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紅白歌合戦で、NHKはジャニーズ所属タレント不在の穴をどう埋めるのか

この記事は2023年10月10日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。

ジャニーズ事務所の性加害問題に対する対応姿勢が問題となる中、やはり日本の音楽界を象徴するイベントとして注目されるのが年末の紅白歌合戦の動向でしょう。

一時期は、ジャニーズから今年の紅白歌合戦に2枠確定という報道も流れていましたが、ここに来てNHKニュース7が、NHK局内でもジャニー喜多川氏による性加害が行われていた疑惑があると報道するなど、NHKがジャニーズとの関係の総括を本格的に行い始めています。

そうした流れを考えると、今年の紅白歌合戦にジャニーズ事務所の所属タレントが出演しない可能性は高くなってきていると言えます。

もし、今年出場ゼロなら44年ぶりといいますし、ここ数年は、紅白歌合戦にはジャニーズ事務所の所属グループが5〜6組ほど出演することが通例で、司会を担当することも多かったことを考えると、大きなインパクトがあることは間違いありません。

はたして、NHKは紅白歌合戦におけるジャニーズ事務所の所属タレント不在の穴をどのように埋めるつもりなのか。
いくつかのシナリオを予測してみたいと思います。
 

今年のテーマは「ボーダレス」

今年の紅白歌合戦を予想する上で、一つ大きなヒントとなるのが、今年の司会者が有吉弘行さん、橋本環奈さん、浜辺美波さんであると発表された際に、テーマが「ボーダレス」であると発表されている点です。

紅白歌合戦のウェブサイトには「国や、言葉や、世代を超えて“ボーダレス”に人と人とをつなげ感情を共有していく。そんな力が、音楽にはあります。」という文章が記載されています。

日本国内の音楽イベントというイメージが強い紅白歌合戦において、あえて海外を意識する「ボーダレス」というキーワードを持ってきたことは、今年のポイントとなるように思います。
 

K-POPアーティストの出演枠拡大の可能性

まず、「ボーダレス」という言葉から当然考えられるのが、K-POPアーティストの出演枠拡大でしょう。

昨年の紅白歌合戦でも、TWICEやIVE、LE SSERAFIMなど、K-POPアーティストが多数出演して話題となりましたが、若い世代でのK-POP人気の拡がりを考えると、今年は更にその枠が拡がる可能性は高いと考えられます。

特に注目されるのが、世界的人気を誇るアーティストとなっているNewJeansの出演でしょう。

ただ、ここでポイントとなるのはNewJeansには日本語楽曲が無いという点です。

昨年出場したTWICE、IVE、LE SSERAFIMはいずれも紅白歌合戦で歌唱したのは日本語の楽曲でした。

特にLE SSERAFIMが、デビュー曲「FEARLESS」の日本語バージョンをリリース日の1月25日よりも1ヶ月近く早く、紅白歌合戦で初披露したというのが、象徴的と言えます。

少なくとも昨年までは紅白歌合戦に出場するK-POPのアーティストは、日本語楽曲を歌唱することが前提だったわけです。
 

紅白歌合戦で韓国語での歌唱がありえるか

しかし、NewJeansは日本でも若者を中心に高い人気を誇っているのは明白です。
TBSの音楽の日には韓国語歌唱での「OMG」で出演していますし、サマーソニックでも大きな話題となっています。

ある意味、NewJeansは昔の洋楽アーティストと同様に、韓国語の楽曲のまま日本のファンに広まっているわけです。

そう考えると、NewJeansが韓国語楽曲で、紅白歌合戦に出場する可能性はかなり高いと考えられるように思います。

そう考えると、男性側アーティストからもStrayKidsやBTSのメンバーのジョングクさんなどのK-POPアーティスト出演の可能性もありそうです。

実際、音楽ブログの「イマオト」さんでは、紅白歌合戦の出場歌手が予想されており、NewJeansやStrayKidsの名前があげられています。

逆に言うと、このために今年のテーマが「ボーダレス」になっているのでは、という穿った見方すらできてしまうでしょう。
 

洋楽アーティストの出演もありえる

一方で、K-POPアーティストの増加には、例年一定層からの批判があるのも事実ですので、NHKとしては単純にK-POPアーティストを増やすだけでなく、「国や、言葉や、世代を超えて」という文脈を強化するために、洋楽アーティストの出演に努力している可能性もありそうです。

