしい
聞くところによると、小宅壮一は多分にそういうことがあるらしく
ある人が、小宅と一緒に温泉に入っていたら、いやにこちらのチンポコをジロジロ見ている
どうもおかしいと思ったら、あの男はどういう基準か知らないけど、アレを見て、マウントを取った気分になりたかったらしい
( 夕やけ小やけの小宅壮一のモデル、おおやそういち )
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