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ティモシー・シャラメ「名もなき者」サントラの、音楽チャート入りに学ぶ「本物」の凄さ
いまやハリウッドを代表するスターの一人であるティモシー・シャラメさんが来日し、大きな話題になっています。
今回の来日は、シャラメさんが主演しプロデュースも務める映画「名もなき者」のPRのためでしたが、この作品は既に昨年12月に米国で公開されてすぐに高い評価を受け、大ヒットしている作品です。
※公開日:2月28日(金) TOHOシネマズ 日比谷 他 全国公開
©2025 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
なにしろ、アカデミー賞に作品賞はもちろん8部門でノミネート。
ティモシー・シャラメさん自身も主演男優賞にノミネートされているのです。
さらに驚くのは、映画「名もなき者」のサウンドトラックが2月8日付の米国のビルボードのアルバムチャートで、様々なカテゴリにチャートインしている点です。
特に象徴的なのは、ティモシー・シャラメさん自身が「新進アーティスト」の部門で23位に入っている点でしょう。
ギターやハーモニカも本人が実際に演奏
実は、今回の映画「名もなき者」では、映画の中の演奏シーンを基本的に全て俳優陣が実際に演奏しています。
特にティモシー・シャラメさんは、実際にボブ・ディランとして歌を歌うだけでなく、ギターとハーモニカまでマスターし、生演奏と生歌唱で撮影を実施したそうです。
実際に、筆者は一足先に試写会でその実際の演奏を目の当たりにすることができましたが、本当にボブ・ディランが憑依したかのような素晴らしいパフォーマンスに驚いたのが正直なところです。
一つの映画にここまでエネルギーをかけることができたのは、この映画「名もなき者」が制作が始まった2019年直後にコロナ禍が訪れて5年も撮影がずれたということが、ある意味シャラメさんには幸運だったと言えるのかもしれません。
「自分の一つのミッションだった」
今回の来日時のイベント挨拶でも、シャラメさんは「(ボブディランは)自分にとっても言葉に尽くせないぐらい大きな存在で、人生を変えてくれたアーティスト」で、だからこそ「この作品に出演することが、自分の一つのミッションだった」だったと発言されていたのが印象的です。
5年の月日があったからといって、ここまでのギターやハーモニカの生演奏にこだわって、その技術を高めるのは並大抵のことではありません。
シャラメさんが自分の人生を懸ける価値があると感じた作品だったからこそ、シャラメさんも5年間もの月日をボブ・ディランを知り、そのパフォーマンスを自ら演じることにエネルギーを日々費やしてこられたのでしょう。
映画「名もなき者」のジャームズ・マンゴールド監督も、実際にティモシー・シャラメさんと最初に撮影したライブのシーンで「これは特別な作品になる」と確信したと話されています。
全てを「ライブでやる」と宣言
今回の撮影の裏話として、実はスタッフはライブのシーンなどでは、プレイバックという音を先に録音してそれに合わせて演技する手法を使う前提で準備をしていたそうです。
しかし、シャラメさんが「ライブでやる」と主張したことで、その後のシーンも全て生演奏でやることになった経緯があったそうです。
興味深いのは、シャラメさんがそこまで生演奏にこだわった背景です。
現在は、AIやCGなどの技術の進歩もあり、何もかも加工して再現することができる時代です。
通常の映画であれば、演奏をプレイバックで実施するのは普通のことですし、それ自体は別に恥ずかしいことではありません。
シャラメさんは「デューン」のようなVFXをフルに活用した映画でも主演をしていますから、技術の進化を一番知っている俳優でもあるのです。
「本物」にこだわる価値
ただ、シャラメさんは今回の映画の撮影がコロナ禍で5年もズレたことも含めて、自分のミッションだと感じたからこそ、全てを自分で演奏することを決断されたのでしょう。
ポイントになるのはハリウッドでもよく使われるようになっている「Authenticity」という言葉です。
これは「SHOGUN 将軍」においてもよく使われていたキーワードで、直訳すると信憑性や信頼性という単語ですが、シンプルに「本物」らしさと考える方が理解しやすいかもしれません。
実際に、Netflixで話題になった「極悪女王」におけるプロレスのシーンなどに証明されているように、俳優が自分達で「本物」の演技を見せることは、視聴者に間違いなく伝わります。
これだけAIのニュースが日々話題になる中で、あえてシャラメさんのような俳優が、逆に自分自身でカメラの前で「本物」の生演奏をすることにこだわることは、実は非常に重要な問題提起でもあるように感じます。
映画「名もなき者」がアメリカで大きな反響を呼び、そのサウンドトラックがビルボードにチャートインしているのは、そのシャラメさんの決断が間違っていないことの証明と言えるでしょう。
日本での映画の公開は2月28日とまだ先になりますが、是非皆さんもシャラメさんの覚悟の演技を自分の目と耳で確認して頂ければと思います。
この記事は2025年2月9日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。
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— 徳力 基彦(tokuriki) (@tokuriki) February 9, 2025
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