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「アナと雪の女王」は3だけでなく4も予定?ディズニーに学ぶ「映画」の役割の変化

ディズニーのアニメーション映画「アナと雪の女王」のシリーズ3作目となる映画が2027年11月24日に全米公開されることが発表され、ファンを中心に話題になっています。

一方で、実は「アナと雪の女王」は3作目が公開前であるにもかかわらず、既にシリーズ4作目が進行中であることも発表されているのをご存じでしょうか?
ディズニーのアニメーション映画といえば「美女と野獣」や「アラジン」のように基本的には1本で完結し続編がないのが基本という時代が長く続いていましたが、「アナと雪の女王2」の成功以降、その方針は大きく転換しているようです。

その背景には、「映画」の役割の変化があります。
 

「アナと雪の女王2」がアニメ映画の記録を更新

ディズニー・アニメーション・スタジオは、1937年に世界初のアニメーション作品として「白雪姫」を生み出して以来、実に62本もの長編映画をこの世に生み出してきた歴史のあるスタジオです。

その初期の映画作品には「ピノキオ」や「シンデレラ」に「ピーター・パン」など、昔のおとぎ話を映画化したものがずらりと並び、ディズニーランドのアトラクションでもおなじみと言えます。

そんなディズニー・アニメーション・スタジオが続編に注力し始めたのは、2018年に公開された「シュガー・ラッシュ:オンライン」と2019年に公開された「アナと雪の女王2」が分岐点になるようです。

大きなポイントは、どちらの映画も1本目を上回る興行収入を記録した点でしょう。
特に「アナと雪の女王2」は大ヒットだった1作目の12億8000万ドルを上回る14億5000万ドルを記録して、アニメ映画の史上最高記録を更新する快挙を成し遂げているのです。
 

「モアナ2」に「ズートピア2」も

実際に、今月アメリカで開催されたディズニーのファンイベント「D23 2024」では、「アナと雪の女王3」以外にも、今年公開になる「モアナと伝説の海2」や「ズートピア2」など、ディズニー・アニメーション・スタジオからも複数のシリーズものの発表がなされました。

筆者もこのイベントに招待いただき初めて会場で参加しましたが、シリーズものが発表されるたびにファンが大きな歓声を上げるのが非常に印象的なイベントでした。

こうしたシリーズ化の傾向には、他のウォルト・ディズニー・カンパニー傘下のスタジオであるピクサーや、マーベルが様々なシリーズもので成功していることから刺激を受けているという面もあるようです。

特になんといってもマーベルは「マーベル・シネマティック・ユニバース」というコンセプトを掲げ、30本以上の作品をシリーズとして構成していますし、ピクサーも今回「トイストーリー5」や「インクレディブル3」を制作中であることを発表するなど、様々なシリーズもので成功を収めています。

(出典:ウォルト・ディズニー・カンパニー)

筆者も参加させていただいたD23のメディア向けの説明会において、ディズニー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるジェニファー・リー氏は、映画のシリーズ化について、ピクサーやマーベルなどの他のスタジオのリーダーから様々なアイデアやアドバイスを得ていることを明言されていました。

ストーリーテリングの枠を超えていく

また、もう一つ大きい要素としてウォルト・ディズニー・カンパニーのグループ全体での「ストーリーテリング」の進化があげられます。

「ストーリーテリング」は直訳すると「物語を語ること」ですが、ディズニーの差別化要因のシンボルとして掲げられているコンセプトで、ウォルト・ディズニー・カンパニーの歴史は、音楽と映像の融合や、ディズニーの商品化、そしてディズニーランドなど、さまざまな要素を組み合わせて、新しい「ストーリーテリング」の手法を生み出し続けてきた歴史でもあります。

そんなディズニーが「ストーリーテリングの枠を超えていく」と題したリリースで発表したコンセプト図がこちらです。

(出展:ディズニー公式サイト)

