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YOASOBIは、世界から見たJ-POPの定義を新しく更新するアーティストかもしれないという話

先日、音楽未来会議というイベントに参加してきたのですが、その際の議論で非常に印象的だった話の一つが、J-POP論でした。

K-POPという言葉を聞いて世界の人達が連想するものが、アイドル育成システムや高いレベルのダンスパフォーマンスだとするならば。

J-POPという言葉を聞いて世界の人達が連想するものは、アニメなどのコンテンツとタイアップしIP化する音楽ではないか?

実際に米津玄師さんやVaundyのアルバムは半分以上が何かしらのタイアップがある曲になっているそうで、そうしたIP化する音楽であるJ-POPの究極の存在がYOASOBIではないか。

そんな議論が非常に印象的だったわけです。

で、本当に奇遇なことに、その音楽未来会議の開催された日の夜に東京ドームで開催されていたYOASOBI超現実のライブに、さとなおラボでご一緒してたソニーミュージックの方から運良くご招待いただいたので、そんな視点で関係者席からライブを鑑賞させていただきました。

今回のYOASOBIのライブは「超現実」というタイトルがついていることからも分かるように、リアルのライブなんですが背景にあるLEDのディスプレイを組み合わせて、不思議な映像を生み出す工夫がされているのが印象的でした。

例えば上の写真のように、ステージの右端にはビル群のセットが組まれていて、そこにIkuraさんが入っていって画面上に映っている怪獣と一緒に特撮のようなシーンを映し出したかと思えば。

ステージの反対にある左端には自動販売機とベンチがあって、海が見える駅で電車を待っているドラマのシーンみたいな、風景が展開されます。

しかも、次の曲では晴れた空と海の背景が、夜の星空に転換し、Ikuraさんが自販機の上に階段で上がって腰掛けて、まるで飲料メーカーのテレビCMに出てきそうなシーンに展開。

最近のドラマ撮影で流行しているバーチャルプロダクションのように、背景を自在に変えることで、曲毎の世界観を表現していくというのが非常に印象的でした。

また観客席にも全員にペンライトならぬ「フリフラ」というライトを配って、観客席もステージに拡張。
例えば「三原色」では観客席が綺麗に三色に色分けされるなど、曲毎に本当に多様に演出が切り替わっていました。

で、こうしたシーンの切替って、まさにYOASOBIのライブでは必須なことでもあるんですよね。


音楽未来会議で柴さんが話されていて印象的だったのは、従来のアーティストは、自分の恋愛や身の回りの出来事を歌にすることが多かったのに対して、最近のJ-POPはアニメやドラマなどの「お題」に対して作曲をすることが増えているという点。

特にYOASOBIは「小説」を元に楽曲を作るというスタイルを徹底している関係上、全ての楽曲にそれぞれ違う世界観が紐付いていることになります。

当然曲によって大きく世界観を変えるというアプローチは、XGのようなタイアップをしていない多くのアーティストでも行っているんですけど、それでもその曲は、あくまでそのアーティストやグループが主役なんですよね。

でも、YOASOBIはある意味曲毎に「小説」が主役なわけで。
昔の吟遊詩人のような位置づけのアーティストと言えるのかもしれないなと思ってしまいました。

で、それはやっぱりアーティストにとっても、難しい仕事であるのは間違いなくて。
元々期間限定プロジェクトとして始まったYOASOBIのAyaseさんとIkuraさんにとっても、大きな変化だったのは間違いありません。

そういう意味で、5年間を徐々にさかのぼっていく回想シーン的動画から、最初の楽曲をAyaseさんが書いていた部屋がセットとして出てくる演出はエモかったですよね。


また、今回のライブ中のMCでIkuraさんが、YOASOBIの初期の頃の忙しさにおける葛藤を吐露され、最終的に「Ikuraとして生きていく覚悟を決めました」と話されていたのは、本当にグッと来ましたし。

特に、このMCの後の「アンコール」で、Ikuraさんだけにピンスポットがあたって歌唱するという、それまでのカラフルな世界との対比が本当に印象的なシーンで、一つのハイライトだったように思います。

個人的にこの曲は密かに好きだったので、この時間は本当に忘れられない一曲になった気がします。

ちなみに、NewJeansの東京ドームライブの時にも、YOASOBIとコラボした「アイドル」の歌唱が、一番盛り上がった瞬間だったんじゃないかと思ってるんですが。

YOASOBIのガチなファン5万人による東京ドームでの「アイドル」への掛け声は別格でした。
地鳴りのようで、本当に凄かったです。

やっぱり、ライブってアーティストとファンのコミュニケーションだし、アーティストとファンによって完成するんだなと改めて痛感させられた次第です。

私は音楽系の人間ではないので、ライブの素晴らしさを上手く文字で表現することはできないのですが、Ikuraさんの歌唱は全曲本当に素晴らしかったですし、Ayaseさんが作るYOASOBIの楽曲は本当に全部好きだなと改めて全身で感じることができた時間でした。

実は、ファミリーチケットを自分で買って参加したいなと思っていたのを、上手く家族のスケジュール調整を説得できず断念した経緯があったのですが(涙)

やはり改めてYOASOBIのライブを目の当たりにして。
次は関係者席ではなく、ファンの方々のど真ん中であの空気を感じたいなと思ったので、次の機会はちゃんと自分でチケットを買って、家族で参加したいなと思います。



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徳力基彦(tokuriki)
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