短編コント 松竹隆明伝聞 せきしてもひとり
就職前線で蹂躙される、人間の存在
社会集団の中で疎外される、個の悲劇
おおっ、いったいこの世にカミはないのか
「フコーか、でもきみのお尻はウオシュレット、ぴゅっぴゅっ」
うーん、イマイチだな
とトイレの中のナウイ重町
おもわずトイレットペーパーを口の中に入れムシャムシャ、うわっと、口からぺっぺ
それでもトイレを出たコピーライターのナウイ、
昨晩放送されたテレビドキュメンタリー番組で、松竹隆明と共演できたことはとても満足だった
若い頃、下っ端とはいえ左翼活動したことのあるナウイ
松竹隆明にさしでインタビューできたのも
コピーライターで名前を売ったおかげだな、
とても感慨深げだった
しばらくしてナウイは、雑誌記事のことで編集者となごやかに電話なんかしていた
「ハハハ、そうなんだよ、最近いいコピーができなくてね、ひとり家でとじこもりっきりだよ」
「咳しても一人、ですね」
「あっその句いいね、ソレ誰の」
「さあ、わかりません」
「じゃ調べといてよ」
調べといてよ、
と言われても、所変わってこちら雑誌編集部
うーむ、これって俳句みたいだけど、定型じゃないから、もしかして河東碧梧桐かな
ありったけの俳句の知識を広げて思い浮かべ、保守本流の高浜虚子と対決し、自由律俳句をめざした河東碧梧桐
でもそういう感じもしない
となりで電話の声が漏れ聞こえていた、新人の編集者
「先輩、もしかしてタネダヤマカシラビじゃないですか」
「ヤマカシラビ ? それ山頭火だろ、種田山頭火、毛沢東をケザワヒガシと言うようなもんだよ、まったく」
そこでいろいろ調べあげた結果、荻原井泉水のもとに山頭火と並びあっていた尾崎放哉の句とわかりました
noteにもたくさんの俳句愛好家のみなさんがいらっしゃるのに、雑誌編集者の無知に変わって、ここにおわびします
ごめんなさい