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【インド】待ちに待った仙人サドゥとの再会
さて、賢者ショビットがヒンディー語を駆使し、あらゆる角に立っている警察官に道を尋ねる質問を繰り返していく。
広過ぎて、かつ始まったばかりで、警察官も状況が分かっていない。ただ、インド人の特性で、「わからない」と言わない、言えない。「わからない」と言うくらいなら、真実ではないかもしれないが別のそれらしく聞こえる回答をする(日本人的にいうなら嘘をつく)。
特に警察官や軍人は責任が問われるのでその傾向が顕著(けんちょ)だ。
言葉が分からないので答える人の顔をじっと見ていると、目を若干逸らして答えてくる人は実は分かっていないんだろうなあ、という気がしなくもない。が、その見極めもなかなか難しい。結局、何人もに同じ質問をして、セカンドオピニオン、サードオピニオンを集めて総合的に判断していく。それで進んでも、曲がり角が来るたびにまた聞き直す。
賢者ショビットが何度も繰り返して質問していたのは、
「ナガサドゥたちのテントはどこにあるか?」
複数の答えを元に見当をつけ、その道すがらも同じ質問を繰り返しながら、広大な会場を少しずつ歩いて行く。
サドゥたちもヒマラヤから下りてプラヤグラージに入るとき、会場で自分たちのテントが分からずに何日もかかったりするらしい。
そうして2時間ほど歩き、とうとうナガサドゥたちのテントに辿り着いた。
ああ、懐かしい。6年前、クンブ・メーラの後半でバラナシに移動してきていたナガサドゥたちが、今まさにここにいる!(過去記事ご参照ください^^)。
ヒマラヤ山から久しぶりに下界にやって来た彼らとの邂逅は、その姿と佇(たたず)まいが相まって、何度でも超弩級の衝撃を受ける。
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見るからに身体性を束縛する修行をしているサドゥもいれば、神聖なマリーゴールドの花や菩提樹の実などでおしゃれに着飾っているサドゥ、テントの中心である囲炉裏をリンガで形作るだけではなく頭にまでリンガそのものを載せているサドゥ(リンガ=男性器と女性器を象(かたど)ったものを組み合わせたヒンドゥー教の象徴)、参拝者がたくさん集まり祝福を繰り返しているサドゥ、上機嫌で歌っているサドゥ、何もせずぼうっとしているサドゥ、昼寝しているサドゥ、いろんなサドゥがいる。
ずっと胸が高鳴って、サドゥたちから目が離せない。
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巨大テント村の中のナガサドゥエリアは、メイン道路にもテントを出しつつもそこから奥まった路地に大きく広がっており、それはさらなる迷路になっていてサドゥのテントが不規則かつ無数に張られている。
テント群の中心は少し開けた広場のようになっていて、中心にビル2階建て分くらいありそうな木の棒がそびえ立ち、旗が翻(ひるがえ)っている。その下にシヴァ神の大きな祭壇が設けられている。
テントの大きさはまちまちであり、弟子が多ければ巨大なテントで客を出迎える表の居間とリンガを象(かたど)った囲炉裏に加えて、奥の方に部屋がいくつもあるようで、弟子が少なければこじんまりしたテントだ。
テントに楽団がやってきてサドゥを祝福したり、別のテントを回ってシヴァ神への祝詞を上げるサドゥもいたり、普段はヒマラヤでそれぞれ離れて暮らしているからかこれを機会としてお互いに訪問し合ったり、賑やかだ。それに対して沐浴目的でやってきたインド人たちが、恐る恐る参拝している。
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彼らも演奏後はまったり。
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捨てられていた子どもをみんなで育ててもいるらしい。
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6年前にバラナシにいたかなと思い当たるサドゥもちらほらいる。
とはいえ、新型コロナで命を落とした方も多かった模様だと聞くので、実際のところはどうなのだろう。
できれば、当時バラナシに到着して第2殿下を妊娠していることが分かったとき、祝福をくれたサドゥに再び会ってお礼を伝えたいと思ったが、見つからなかった。
シヴァ神の影響か、第2殿下は不思議なことに今、ヒンドゥーミュージックだけはじっと耳を傾ける。
そのうちに、明らかにバラナシにいたと思い出せるサングラスのグルジ(師匠)を発見した。
こっちに来い、チャイを飲んで行けと手招きされたので、お言葉に甘えてテントの奥にお邪魔する。私のためにNo.3ポジションの弟子が湯を沸かすところからチャイを作り始める。その間も、サングラスグルジは絶え間なく参拝者を祝福している。相変わらず勤勉でいらっしゃる。
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このような形で、素敵なサドゥだなと思ったら参拝に行ったり、逆に歩いていてサドゥから呼び止められたらテントにお邪魔したりと、サドゥたちとの楽しい邂逅(かいこう)が始まった。
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