デビュー2年目「XG」が、「海外で最も再生された国内のアーティスト」ランキングで3位に入った凄さ
年末になり、地上波のテレビ局各社で様々な音楽特番が組まれていますが、そうした特番への出演がないのが不思議なぐらい、今年躍進したグループとして名前があがるのが「XG」というグループです。
「XG」は、日本人7人で構成されているガールズグループですが、「Xtraordinary Girls」の頭文字を取った名前から来ているように、2022年3月のデビューから歌詞は全て英語で歌い、世界を舞台に戦っているという常識外れの活躍を見せています。
YOASOBIと藤井風さんに次ぐ3位入りの快挙
特に象徴的な快挙と言えるのは、Spotifyが発表した「海外で最も再生された国内のアーティスト」ランキングで、YOASOBIと藤井風さんに次ぐ3位に「XG」が入る快挙を成し遂げたことです。
4位の米津玄師さんは、今年チェンソーマンの主題歌になった「KICK BACK」がアメリカで大ヒットして史上初の全編日本語トラックとしてゴールド認定され、全米レコード協会が選ぶ今年を代表するアーティストに選出されていますし、6位のAdoさんは、昨年全米本格進出を発表し、来年にはワールドツアーの開催も決定しています。
そんな海外でも成功している二人のアーティストを押さえて、デビュー2年目の「XG」が3位に入っているのが、「XG」がいかに海外で聞かれるようになっているかの象徴と言えるでしょう。
米国の音楽誌の今年の100曲にも日本人で唯一選出
実際、今年の10月には、日本人ガールズグループとして史上初めて米国の「Billboard」氏の表紙を飾ったことも話題になりましたし、日本よりも海外の方がメディア露出は多いと言っても良いかもしれません。
また、「XG」が今年1月にリリースした「LEFT RIGHT」という楽曲は、米国の音楽誌「Rolling Stone」が発表した「The 100 Best Songs of 2023」というリストに、日本人アーティストとして唯一ランクインしています。
さらに、Spotifyが発表した「海外で最も再生された国内のアーティストの楽曲」では上記の「LEFT RIGHT」だけでなく「SHOOTING STAR」の2曲がランクインしているのも、幅広い人気を感じさせます。
特に、2位の「アイドル」や3位の「KICK BACK」のようなアニメタイアップがない状態で、6位と7位にランクインしているのが「XG」ならではの特徴と言えます。
日本のテレビに出演しないのは英語歌唱だから?
また、11月に初めて実施した単独有観客ライブは、チケット応募数が20万件超えの狭き門となっていたようですし、ライブ当日には来年に「XG」初のワールドツアーを開催することも発表。
すでに「XG」は、アメリカやオーストラリアなどで数々の海外公演を成功させているのですが、その成功が着実に世界にファンを増やしていることを感じさせます。
当然、そうした海外での活躍をしている「XG」を国内のメディアも放置しておくはずはなく、今月に入って「THE FIRST TAKE」が「XG」の楽曲を2曲配信して話題になっているのです。
こうした活躍にもかかわらず、日本の年末の地上波の歌番組に「XG」の露出がないのは、不思議なほどではありますが、「XG」が海外を中心に活動をしていることと、楽曲が英語歌詞であることが影響しているのかもしれません。
「XG」の人気を世界にひろげるデジタルの力
なお、「XG」の成功を考える上で、やはり切っても切り離せないのは、「XG」や事務所の巧みなデジタル活用でしょう。
「XG」は、韓国人の父と日本人の母の間に生まれたという背景がある音楽プロデューサーであるJAKOPSさんとエイベックスが立ち上げた「XGALX」というプロダクションのプロジェクトから生まれたグループです。
日本と韓国で5年にもおよぶオーディションと育成期間を経てデビューしたことが有名ですが、JAKOPSさんがK-POP式のトレーニングとシステムを基盤にしているため、デジタル活用もK-POP式で様々なSNSを駆使しているのが特徴的です。
特に象徴的なのがYouTubeでしょう。
楽曲を複数のバリエーションで公開するのは当然のこと、YouTubeにはデビューまでのドキュメンタリーや、XGメンバーの素顔が分かる様々な動画が公開。
そうした努力もあり、すでに242万を超える登録者を集めているのです。
日本の代表的なアーティストのYouTubeアカウントでは、Snow Manが296万登録、NiziUが217万登録、なにわ男子が182万登録と聞けば、デビュー2年目のXGがいかにうまくYouTubeを使って躍進しているかが伝わるでしょうか。
前述の日本のアイドルグループは、どちらかというとテレビ露出によって認知度を上げて、YouTubeのチャンネル登録者数も増えている印象が強いのに対し、「XG」はYouTubeなどのSNSでの露出を軸にファンを積み上げているのが大きな違いとも言えるかもしれません。
最初から海外をターゲットにする意味
「XG」の成功からあらためて考えたいのは、日本人のアーティストが海外で成功するのは難しいという思い込みの呪縛です。
もちろん、「XG」のメンバーの歌唱力、ダンスの技術、ラップの技術が世界的に見ても高いレベルだからこそ、世界でも評価されているのは間違いありません。
韓国のアーティストが世界を席巻する一方で、日本人は世界で成功するのは難しいというのが、従来の日本の音楽業界での一般的な見方でした。
ただ、「XG」はそうした思い込みをあっさりと乗り越えて、日本人ガールズグループの史上初の記録を連発してくれています。
もちろん、その扉を開いてくれたのはK-POPのノウハウを熟知しているJAKOPSさんであったという現実はあります。
ただ、今回「XG」の成功によって明確になったのは、日本人のアーティストが海外で通用しないのではなく、従来の日本の音楽レーベルや事務所のやり方が、日本独自のやり方に慣れすぎてしまっていたのではないかという点でしょう。
「XG」の成功を見ていると、本気で世界の音楽市場をメインにするのであれば、日本のテレビ露出が多すぎてアーティストが忙しくなってしまうことも、実はリスクなのではないかとすら思えてきます。
いずれにしても、「XG」の成功に刺激を受けて、更に多くのアーティストや音楽事務所が本気で世界を目指してくれれば、来年はさらに多くの日本の音楽が世界に広がることになるはず。
「XG」の常識外れの活躍が来年はどこまで広がっていくのか、注目したいと思います。