参考:ディズニーはどのようにしてストーリーテリングの枠を超えていくのか

この図では「アナと雪の女王(FROZEN)」という作品が映画のシリーズだけに止まらない立体的な取り組みであることが表現されています。

Disney+におけるスピンオフ番組も、東京ディズニーシーのファンタジースプリングスに開設された「アナと雪の女王」のエリアも、ディズニークルーズラインでの体験も、すべてが「アナと雪の女王」というストーリーをゲストに立体的に体験してもらうための一つ一つの手段であるわけです。

従来は「映画」こそがストーリーテリングの本丸であり、グッズやアトラクションはその付随物というイメージを持っている方が少なくなかったと思います。

しかし、デジタル化が進んだ現在では、かならずしも「映画」だけがストーリーテリングの中心的手段というわけではなくなっているのです。

ぬいぐるみやゲームも一つの要素に

実際に、ディズニーシーの人気商品であるクマのぬいぐるみの「ダッフィー」は、もともと映像作品が起点の商品ではありませんでしたが、その人気からネット上にストップモーションビデオが公開され、さらにその人気が世界中に広がった経緯があるそうです。

一方で、中国ではズートピアの人気を広げるためにスマホ向けゲームが選択され、Tencentとズートピアのゲームを立ち上げたことが、中国におけるズートピア人気の拡大に一役かったという歴史もあるそうです。

「D23 2024」で発表されたディズニーとエピック・ゲームズの提携による、様々なフォートナイトとのゲームコラボも、そうした「ストーリーテリングの枠を超えていく」新しい取り組みの一環と言えるかもしれません。

もちろん、「映画」の重要性がなくなるわけではありません。
今回、Disney+のドラマシリーズとして開始された「マンダロリアン」が、満を持して映画化されることが発表されたことがその象徴と言えるでしょう。

引き続き「映画」は、ストーリーテリングにおいて中心的な存在ではあり続けると思われますが、明らかにその役割は大きくシフトしているわけです。
 

2時間で終わりではなく永遠に続くストーリー

従来の「映画」が中心のストーリーテリングの世界においては、2時間から3時間の映画が主にストーリーを紡ぐ場所であり、その世界観が維持されることが重視されてきました。

特に象徴的なのは、スター・ウォーズにおいて筆者も含めて古参のファンは、初期のジョージ・ルーカス監督が生み出した作品の世界観を重視しているため、ディズニーがその世界を拡張し続けることに複雑な思いを持つことが少なくない点です。

(出展:ディズニー公式サイト)

ただ、スター・ウォーズが新しい作品を生み出し続けているからこそ、若い世代が次々に新しくスター・ウォーズの世界のファンになっているのは間違いありません。

「D23 2024」のメディア向け説明会の場では、ジョージ・ルーカス監督がファンがスター・ウォーズのバックストーリーを創作することを許可し、公認したことの先見の明をたたえる発言があったことが象徴的と言えるでしょう。
そうした姿勢を背景に、Disney+では、さまざまなスター・ウォーズのスピンオフ作品が生み出されているということのようです。

現在において「映画」は絶対的な唯一無二の作品ではなく、ファンとともにかなでられる様々なストーリーのうちの一つとなっているわけです。

だからこそ、「映画」は従来のように一本で完結するものではなく、ファンが求める限り主人公や周辺のキャラクターたちの人生が語られ続ける、永遠に続くストーリーの一部に役割を変えつつあるのだと思います。

振り返ってみると、日本では既に映画「ドラえもん」や映画「名探偵コナン」など、毎年のようにストーリーが更新される映画が複数存在しています。
ある意味、登場人物が年を取らないアニメ映画だからこそ選択できる手法と言えるのかもしれません。

そもそも「映画」がつくられるようになってから、まだ百数十年しか経っていません。
今ではまだ一本で完結する「映画」の方が普通かもしれませんが、百年後には2時間で終わる「映画」の方が珍しくなっているかもしれませんし、人間の人生よりも「映画」の方が長く続いている未来もありえるのかもしれません。

この記事は2024年8月19日Yahooニュース寄稿記事の全文転載です。


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徳力基彦(tokuriki)
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