『ペコちゃん』 🍓 オレらの親分 7.
「鉄、いやに神妙に音楽を聴いてんじゃねえか」
「ええ、スマートフォンで、少しばかり聴いてるんすけど、こちらのタブレットで聴くよりも、気のせいか音がよく聞こえるんすよね」
「ほう、すごいじゃねえか。耳が肥えているんじゃないのか」
「そうかな、それほどでもないと思うんだけど」
「たとえばだな、テレビで映画を見た場合、こちらの映画の映像はいいのに、もういっぽうの映画の映りがよくない。どうしてだと思う」
「ちがうテレビで見てたんじゃないすか。だから映りが悪い。同じテレビだったら、映画そのものとかテレビ局の制作側の関係とか」
「あのな、専門家によると2つともよくなければ、テレビと映画そのものが、2つともよくないとだめらしい」
「そんなもんですかね」
「たとえば noteの記事、投稿している小説やエッセイに対する皆さんの思い、すごいだろ」
「よく兄貴、見てますよね。フォロワー数のすごい人がありますからね」
「オレたちを書いてくださっている栄太郎さんと、どこがちがうと思う」
「単なる力量の差なんじゃ、ないすか」
「それもあるけど、投稿者の小説やエッセイに書ける思い、それに noteを読んでくださっている皆さんヘの、感謝の気持ちがあるからこそ、皆さんがたに支持されているんじゃないのか。そう思うぞ、オレは。まあ、中にはひとつの記事も書いていないのに、何百かのフォロワーが付いているのもあるけどさ」
「栄太郎さんはノホホンとしてるからな。もう少しがんばってもらわないと、オレたちのことも埋没しちゃうよ。じっさいオレたちも市民の皆さんに愛されないといけないのに、迷惑かけていることがただ多過ぎて悪いイメージばかり、これじゃいけないんですよね兄貴」
「そうだな、これじゃいけないと思いながら、つい迷惑かけちゃって。バカやろ。
ところで話は変わるけどよ、駅の正面にペコちゃん人形で有名な不二家の店があるだろう。あそこでちょっと、コーヒーでも付きあってくんないか」
「えっ、なんで。別にオレがついて行かなくったって。あっそうか、好きな女性の店員がいるとか」
「そうじゃないんだよ。じつを言うとな、ちっちゃい頃あこがれて行くのが夢だったけど、ハードルが高くて行けなかったんだ。いまは金まわりもよくなって行けるけど、この顔だろう。恥ずかしくて、ひとりで行けないんだよ。ねえ、鉄ちゃん、一緒に行かない」
「いやですよ。恥ずかしい」