実現は難しいと思いますが、世界中で大ヒットが確実視されているライブ映画を出すテイラー・スウィフトの映像出演や、ディズニー映画歌手の歌唱などは可能性があるかもしれません。

また当然ながら、日本から「国や、言葉を超えて」海外でヒットしているアーティストとして、「アイドル」が大ヒットしたYOASOBIは中核に据えられているはずです。

ひょっとしたら、洋楽アーティストの代わりに、「アイドル」の英語版の歌唱を組み合わせてくる可能性もあるかもしれません。

さらには「新しい学校のリーダーズ」や「XG」など、海外でも評価の高いアーティストの出場が増える可能性は高いでしょう。
 

グループの境界を超えたコラボを増やす可能性も

また、もう一つの可能性として注目したいのが、グループや事務所の垣根を越えたコラボを行う時間を増やす可能性です。

今回の「ボーダレス」が掲げている「国や、言葉や、世代を超えて“ボーダレス”に人と人とをつなげ感情を共有していく。そんな力が、音楽にはあります。」という言葉を聞いて、2023年の象徴的な取り組みとして思い出すのが、SKY-HIさんと日テレが実施していた「D.U.N.K.」という事務所横断の音楽イベントです。

このイベントは、日本におけるダンス&ボーカルグループの横の繋がりがタブーとされていたことに対する問題提起としてはじまったプロジェクトで、今年の3月と5月に様々なアーティストが参加するイベントを成功させたことで大きな注目を集めました。

この企画が大成功したことで、その後TBSが「音楽の日」において、BE:FIRSTやTravis Japanなど事務所を超えた90名が、ダンスコラボを披露する企画が実現しています。

また、従来ジャニーズ事務所の所属タレント以外の男性グループの出演が難しいとされていたテレビ朝日の「Music Station」にBE:FIRSTが出演するきっかけにもなっていたようです。

当然、このイベントから同様の刺激を紅白歌合戦のスタッフが受けている可能性は高いと思われます。

「D.U.N.K.」の第2章自体が、12月の頭に開催されることが決まっているため、直後の紅白歌合戦で全く同じ企画は難しいかもしれませんが、インスパイアされた企画はありえるはずです。

従来も紅白では様々なアーティストがコラボするシーンがありましたが、今回の紅白歌合戦では「D.U.N.K.」や「音楽の日」のダンスコラボのような横断企画を取り入れることで、より「ボーダレス」というメッセージを打ち出す可能性もあるように感じます。

紅白という「男女」という性別で分けること自体への問題提起も増えてきていますから、性別を超えたコラボの取り組みも増えるかもしれません。
 

紅白歌合戦が、ジャニーズ忖度後の時代の象徴になるはず

例年、紅白歌合戦は、出演者の起用方針や、視聴率の低迷など、様々な観点からメディアや視聴者からの批判がされることが多い企画ではあります。

ただ、批判の大きさは、逆にそれだけ注目度が高い番組であるという証拠とも言えるでしょう。

実は昨年の紅白歌合戦は、データを見る限り、あきらかにテレビ世代からネット世代への重心シフトに成功した年でもありました。

今年の紅白歌合戦は、ながらく日本の芸能界やテレビをおおっていたジャニーズ事務所への忖度の呪縛がとけて、初めて開催される紅白歌合戦となります。

ジャニーズファンの視聴が減ることを考えれば、視聴率の低下は避けられないとは思いますが、ジャニーズ事務所への忖度が「常識」だった時代が終わった後の最初の分岐点となる1日とも言えます。

今年の紅白歌合戦で、どういう新しい挑戦が行われるかは、今後の日本の芸能界や音楽界にとって非常に重要になるのは間違いありません。

NHKと紅白歌合戦のスタッフが、「ボーダレス」というキーワードを軸に、どのような紅白歌合戦を作ろうとされるのか。
今から楽しみにしたいと思います。

この記事は2023年10月10日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。


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