お久しぶりです
毎週書く事を自分に課しながら、前回の更新から2か月弱過ぎてしまいました…
10月は秋冬番茶のお手伝い。知人の工場に通っていました。
私が行っているのは碾茶、つまりは抹茶の原料となる物を作っている工場です。
碾茶は煎茶と製造工程が大きく異なります。言葉のみで説明は難しいので調べて頂ければと思いますが、様々な製法を経験出来るという事は自分が為す事へのフィードバックも多々有り中々面白いです。
秋冬番茶ですが、当苑は収穫しません。秋の整枝はしますがそのまま刈り落とします。収穫に対して、これを「畑に戻す、返す」なんて言ったりします。
聞く所に寄ると、伸びた枝葉を整枝しそのまま畑に落とすとそれなりの肥効が見込めるとの事。
収穫=持ち出しが多ければその分畑に返さなければならないのは道理かと思います。つまりは肥料を入れなければならない。
持ち込みを如何に少なくするか?という視点からは出来るだけ収穫せず伸ばしたりそのまま刈落とすのも一つの考えかと思います。
一方で、今現在最も需要が有るのは秋冬番茶ではなかろうか?と言うくらいに荒茶生産現場を支えているのは秋冬番です。
ペットボトル飲料茶の原料等で多大な需要が有るからです。
自分の経験では、卸先に寄っては一番茶よりも秋冬番茶が欲しい、秋冬番茶の取り引きの為にお付き合いで一番二番茶も多少買う、という所も有るくらいでした。
現場視点からの秋冬番茶ですが、まずもって量が多い。それはそうです。一番茶の様なミルい=未熟で小さな芽では無く、夏〜初秋にかけてしっかり成熟し伸びた枝葉を刈るからです。
一概に言えませんが、煎茶の場合大体通常の一番茶の2〜3倍の収量も珍しくはありません。
それを収穫するのは中々大変です。あまりに伸びていると茶刈機に上手く取り込めないケースもあります。枝が目立つので袋も破れたり、手刈りだと中々大変です。もちろん茶工場に運搬するのも一苦労。
ただ、葉焼けと言ったりしますが、ミルい芽は変質しない様に管理する気苦労が有りますが、秋番茶はその点は気楽です。良くも悪くも精神的には一番茶程の負担は無いと思います。
そんな思いをして収穫した生葉を製造するのも一苦労。秋冬番茶を上手く製造出来る人程良い茶師だと思います。
ある意味で勝手に拠れていく様なミルい芽に比べて、破砕しない様に上手く丸けたり畳んだり、という事に関して言えば秋番茶は結構難しい点が多いです。
秋番をガシガシ揉んでいる工場は上手な人が多いかもしれませんね。
具体的に何が難しいか。蒸し煎茶は熱風の風量×温度のバランスで乾かしていく訳です。風量が多すぎると上乾きと言って表面だけ乾いて中の水分(芯水と言います)が残ったまま。これが後の工程で悪さをします。
対して温度が高いと昨今ではとみに嫌われる水色の赤い、色が悪いお茶になります。ザックリ言うと、ですが。
上記のごとく、蒸し煎茶のキモと言えば風量と温度のバランスに有ると言えると思いますが(もちろん要素は他にも沢山あります)、秋冬番茶は特にシビアです。元々含んでいる水分量が少ない為、少し風量が多いと表面ばかりどんどん乾いてしまいます。
熱をどう使うか?ここに頭を使う訳です。これが中々難しく面白い。蒸し煎茶以外の製法に応用し易いのは、一番茶では無くむしろ秋冬番茶の様な気がします。
蒸し煎茶の主役は言うまでもなく一番茶。ですが形態にもよりますが茶業の経営の主軸はもはや秋冬番という所も多いかもしれません。
それをどう捉えるべきか。感情的な良し悪しはそれぞれ抱えているかと思いますが、実際の需要は時と共に変わります。供給側もそれに合わせていくだけ。それが嫌ならば需要を作り出さなければならないだろう。
そう考えています。
また、蒸し煎茶以外の製法では却って二茶以降のお茶の持ち味が評価される様になって来たと思います。
特に秋の芽が持つポテンシャルは、主に烏龍茶や紅茶の様な茶種では今後益々クローズアップされるのではないでしょうか。
これまで日本の茶業現場では少し低く見られてきた秋芽ですが、大きな可能性を秘めているのかもしれません。またこの後の冬場のお茶に関しても面白い考え方やそれに基づいたお茶が有ります。追々書いてみたいと思います。
私自身ももう少し夏から秋に掛けてのお茶を作っていきたいです。一番茶と違った難しい点も多いですがねぇ、病害虫の点や芽の具合とかで。少量試作すると面白い物出来たりしますが…
と言う訳で午前中工場の操業、午後は自園の管理作業等をしておりました。中々疲れました。直ぐ寝てしまう日々でした。noteを書く事をサボってしまいました。そして秋番が終わると同時にイベントの日々が…
ハイ、言い訳です。やっと落ち着いたので再びコンスタントに書いていきたいと思います。
今後もよろしくお願いします。