見出し画像

【インド】グルジの佇(たたず)まいの謎

(前記事からの続き)
3つ目。
各サドゥグループのNo.1グルジより、No.2のサドゥの方が人間力が高いように見えるのはなぜか?

ナガサドゥのテントを訪ねると、たいていNo.1のグルジ(またはババジ。師匠のこと)が全裸で身体に白い灰を塗っていて、そばに炎色の服を着たNo.2とNo.3が控えている。グルジの許可がないと裸体になることはできない。
No.3は見るからに下っ端感があってまだまだ修行中という雰囲気なのだが、No.2は見るからにしっかり堂々としていて、たいてい深みがある顔つきと佇(たたず)まいをしている。

それでいて面白いのが、No.2に比べるとグルジは人間力が劣るように見えるのだ。グルジが顔中を灰で塗りたくって浮世離れした顔をしていることを差し引いても、どことなく雰囲気に幼さが漂い、隣で鷹揚(おうよう)に辺りに目を配っているNo.2の方が何だかリーダーのように感じられる。さらに言えば、それゆえNo.2の方が明らかに格好よく見える。

サングラスグルジのNo.2(左端)。
その隣はチャイ道具を手入れしているNo.3。
ぼうっとして目を半分閉じていたグルジの指示で、
チラムを吸って見せてくれたNo.2。
手を決して下ろさないグルジ(修行note記事の1人目の方)のNo.2。

だが、いくつものサドゥテントを訪ねて彼らと触れ合ううちに、ああ、とだんだんわかってきた気がした。

これはあくまで個人的な考えだけれど、社会的にしっかりしている、信頼が置ける、リーダーの器に見える、というのは、自分自身とのみ対峙するサドゥの世界では、きっとまだ甘いのだ。他者評価で人間力が測られているから。

もっと自分で自分を知り、自分を解放して自由になり、一周回って純粋無垢に言動できるようになってこそ、サドゥとして格が上がっていくのではないか。

これに気がついたとき、強く虚を突かれた思いがした。


グルジはグループのトップになるくらいだから、人間力のあるNo.2ポジションを経ているのだろう。ただ、自身と向かううちに、どこかのタイミングで他者評価を離脱(難しく言えば脱構築)したのだろう。

ここに思い至ると、それまでちゃらんぽらんに見えていたグルジの態度にはその軽やかさと共に深みが感じられるようになり、逆にNo.2の在り方は視線を気にし過ぎているような気がしてくるから不思議なものだ。

グルジの向かって右側がNo.2、左側がNo.3。


現世の社会では右腕は冷静沈着・控えめで内向的な青レンジャー、そして外交的なリーダーが赤レンジャーを体現することが多いが、サドゥの世界では俗世における赤レンジャーがNo.2、その状態を超えて真に自由な在り方ができるようになるとトップのグルジになるのだろう。

私が触れてきたリーダー論とは大きく異なっている。しかし、グルジは大企業を統括しているわけではなく、目標は業績向上でもなく自分と対峙することで、少数の弟子を率いているだけだ。その小グループがサドゥという緩やかな定義において無数に存在している。組織としては、トップダウンのピラミッド型ではなく、ボトムアップはそもそも無理で、DAO(自立分散型)のようなものか。
高いレベルでの目的の内面化と自律性が必要となる。でも、受け身だったり組織の歯車になるのではなく何事も自分で決めて実行できる人には、幸せな環境だ。
まあ、まだこうやって現代社会の既存の分類に当てはめて考えようとしてしまうあたり、私は俗世に塗(まみ)れているなと自分に苦笑してしまうのだけれども。

とはいえ中には、明日日本の千円札を持って来い!と言ってきたり、日本に連れて行け!と言ったりするまだまだ煩悩に塗れたグルジもいる(インドではサドゥの要望は断ると祟りがあると信じられているので、こちらとしてはやんわり注意を逸らすことに努める。やはり気が合うかどうかを直感で見極めるのは大事だ)。

一方、威圧感はNo.2に譲り渡してあくまで透明な存在感でそこに居り、静かで穏やかな目をしながら、他人に惑わされず自分自身でいるようにしなさい、とその後ちょっと考え込むような深い言葉をくれるグルジもいる。

自己対峙による自由と単に欲望に振り回される自由は同じではない。
あのグルジは素晴らしかったね、と後で写真を見ながら戦士ヨーコ、賢者ショビットと話したところ、驚くほど意見が合った。自分との対峙をしっかりしているグルジはこちらも何となく分かるのだ。

本当に自分自身を自由に生きるとは、なんと奥が深いことだろうか。

「いいねいいね、分かってきたね」と言われた気がした。

※記事のシェアは大歓迎!ですが、クンブ・メーラやサドゥをはじめとした情報や内容の無断転載はご遠慮くださいませ。出典明記でお願いいたします^^

いいなと思ったら応援しよう!

徳田和嘉子 | 冒険家🌏️本当の豊かさとは
この度初めてサポートして頂いて、めちゃくちゃ嬉しくてやる気が倍増しました。サポートしてくださる方のお心意気に感謝です。